空き家のままだと固定資産税は安い?空き家対策特別措置法とは

最近、新聞やニュースなどで目にする機会が多いのが空き家問題です。
空き家は「そのまま維持する方が固定資産税が安い」と思われて放置されがちですが、管理が不十分なまま放置すると、特例の適用が外れて固定資産税が高くなる可能性があります。
この記事では、空き家の増加が社会問題化している理由、空き家のまま放置するリスク、今後の空き家問題に対する政府の取り組みなどについて解説します。
空き家の増加が社会問題化している理由
総務省が2024年4月に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年現在の日本の空き家数は900万戸に達し、2018年の前回調査から51万戸増加しました。
空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。
さらに深刻なのは「放置空き家」の増加です。
賃貸・売却用や別荘を除いた、使用目的のない放置空き家は2003年からの20年間で1.8倍に増加し、2023年には385万戸に達しました。
空き家が増え続ける主な要因は以下の2点です。
(1)人口減少
空き家が増えている大きな原因の一つは、人口の減少です。
現在の総世帯数は人口減少の中においても若干、増加しています。しかし、総世帯数が増えている大きな要因は単身世帯層が増加しているためです。
総務省統計局が公開している「日本の人口・世帯」という資料の中の国勢調査の結果を表したグラフを見ると、単身世帯や2人世帯は未だ増加傾向にあるものの、3人以上の世帯が年々減少していることがわかります。
空き家となるのは3人以上の家族が住まいとして利用していた家屋が多いので、3人以上の世帯の減少と共に空き家が増加しているのです。
また、第一次ベビーブーム世代の相続が急激に増えていることも空き家が増加する原因の一つといえるでしょう。日本の昔の慣習として、家長が亡くなると、長男が後を継ぎ、家を守ることが一般的な流れでした。
しかし、近年、核家族化が進み、親が亡くなっても実家に帰る人が少なく、子供は子供で自分の家を持っているため、実家を空き家として保有するケースが増加しています。これらの理由により空き家が年々増加しているのです。
(2)固定資産税の優遇
誰も住まない実家なら、さっさと解体して更地にしていた方が倒壊リスクや管理の手間が省けるのに、なぜ解体して更地にしないのでしょうか。家族との思い出が詰まった実家を残しておきたいという思いがあることも大きな理由の一つですが、
固定資産税と都市計画税も大きく影響しているといわれています。
固定資産税と都市計画税は、毎年不動産の所有者が支払わなければいけない税金です。
毎年1月1日時点の所有者に対して市町村が、固定資産税と都市計画税を請求します。
請求された不動産の所有者は4回に分けて固定資産税と都市計画税を支払っているのです。
固定資産税と都市計画税の計算方法は以下のとおりです。
- 固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
- 都市計画税:固定資産税評価額×0.3%
固定資産税や都市計画税には住宅用地の特例があり、住宅が建っている土地については課税標準が軽減されます。
小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡以下の部分)の場合、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されます。
一般住宅用地(200㎡を超える部分)の場合は、固定資産税は3分の1、都市計画税は3分の2に軽減されます。
例えば、固定資産税評価額3,000万円の土地の固定資産税と都市計画税は合計51万円の固定資産税が発生します。内訳は以下のとおりです。
- 固定資産税:3,000万円×1.4%=42万円
- 都市計画税:3,000万円×0.3%=9万円
-
住宅用地の特例が適用される場合は、固定資産税と都市計画税で軽減率が異なります。
例えば、土地全体が小規模住宅用地に該当する場合、固定資産税は42万円÷6=7万円、都市計画税は9万円÷3=3万円となり、合計10万円です。 -
また、一般住宅用地に該当する場合は、固定資産税は42万円÷3=14万円、都市計画税は9万円×2/3=6万円となり、合計20万円です。
住宅を解体して更地にすると、このような特例が適用されません。
そのため、固定資産税が増えることを避けるために、そのまま空き家として保有する方が多いことも、空き家が増える原因の一つといえるでしょう。
空き家を放置した場合の費用面のリスク
空き家状態で保有することにより固定資産税の増額を避けることはできますが、空き家として放置すると、様々な費用を負担しなければいけない可能性もあります。
空き家を放置することでかかる可能性のある費用について説明します。
(1)維持管理の費用
空き家状態で保有する場合、維持管理の費用がかかることを認識しておく必要があります。
建物は、経年と共に劣化し、修繕を行わなければ劣化のスピードが加速します。
また、庭の雑草や植木なども放置していると伸び放題になり、景観を大きく損なう原因の一つとなるでしょう。
ある程度費用をかけて維持管理を適切に行うことで、空き家でも劣化を抑えて近隣に大きな迷惑をかけることなく維持することができます。
(2)税金の支払い
不動産を所有しているだけで税金の支払いが発生します。
空き家の状態であろうが、更地の状態であろうが税金は払わなければいけません。
固定資産税は決して安い金額ではありませんので、更地にすることで、3倍若しくは6倍の違いが出てくると大きな負担となることでしょう。
ただし、固定資産税が安いからといって空き家の状態のまま所有していると、空き家に対するリスクを負う可能性もあります。
思い切って売却して、税金の負担や維持管理の負担をなくすのも選択肢の一つです。
(3)不動産価値の下落
空き家状態のまま放置しておくと、不動産価格に大きく影響する可能性もあります。
人が住んでいないと、換気や採光が不足し、湿気がこもりやすくなります。
その結果、カビの発生や木材の腐食、シロアリ被害などが起きやすくなり、建物の劣化が急速に進むことも珍しくありません。
また、空き家状態の家屋の多くは築年数が古く、そのまま住むには大きな修繕費用がかかる場合もあります。
そのため、不動産価格が大きく損なわれる可能性もあるのです。
空き家が古くて住める状態ではない場合、そのままの状態で売却したとしても解体費用に大きな金額がかかることから、価値が大幅に下がり、売却により得られる売買金額が減少します。
不動産価値の観点からも、空き家のまま所有するのか更地にするのかを早めに検討する必要があるでしょう。
空き家対策特別措置法による特定空家等に指定された場合
近年、空き家の急激な増加に伴い、空き家対策特別措置法が施行されました。
空き家対策特別措置法が施行されたことにより、どのような変化があり、どのような点に注意が必要なのでしょうか。
空き家対策特別措置法の施行による変化や注意点などについて説明します。
(1)住宅用地の特例がなくなる
空き家対策措置法の施行による最も大きな変化は、固定資産税の宅地特例が使えなくなる可能性があるという点です。
従来は、空き家状態にしておくメリットの一つとして、固定資産税が1/3か1/6に減額されることがありましたが、空き家対策措置法により、管理不十分で放置された状態だと認定された場合、固定資産税の特例が使えなくなってしまうのです。
つまり、空き家にしておくメリットがほとんどなくなってしまうのです。
(2)特定空家等と管理不全空家等とは
空家等対策の推進に関する特別措置法では、管理状態の悪い空き家について、「特定空家等」と「管理不全空家等」という区分が設けられています。
特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等の著しい危険がある状態や、衛生上有害となるおそれがある状態、景観を著しく損なっている状態など、周辺の生活環境に深刻な悪影響を及ぼすおそれがある状態の空き家のことです。
このような空き家に対しては、市区町村が所有者等に対して助言・指導、勧告、命令などの措置を行うことがあります。
一方、管理不全空家等は、2023年12月の法改正により新設された区分で、現時点では特定空家等にまでは至っていないものの、このまま放置すれば将来的に特定空家等に該当するおそれがある状態の空き家のことをいいます。
管理不全空家等が新設されたことにより、空き家の状態の悪化が深刻化する前の段階から、市区町村が指導や勧告を行えるようになりました。
(3)特定空家等に指定される流れ
全ての空き家が特例を使えなくなるわけではなく、空き家対策特別措置法により、管理不十分のまま放置されたと判断された場合のみ、特例を使えなくなります。
空き家対策特別措置法では、公共料金の使用状況から1年間を通して人の出入りがほとんどなかったと判断された場合や近隣からの苦情を受けた場合などに、行政が空き家に対して立ち入り調査を実施することを認めています。
調査の結果、管理不十分だと認定されると特定空家等に指定されます。
(4)特定空家等に指定された場合のリスク
市区町村は、空家等の管理状況について外観調査や所有者確認などを行い、その状態に応じて「管理不全空家等」または「特定空家等」に該当するかを判断します。
管理不全空家等に該当すると判断された場合、市区町村は所有者等に対して指導を行い、改善が見られなければ勧告へ進みます。
勧告を受けた場合は、その敷地が固定資産税の住宅用地特例の対象外となる可能性があります。
特定空家等に該当すると判断された場合、原則として助言・指導、勧告、命令、代執行の順で措置が進められ、勧告を受けると住宅用地特例の対象外となるほか、命令に違反した場合は50万円以下の過料が科されるおそれがあります。
空き家の固定資産税負担を軽減する方法
空き家のまま放置する以外にも、固定資産税を軽減する方法はあります。
空き家の固定資産税負担を軽減する方法について説明します。
(1)賃貸に出す
固定資産税を軽減する方法の一つとして、賃貸に出す方法があります。
家はそのままの状態で活用できるので、固定資産税の宅地特例を利用することができます。
また、家賃収入を得ることも可能です。
最初に空き家の改装費用などが必要になる場合も多いですが、最近は築年数が古い家を古民家風に改装するなど、あまり費用をかけないリノベーションで賃貸を実現しているケースも増えています。
(2)売却する
今後、所有する空き家を活用する予定が特にない場合、売却して現金化することを検討してもよいでしょう。
空き家の状態で長期間保有していても、適切に運用できなければ、お金を支払うだけの負の遺産となりかねません。
売却すれば、空き家として保有することによるリスクを回避することができ、固定資産税を支払う必要もなくなります。
売却して得た利益で、自分が管理できそうな不動産を購入して資産運用することも可能です。
まとめ
この記事では、空き家の増加が社会問題化している理由、空き家のまま放置するリスク、今後の空き家問題に対する政府の取り組みなどについて解説しました。
空き家対策特別措置法が施行されたことにより、今までのように空き家状態で放置しておくことは難しくなりました。
廃墟化する空き家を増やさないために必要な措置とはいえ、所有者に対する責任は非常に重くなっています。
特定空家等に指定されないよう、適切な管理が求められるということをしっかり認識しておきましょう。
参考サイト
令和5年住宅・土地統計調査(総務省統計局公式サイト)
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html
日本の人口・世帯(総務省統計局公式サイト)
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/pdf/life_revised.pdf
空家等対策の推進に関する特別措置法の改正について(国土交通省公式サイト)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html