空き家をレストランや食堂として活用する方法を解説
「空き家状態になってしまった家を有効利用できないだろうか?」などと、悩んでいる方は多いことでしょう。
家族との思い出のある住居であっても、有効に活用できなければ、放置状態になってしまう可能性があります。
この記事では、空き家をレストランや食堂として活用する方法について解説します。
空き家の有効活用の必要性
「田舎の空き家に住む予定はない」「空き家に住んでも広すぎて持て余す」などと感じているなら、住居以外での活用方法を考えた方がよいでしょう。
空き家を放置してしまうと、様々なトラブルに見舞われる可能性もあるので注意が必要です。
(1)空き家に居住しないなら別の目的で活用を
空き家に居住しないなら、今後どのように活用するのかを決めておきましょう。
柔軟に考えれば使い道はいろいろとあります。
- 家族との思い出深い家をセカンドハウスにして、たまに利用する
- 収益目的で空き家を活用する
収益目的で空き家を活用する方法としては貸家や民泊、レストラン(カフェ)・食堂にする等があげられます。
ただし、収益目的で空き家を活用する以上は、リノベーションの方法や周辺環境、資金面についても考慮しなければいけません。
(2)空き家を放置するリスク
空き家の使い道をよく考えないまま放置すれば、次のような深刻な事態が想定されます。
- 倒壊して近隣住民に迷惑がかかる
- 衛生管理ができなくなり、害虫・害獣が発生する温床となる
- 不審な人物が勝手に住み始めたり、犯罪に悪用されたりする
- 不審火が発生し、近隣の住宅に延焼してしまう
- 地方自治体から「特定空家等」に指定されると、固定資産税が増額されてしまう
たとえ重大な事件・事故や近隣住民とのトラブルに発展しなくとも、空き家の所在する地方自治体(市町村)から勧告を受けると、住宅用地特例が解除されてしまいます。
特定空家等に指定されると、敷地は固定資産税の課税標準が3〜6倍に上がり、重い税負担となってしまうので注意しましょう。
空き家をレストラン(カフェ)・食堂へ活用する3つのメリット
空き家をレストラン(カフェ)・食堂として有効活用できれば、次のようなメリットが得られます。
- 地方自治体から補助金が受けられる
- 利益が得られる
- 地域の憩いの場となる
それぞれのメリットについて説明します。
(1)地方自治体から補助金が受けられる
空き家の所在する地方自治体の補助金で、リノベーション費用を賄える場合があります。
相続した空き家でレストラン(カフェ)・食堂の経営を営む場合、毎月の賃料はまったくかかりません。
ただし、多くのお客が気軽に来店できて、快適に楽しめる空間を演出したいなら、リノベーションは必要となるでしょう。
各地方自治体(市区町村)では、空き家の改修費用の補助金制度を導入しているところもあります。
例えば、空き家を利活用したい個人であれば、補助対象経費の50%(上限50万円)を補助する等の制度が設けられています。
ただし、各地方自治体によって補助する金額や割合、条件は異なるので、空き家の所在する地方自治体のホームページ等を確認してみましょう。
(2)利益が得られる
常連客の囲い込みに成功すれば、安定的な利益が見込めることでしょう。
レストラン(カフェ)・食堂でおいしい食事を提供すれば、SNSや口コミで近隣に評判が拡散されていく可能性もあります。
ただし、集客を安定させるには空き家も居心地のよい空間となるよう、リノベーションする必要があります。
なお、個人でレストラン(カフェ)・食堂を営む以上は「個人事業税」等がかかるので、納税も忘れてはいけません。
(3)地域の憩いの場となる
レストラン(カフェ)・食堂への有効活用は、地域に貢献ができるよい機会となるでしょう。
空き家のある地域の方々とつながりができ、自分のお店が地域交流の場となる可能性もあります。
地域交流の場としたいならば、まず近隣に開店した旨のチラシを配布し、ホームページの設置やSNSへの投稿等を行います。
地域の方々に受け入れてもらうため、地域の集会やイベントへ積極的に参加してみましょう。
なお、自分の店舗を身近に感じてもらいたいなら、自分のお店で地域の集会・イベント等を開催するのもよい方法です。
空き家をレストラン・食堂へ活用する方法
空き家をレストラン(カフェ)・食堂に有効活用したいなら、空き家の状況把握や開業までの手続きを確認し、慎重に計画をたてる必要があります。
(1)レストラン・食堂へ活用する前に確認すべき点
空き家を有効活用したいからといって、いきなりお店は開業できません。
様々なプロセスを経る必要がある他、実行へ移す前に空き家の状況を確認し、空き家が建っている土地も荒れ放題とならないように管理します。
空き家に関する次の点を確認し、維持・管理に努めましょう。
- 空き家の外を点検・管理する:ポストを開けてチラシや郵便物がたまっていないか、外壁に落書きをされていないか、不法投棄の有無等を確認する。庭に雑草が生えていたら処理する。
- 屋内を点検する:定期的に換気し湿気やカビの発生を抑える、水回りを点検し漏水がないか確認、天井からの雨漏りの有無も把握する
現状が把握できれば、空き家のどのような箇所を重点的に修繕しなければいけないかがわかります。
(2)どのようにリノベーションするかが鍵
空き家をどのようにリノベーションするかは、相続した所有者次第です。
ただし、お店の外観が周辺環境にまったくそぐわなければ、集客が難しい場合もあります。
慎重にコンセプト作りを行い、どのような客層をターゲットとするのか、周辺環境にも合わせてリノベーションする必要があります。
具体例をあげましょう。
- 空き家が海の近く、海水浴客やサーファー等をターゲットにしたい:海の家風のお店にする
- 空き家周辺はのどかな農村地帯なので、高齢者の憩いの場としたい:落ち着いた古民家風のお店にする
メニューもコンセプトに沿ったものにするとよいでしょう。
(3)空き家をレストラン・食堂へ活用する手順
空き家をレストラン(カフェ)・食堂に有効活用する手順は次の通りです。
- 相続した空き家の現状を把握する:どのような箇所が老朽化しているかや、重点的な修繕箇所を確認する。
- どのような客層をターゲットにするか決めメニュー開発や集客戦略、周辺環境を調査し空き家の外観も決める。
- 資金計画をたてる:改装工事・内装工事や設備の導入、家具の購入費用、仕入れ代・広告宣伝費等を計算する。資金調達は主に自己資金や金融機関からの借入、親族による支援等の方法を検討する。補助を受けたいなら地方自治体ホームページをみて、募集の有無を確認する。
- 開業許可申請を行う:税務署に開業届、保健所に飲食店営業許可取得のため、施設図面・設備の配置図等を提出する。食品衛生責任者資格も取得する。
- 建築基準法・都市計画法を確認:用途変更する際に確認申請が必要な場合、所定の手続きを行う。
- 空き家の改修工事に着手:許可申請が完了した後、内装工事・設備の導入工事を実施する。
- お店を開業する
お店を開業するまでには6ヶ月〜1年程度かかる可能性があります。
短期間での開業はなかなか難しいので注意が必要です。
空き家をレストラン・食堂へ活用するときの注意点
空き家をレストラン(カフェ)・食堂として生まれ変わらせる前に、確認しなければいけない点は多いです。
お店として利活用し、安定した利益を得ながら地域の憩いの場としたいときは、まず空き家の周辺環境をよく調査しなければいけません。
他の競合する飲食店の存在はもちろん、公共交通機関の利便性等も把握する必要があるでしょう。
(1)空き家の周辺環境もよく確認してから活用する
お店の開業を目指すならば、様々な準備へ移る前に空き家の周辺環境を調査しておきます。
- 空き家のある地域の人口動態を調査:周辺地域の年齢層(若年層が多いか・高齢者が多いか)、家族構成の把握(ファミリー層が多いか・単身者が多いか等)を把握すれば、ターゲットとなる客層がわかる。
- 大きな施設等の有無を調査:商業施設があるのか、高校や大学等の教育施設があるのか、工場等があるのかを調査する。メニューや値段設定の参考になる。
- 競合状況の調査:同じ地域にどのような飲食店があるのかを調査する。実際に飲食店へ行き、特徴や問題点を分析すれば、競合店との差別化ができる部分もみつかり、自分のお店の独自性を打ち出せる。
- 交通アクセスを調査:国道に接しているか、バスの停留所は近いか、駅からどのくらいの距離か等を確認する。トラックやマイカーで訪問する客をターゲットにする場合、駐車場の整備も重要なポイントとなる。
詳細に調査すれば、周辺環境に合わせた採算のとれる店舗経営が可能となるでしょう。
(2)活用が難しいなら別の方法を考える
レストラン(カフェ)・食堂の活用が難しいなら、別の方法はないか柔軟に検討します。
空き家の周辺環境を調査する過程で、「どうもこのエリアで飲食店の営業は難しい」「強力なライバル店が多すぎて開業は無理だ」と感じることもあるでしょう。
その場合は地域の状況を踏まえ、次のような空き家の活用方法を検討しましょう。
- 民泊:リノベーション後、宿泊客が快適かつリーズナブルに泊まれる宿泊施設とする。空き家の近くに景勝地があれば有利。
- シェアオフィス:駅・オフィス街に立地していた場合、個人事業主やベンチャー企業に貸し出せる。
- 貸倉庫:空き家が郊外にあるなら、個人向け貸倉庫として貸し出す。
なお、活用方法が見当たらず困っている場合は「空き家バンク」に登録し、移住希望者に売却または貸し出してもよいでしょう。
まとめ
誰も居住しない空き家は、レストラン(カフェ)・食堂として有効活用するのもよい方法です。
ただし、安定した収益を得るためには、地域のニーズに合ったお店作りを行わなければいけません。
飲食店の競争が激しいときや、人が寄り付かない場所にあって集客は難しいと感じたら、別の活用方法も柔軟に検討してみましょう。