空き家のままだと固定資産税は安い?空き家対策特別措置法とは

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空き家 固定資産税

最近、新聞やニュースなどで目にする機会が多いのが空き家問題です。日本では、空き家が増え続けていて、手入れされないままの廃墟のような家が、悪臭や不法投棄、景観や治安の悪化などの問題を招くことが懸念されています。

なぜ、空き家が増え続けているのでしょうか。実は空き家問題は、税金と大きく関連しています。

この記事では、空き家の増加が社会問題化している理由、空き家のまま放置するリスク、今後の空き家問題に対する政府の取り組みなどについて解説します。

空き家の増加が社会問題化している理由

国土交通省が公開している「平成30年住宅・土地統計調査」という資料の空き家率の推移を示すグラフを見ると、空き家率は年々右肩上がりに上昇しており、平成30年には空き家率が13.6%まで上昇しています。

今後も空き家率は年々上昇し、令和15年には空き家率が30%を越えると試算されているのです。

同じ資料内にある空き家の種類別割合を示すグラフを見ると、「その他の住宅」が年々増加し、平成30年度には41.1%まで増加しています。「その他の住宅」とは、賃貸用でも売却用でもなく区分が難しい住宅や長期間不在となっている住宅を指します。

つまり、目的もなく空き家となっている住宅が増えていることを表しているのです。

このような住宅は、手入れが行き届かず、廃墟と化す可能性が高いといわれています。

上記の表を踏まえ、空き家が増えて続けている理由を説明します。

(1)人口減少

空き家が増えている大きな原因の一つは、人口の減少です。

現在の総世帯数は人口減少の中においても若干、増加しています。しかし、総世帯数が増えている大きな要因は単身世帯層が増加しているためです。

総務省統計局が公開している「日本の人口・世帯」という資料の中の国勢調査の結果を表したグラフを見ると、単身世帯や2人世帯は未だ増加傾向にあるものの、3人以上の世帯が年々減少していることがわかります。

空き家となるのは3人以上の家族が住まいとして利用していた家屋が多いので、3人以上の世帯の減少と共に空き家が増加しているのです。

また、第一次ベビーブーム世代の相続が急激に増えていることも空き家が増加する原因の一つといえるでしょう。日本の昔の慣習として、家長が亡くなると、長男が後を継ぎ、家を守ることが一般的な流れでした。

しかし、近年、核家族化が進み、親が亡くなっても実家に帰る人が少なく、子供は子供で自分の家を持っているため、実家を空き家として保有するケースが増加しています。これらの理由により空き家が年々増加しているのです。

(2)固定資産税の優遇

誰も住まない実家なら、さっさと解体して更地にしていた方が倒壊リスクや管理の手間が省けるのに、なぜ解体して更地にしないのでしょうか。家族との思い出が詰まった実家を残しておきたいという思いがあることも大きな理由の一つですが、

固定資産税と都市計画税も大きく影響しているといわれています。

固定資産税と都市計画税は、毎年不動産の所有者が支払わなければいけない税金です。

毎年1月1日時点の所有者に対して市町村が、固定資産税と都市計画税を請求します。

請求された不動産の所有者は4回に分けて固定資産税と都市計画税を支払っているのです。

固定資産税と都市計画税の計算方法は以下のとおりです。

  • 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
  • 都市計画税:固定資産税評価額×0.3%

固定資産税や都市計画税には特例があり、家屋がある不動産の場合は、課税額が1/3もしくは1/6まで減額されます。

つまり、解体して更地にしてしまうと宅地ではなくなってしまうので、固定資産税が3倍か6倍まで上がってしまうのです。

例えば、固定資産税評価額3,000万円の土地の固定資産税と都市計画税は合計51万円の固定資産税が発生します。内訳は以下のとおりです。

  • 固定資産税:3,000万円×1.4%=42万円
  • 都市計画税:3,000万円×0.3%=9万円

宅地扱いの場合は特例が利用できるので、以下の金額まで減額されます。

  • 1/3減額の場合:51万円÷3=17万円
  • 1/6減額の場合:51万円÷6=85,000円

固定資産税が増えることを避けるために、そのまま空き家として保有する方が多いことも、空き家が増える原因の一つといえるでしょう。

空き家を放置した場合の費用面のリスク

空き家状態で保有することにより固定資産税の増額を避けることはできますが、空き家として放置すると、様々な費用を負担しなければいけない可能性もあります。空き家を放置することでかかる可能性のある費用について説明します。

(1)維持管理の費用

空き家状態で保有する場合、維持管理の費用がかかることを認識しておく必要があります。建物は、経年と共に劣化し、修繕を行わなければ劣化のスピードが加速します。また、庭の雑草や植木なども放置していると伸び放題になり、景観を大きく損なう原因の一つとなるでしょう。

ある程度費用をかけて維持管理を適切に行うことで、空き家でも劣化を抑えて近隣に大きな迷惑をかけることなく維持することができます

(2)税金の支払い

不動産を所有しているだけで税金の支払いが発生します。空き家の状態であろうが、更地の状態であろうが税金は払わなければいけません。

固定資産税は決して安い金額ではありませんので、更地にすることで、3倍若しくは6倍の違いが出てくると大きな負担となることでしょう。ただし、固定資産税が安いからといって空き家の状態のまま所有していると、空き家に対するリスクを負う可能性もあります。

思い切って売却して、税金の負担や維持管理の負担をなくすのも選択肢の一つです。

(3)不動産価値の下落

空き家状態のまま放置しておくと、不動産価格に大きく影響する可能性もあります

空き家状態の家屋の多くは築年数が古く、そのまま住むには大きな修繕費用がかかる場合もあります。そのため、不動産価格が大きく損なわれる可能性もあるのです。

空き家が古くて住める状態ではない場合、そのままの状態で売却したとしても解体費用に大きな金額がかかることから、価値が大幅に下がり、売却により得られる売買金額が減少します。

不動産価値の観点からも、空き家のまま所有するのか更地にするのかを検討する必要があるでしょう。

空き家対策措置法による特定空き家に指定された場合

近年、空き家の急激な増加に伴い、空き家対策措置法が施行されました。空き家対策措置法が施行されたことにより、どのような変化があり、どのような点に注意が必要なのでしょうか。空き家対策措置法の施行による変化や注意点などについて説明します。

(1)住宅用地の特例がなくなる

空き家対策措置法の施行による最も大きな変化は、固定資産税の宅地特例が使えなくなる可能性があるという点です。

従来は、空き家状態にしておくメリットの一つとして、固定資産税が1/3か1/6に減額されることがありましたが、空き家対策措置法により、管理不十分で放置された状態だと認定された場合、固定資産税の特例が使えなくなってしまうのです。

つまり、空き家にしておくメリットがほとんどなくなってしまうのです。

(2)特定空き家に指定される流れ

全ての空き家が特例を使えなくなるわけではなく、空き家対策措置法により、管理不十分のまま放置されたと判断された場合のみ、特例を使えなくなります。

空き家対策措置法では、公共料金の使用状況から1年間を通して人の出入りがほとんどなかったと判断された場合や近隣からの苦情を受けた場合などに、行政が空き家に対して立ち入り調査を実施することを認めています。

調査の結果、管理不十分だと認定されると特定空き家に指定されます

(3)特定空き家に指定された場合のリスク

特定空き家に指定されただけでは、固定資産税の特例から除外されることはありません。

特定空き家に指定されると、行政から助言や指導を受けます。その時点で、助言や指導に従って改善を行えば、固定資産税の特例からは除外されません。ただし、改善がみられなければ、勧告されて、固定資産税の特例から除外されるのです。

その後も改善がみられない場合、罰金刑に処される可能性もあるため注意が必要です。

今まで以上に空き家をしっかりメンテナンスすることが求められているという点は認識しておきましょう。

空き家の固定資産税負担を軽減する方法

空き家のまま放置する以外にも、固定資産税を軽減する方法はあります。空き家の固定資産税負担を軽減する方法について説明します。

(1)賃貸に出す

固定資産税を軽減する方法の一つとして、賃貸に出す方法があります。家はそのままの状態で活用できるので、固定資産税の宅地特例を利用することができます。また、家賃収入を得ることも可能です。

最初に空き家の改装費用などが必要になる場合も多いですが、最近は築年数が古い家を古民家風に改装するなど、あまり費用をかけないリノベーションで賃貸を実現しているケースも増えています

(2)売却する

今後、所有する空き家を活用する予定が特にない場合、売却して現金化することを検討してもよいでしょう。空き家の状態で長期間保有していても、適切に運用できなければ、お金を支払うだけの負の遺産となりかねません。

売却すれば、空き家として保有することによるリスクを回避することができ、固定資産税を支払う必要もなくなります。売却して得た利益で、自分が管理できそうな不動産を購入して資産運用することも可能です。

まとめ

この記事では、空き家の増加が社会問題化している理由、空き家のまま放置するリスク、今後の空き家問題に対する政府の取り組みなどについて解説しました。

空き家対策措置法が施行されたことにより、今までのように空き家状態で放置しておくことは難しくなりました。廃墟化する空き家を増やさないために必要な措置とはいえ、所有者に対する責任は非常に重くなっています。

特定空き家に指定されないよう、適切な管理が求められるということをしっかり認識しておきましょう。

参考サイト

平成30年住宅・土地統計調査(国土交通省公式サイト)

https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf

日本の人口・世帯(総務省統計局公式サイト)

https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/pdf/life_revised.pdf

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