借地権とは・借地権付き物件のメリットとデメリットも解説
不動産を購入しようと、ポータルサイトなどを検索していると、借地権付きの物件を目にすることがあるでしょう。
借地権とはどのような権利なのでしょうか。
この記事では、借地権の特徴や、借地権付き物件を購入する場合のメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
借地権の特徴
まずは、借地権の概要や特徴について説明します。
(1)借地権とはどのような権利
借地権とは、地主から土地を借り、借地人が建物を建てるために使用できる権利です。
土地の権利は地主にあり、借地人は地代を支払うことで、土地を使用できます。
借地権の主な特徴は、土地や建物に対する制約がある点です。
建物を売却する際や建て替え時には、地主の許可を得なければいけません。
また、契約期間が満了すると、土地を更地にして返還する義務があります。
借地権の種類
借地権にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。借地権の種類と主な特徴を紹介します。
(1)旧法借地権
旧法借地権は、建物所有を目的とした土地の借地権で、借地権者が強く保護されている点が特徴です。
地主が更新を拒否したり、建物明け渡しを求めたりするには正当な理由が必要になります。
旧法では建物の種類に応じて借地期間が異なります。堅固建物(コンクリート造など)の場合、存続期間は60年、更新後は30年です。
一方、非堅固建物(木造など)は存続期間が30年、更新後は20年です。また、期間中に建物が朽廃すると借地権は消滅します。
契約で建物の種類が明記されていない場合は、非堅固建物として扱われる点に注意が必要です。
(2)普通借地権
普通借地権は、契約更新が可能な借地権で、定期借地権以外の権利を指します。
存続期間は基本的に30年以上とされ、これより短い期間の契約は無効です。
契約更新後の期間は初回が20年、それ以降は10年が標準ですが、長い期間を設定することも可能です。
建物が滅失しても地主の承諾を得て再建築すれば、新たに20年間借地権が延長されます。
この柔軟性が、普通借地権の大きな特徴です。また、契約方式に書面を必要とせず、口頭での契約も可能なため、事前に条件を確認し合うことが重要です。
普通借地権は長期的な活用に適した選択肢といえます。
(3)定期借地権
定期借地権は、借地借家法に基づく契約期間が明確に定められた借地権です。
更新はできず、期間満了後には土地を更地にして地主に返還する必要があります。
一般的な契約期間は50年で、建物買取請求権も認められていません。
定期借地権は土地購入に比べて初期費用が抑えられるため、定借マンションなどの形でも注目されています。
定期借地権には、管理が容易で、更新トラブルが少ないという利点があります。
また、前払い地代方式が導入されることで、経済的メリットを得ることも可能です。
契約方法には公正証書が必要で、一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権の3種類があります。
借地権付きの不動産を購入するメリット
ここからは、借地権付きの不動産を購入するメリットについて説明します。
(1)安く購入できる
借地権付き不動産は、土地を購入せずに借地権を取得する形になるため、初期費用が抑えられます。
その結果、購入価格が通常の不動産よりも安くなる傾向にあります。
借地権付き物件は融資の難易度が高く、購入希望者が限られているため、競争が少なく、価格が低く設定されることが多い点も安く購入できる理由のひとつといえるでしょう。
安く購入できるメリットを活かすことで、資産形成を目指す投資家や、初めての不動産購入者にも魅力的な選択肢となります。
(2)不動産取得税などがかからない
借地権付き不動産を購入する際の大きなメリットのひとつは、不動産取得税や土地にかかる固定資産税が発生しない点です。
借地権付きの物件では、土地の所有権は地主にあり、購入者が取得するのは借地権のみとなります。
土地に関連する税金はすべて地主が負担します。
このため、購入者は土地に関わる税金を支払う必要がなく、コストを抑えられることになります。
(3)立地や利回りが良い物件が多い
借地権付き不動産のメリットとして、高利回りと好立地に恵まれた物件が多い点も挙げられます。
一般的に、借地権付き物件は所有権物件に比べて利回りが2~3%高くなることが多いといえるでしょう。
これは、土地の購入費用が発生しないため、購入者の初期投資が少なく、その分収益性が高くなるためです。
また、借地権付き物件は都市部や人気のエリアに立地していることが多く、需要も安定しています。
立地が良いので手放したくはないがうまく土地を活用したいといった人が利用するのが大きな理由です。
そのため、安定した収益を見込めるだけでなく、価値のある立地での投資が可能といえます。
(4)土地を継続して借りられるケースも多い
借地権付きの不動産を購入すると、土地を継続して借りることができる可能性もあります。
特に、定期借地権でない場合は、契約更新が可能です。
旧法借地権では、借主側の権利が強く、貸主である地主が契約更新を拒否することは難しいため、借地に住み続けることができるケースが多くなります。
旧法借地権では、数世代にわたって借地に住むことが可能であり、実質的に所有権に近い状態で利用することができる場合もあるのです。
安定した生活環境を維持しながら長期的な利益を得ることができます。
借地権付きの不動産を購入するデメリット
ここからは借地権付きの不動産を購入するデメリットについて解説します。
(1)融資が通りにくい
借地権付きの不動産を購入する際のデメリットのひとつは、融資を受けるのが難しい点です。
借地権付き物件は、他人の土地に建物を建てているため、所有権の物件と比べて銀行の担保評価が低くなってしまう傾向にあります。
これは、借地権の存続期間や更新の可否など、所有権付きの物件と比較すると将来的に不確実性が高いためです。
そのため、借地権付き物件を購入する際には、自己資金を多く用意する必要がある場合が多いといえます。
投資家や購入希望者にとって重要なデメリットといえるでしょう。
(2)簡単に売却できない
借地権付きの不動産は流動性が低く、簡単に売却できない点に注意が必要です。
前述した通り、融資が通りにくいため、物件を売却しようとしても買い手が見つかりづらくなることがあります。
借地権付き物件は、所有権物件と比べて市場での人気が低いため、買い手を見つけるのに時間がかかることが多いといえるでしょう。
特に借地権の契約期間が短い場合や、更新の可否が不確実な場合、さらに売却の難易度が上がります。
将来の売却を視野に入れて購入を検討する場合は、流動性の低さを十分に理解しておくことが重要です。
(3)地代の支払いが必要
借地権付きの不動産を購入する場合、毎月地主に地代を支払う必要があります。
地代は、契約に基づいて金額が定められ、固定資産税の何倍かという形で記載されていることもあります。
この場合、固定資産税の増額などにより変動する点にも注意が必要です。
一般的には、地代は固定資産税の3倍程度となることが多いですが、契約内容によってその額は異なります。
地代の支払いは長期的に発生するため、購入時にはその費用を十分に考慮することが重要です。
地代が高額になると、将来的な負担が大きくなり、後々の生活に影響を与える可能性があります。
(4)売却などには地主の許可がいる
借地権付きの不動産を売却、改築、建て替えを行う際には、地主の承諾が必要な点もデメリットのひとつです。
承諾が得られない場合、トラブルに発展することもあります。
特に売却や建て替えの場合、承諾料が発生することがある点にも注意が必要です。
建て替え時には更地価格の約4~6%、譲渡時には譲渡価格の約10%が承諾料として求められることもあります。
このような手間や追加費用が発生するため、購入前に地主との契約条件を十分に確認することが重要です。
借地権に関する注意点
ここからは、借地権に関する注意点について説明します。
(1)借地権は相続の対象となる
借地権は相続の対象となり、法定相続人が相続する場合、地主の許可は不要です。
ただし、借地権は相続財産に含まれるため、相続税の計算時に加える必要があります。
また、相続後も地主との良好な関係を維持するために、相続したことを報告しておくと安心です。
一方で、遺贈(法定相続人以外への引き継ぎ)の場合は地主の承諾が必要となります。
この場合、譲渡扱いとなり、承諾料が発生する可能性がある点に注意が必要です。
承諾料の相場は契約内容によりますが、事前の確認が重要になります。
借地権の相続は特別な手続きが不要な場合が多いものの、税金や地主との関係性を含め、慎重に対応することが重要です。
(2)地上権か賃借権かによって担保の有無は異なる
借地権の種類によって、住宅ローンの担保として利用できるかどうかが異なります。
地上権の場合、地上権そのものに抵当権を設定することが可能です。一方、賃借権では抵当権を設定することはできません。
この違いにより、金融機関が借地権を担保とする際の対応が変わります。
ただし、借地に建つ建物には抵当権の設定が可能であり、この抵当権は賃借権にも及ぶとされています。
そのため、建物を担保に住宅ローンを利用する際には、地主の承諾が必要となるケースが多い点に注意が必要です。
地上権と賃借権の違いを理解し、地主との交渉や金融機関との相談をしっかり行うことが、スムーズな取引の鍵となります。
(3)地主の土地売却には対抗要件を持つ
地主が借地の土地(底地)を売却しても、条件を満たせば借地人は新たな地主に対して借地権を主張できます。
この対抗には以下の要件が必要です。
①借地上に建物があること
建物が存在し、登記されている場合、借地権を対抗できます。賃借権は登記義務がないため、建物の登記が重要となります。
②建物の登記名義と借地人が一致していること
借地人と建物の所有者の名義が異なる場合、対抗権が失われる可能性があります。
また、火災や災害で建物が消失しても、借地上にその旨を掲示すれば2年間は借地権を主張可能です。
地主が土地を売却した場合に備え、建物登記や名義の確認を徹底することが重要です。
まとめ
一般的にはあまり聞きなじみのない借地権ですが、賢く活用することにより、資産活用や安く居住用の不動産を購入することが可能です。
しかし、土地が購入できず、建て替えなどが自由にできないため、注意しなければ大きな損失を被ることも考えられます。
借地権付きの物件に興味がある場合、安易に選択せず、専門家からアドバイスを受けながら慎重に検討することが重要です。