空き家を放置すると強制退去の可能性も!行政代執行までの流れを解説
2019年4月に公表された、空き家の数は全国で846万件。
空き家率は、13.6%と過去最高を記録しています。
今後も空き家は増加していき、2033年には30%を超える空き家率になると想定されています。
空き家問題は今後社会問題化していく深刻な問題と位置付けられているのですが、今後空き家が増えていく原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、今後空き家に対する対策はどのような施策が取り組まれるのでしょうか?
この記事では空き家に対する問題や管理が悪い空き家と認定された場合の措置などについて解説します。
目次
空き家が社会問題化している原因について
空き家が増加することにより、社会問題となっているのが空き家の廃墟化です。
空き家が廃墟となり、景観を壊す、犯罪の温床になりかねないといったさまざまな問題が起こってきます。
害虫の発生が近隣に及ぼす影響や、ごみによる悪臭の問題も含めて近隣住人には迷惑極まりない建物となってしまいます。
なぜ、このように空き家が増えているのでしょうか?
(1) 団塊の世代における急激な相続の増加
近年、空き家が急激に増えた原因の一つに団塊の世代による相続が挙げられます。
団塊の世代とは我が国において第一次ベビーブームといわれる1947年から1949年に産まれた世代のことを指します。
この世代に産まれた人たちは2020年代に入ると70代を越えてしまいます。
このような世代の相続が増え、空き家が急増しているのです。
特に相続された実家が遠方の場合、満足に出向くこともできずに廃墟化してしまうといった流れになっています。
(2) 少子高齢化と核家族化
次に空き家が増えている原因として少子化や核家族化が挙げられます。
昔は実家があると誰かが相続し、家を守るという考え方が非常に強かった時代がありました。
しかしどんどん家族帯が大家族から核家族へと移行していき、今では実家が近くにあっても別家庭で、別世帯で暮らしているといったことが当たり前となっています。
あわせて高齢となっても、少子化のため子供がいない家庭も多くなってしまい、実家に残る人がいないといったことが原因で、空き家となるケースもあるのです。
このような少子化、高齢化による空き家の増加も要因の一つといえます。
(3) 売ることも貸すこともできない負動産となっている
空き家となった実家など運用方法に困ってしまうことがあります。
築年数が古くなった実家を貸すためにはリノベーション費用が多額になってしまう。
売りたくても、場所や土地の形が悪く売れない。
といったさまざまな理由から活用しきれていない空き家が多くなっています。
つまり、売ることも貸すこともなかなかできない負動産となっているのです。
そして、管理が満足にできておらず家の劣化が進み、さらに売りにくく、貸しにくくなるといった悪循環に陥ってしまっています。
活用がやりにくい空き家が増えてきているという点も、空き家が増加する原因です。
空き家対策特別措置法って何? 行政代執行までの流れ
空き家の増加が社会問題化され、空き家が廃墟化していると前述しました。
空き家のまま放置している最も大きな要因は、固定資産税の軽減です。
家がある土地は、住宅用地の特例で固定資産税の軽減措置を受けており1/3若しくは1/6まで軽減されています。
つまり、家を解体してしまうと固定資産税が3倍から6倍まで増加してしまうので、空き家のまま保有しているといった事情が見えるのです。
また、解体する場合の解体費用がかかってしまいます。
解体することでコストがかかる上に、毎年の税金が高くなるといったことにより空き家状態のままになっていることが挙げられるでしょう。
しかし、空き家の管理もままならず廃墟化している家が増えていることから空き家に対して行政からメスが入りました。
空き家対策特別措置法の施行です。ここからは、空き家対策特別措置法について解説します。
(1) 空き家にメス。 行政から勧告される
空き家の廃墟化を受け2015年2月に施行されたのが空き家対策特別措置法。
管理に問題があると思われる空き家に対し、自治体の介入ができるようになりました。
管理が適切に行われていないと思われる空き家に対して、自治体が今までできなかった敷地内の立ち入り調査や、登記簿の閲覧といった調査を行います。
調査の結果、問題があると判断された空き家においては“特定空き家”として指定し、所有者に管理を行うよう指導をしたり、状況の改善を勧告したりできるようになりました。
(2) 固定資産税が最大6倍に
特定空き家に指定されると、自治体により空き家の所有者に対し指導を行えるようになりました。
しかし、それでも空き家の管理が全く改善されないケースも見受けられます。
すると、行政は指導から勧告へと厳しい措置を提示します。
指導の時点では罰則はありません。
しかし、勧告されてしまうと所有者に対し罰則が与えられてしまうのです。
この罰則とは、固定資産税の軽減措置の撤廃を指します。
空き家のまま家を残しておく要因の一つとして固定資産税の軽減措置を受けることができるからということは先ほど述べました。
勧告を受けた特定空き家は、固定資産税の軽減措置を受けることができなくなるのです。
つまり勧告を受けた特定空き家は固定資産税が最大6倍へと膨れ上がってしまいます。
固定資産税の軽減措置が受けられないと、所有者は空き家のまま保持しておくメリットがなくなってしまうことになるのです。
(3) 強制退去までの流れ
しかし、これも前述しましたが、空き家を解体するにも費用がかかってしまいます。
空き家の解体費用が捻出できず、そのまま放置している特定空き家に関して、最終的な行政の手段は行政代執行による強制退去です。
つまり、管理が悪いと思われる空き家に関しての流れは
指導→空き家調査→勧告→命令→強制退去
という方法により空き家の改善を図る。
これが、空き家対策特別措置法が施行されて以降の大まかな流れです。
空き家対策特別措置法によって行政代執行した例
行政代執行とは、勧告しても改善されない空き家に対して、行政が所有者に成り代わり、解体、強制退去を行うことを指します。
行政代執行した事例や、なぜ行政代執行になるまで空き家の所有者はほったらかすのか?
行政代執行された場合の費用負担はどうなるのか?といった点が気になるところです。
ここからは行政代執行を実際に行った事例などを基にさまざまな要因を分析してみましょう。
(1) 行政代執行した事例
築50年の平屋建て建物が火災により半焼状態で放置されていました。
所有者はすでに亡くなっており、そのまま放置しておくと倒壊も起こり得る状態です。
相続人は7人もいたのですが、皆相続放棄をしてしまい、所有者不在といった状態でした。
そこで、行政代執行により建物を解体、強制退去させ自治体の負担により建物を解体した事例があります。
所有者がいれば、指導や勧告ができるのですが、このように相続放棄されてしまうと自治体の費用、つまり税金によって処理を行わなければいけなくなります。
このような事例はほかにも数多くあり、自治体の悩みの種となっています。
(2) 行政代執行まで進んでしまうのはなぜ
行政代執行に進む前に所有者は何とか対応しないの?といった疑問がどうしても頭に浮かんでしまいます。
しかし、そもそも実家が空き家となった、実家ではないが、なじみがある家などはまだ何とかしようと思うのかもしれません。
しかし、相続でよくわからない家を受け継ぐ場合は、あまり思い入れもなく、処分になどにコストがかかるのが嫌だと感じる人も多いのです。
さらに前述の事例のように相続放棄されてしまうと責任がなくなるのでどうしようもありません。
解体までのコストの問題、相続放棄による所有者不在といった原因が、行政代執行に至る要因ともいえるでしょう。
(3) 行政代執行した費用はどうなっている?
基本的に、行政代執行による費用は税金で行いますが当然ながら所有者がいる場合は所有者に請求されます。
所有者が支払わない場合は解体した更地の差し押さえだけではなく、所有者がもっている財産などを差し押さえることも可能です。
しかし、先ほどのように所有者不在の建物に関しては更地を売却して解体費用に充てるなどで少しでも解体費用の回収に取り組みます。
しかし、実際に全額回収できるケースは全体の1割ほどだという報道もあり自治体にとっては深刻な問題となっているのです。
空き家にはデメリットしかない 強制退去にならないためには
空き家対策特別措置法が施行されて以降、もう空き家を放置しておくことに全くメリットは無くなります。
では、行政代執行による強制退去を防ぐためにはどのような対策を行えばいいのでしょうか?
(1) 自分たちでしっかりと管理する
最も費用がかからない方法は自分たちできちんと管理していくことです。
定期的に空き家を訪問し、掃除や換気を行うだけでも空き家の劣化を防ぎ、廃墟化を避けることができます。
人は住んでいないので、そこまで大掛かりな補修でなければ自分たちでDIYすることも可能です。
また、庭木の剪定や除草のみ業者に依頼するかいっそのこと草木をなくしてしまうのもいいでしょう。
(2) 空き家管理サービスを利用する
空き家が遠方にあり出向くだけでも大きな出費になるという場合には空き家管理サービスに依頼するのも効果的です。
空き家管理サービスとは、空き家が増えたことに対するサービスとして不動産会社が取り組んでいます。
不動産会社が1ヶ月に1回程度現地を訪問し、簡易清掃や換気を行うサービスです。
また、修繕個所の報告や手配も行いますので、遠方にいる所有者には大変便利なサービスといえるでしょう。
費用は会社によって異なりますが月1万円程度なのでそこまで大きな負担ではありません。
このようなサービスを有効活用することも効果的な対策です。
(3) 解体して更地のまま保有しておく
空き家は保有していくだけで、固定資産税は安くなるかもしれませんが維持管理費のコストがかかってしまいます。
いっそのこと解体し更地として活用してもいいのではないでしょうか?
駐車場経営や建貸地として保有して家賃収入でコストを賄うこともできます。
需要があるエリアかどうかといった問題はありますが、不動産自体に働かせて収入を得ることでコストをなくすことも可能です。
まとめ
空き家の管理不備による行政代執行などの強制退去は、絶対に避けなければいけません。
空き家対策特別措置法の施行により、空き家のまま保有することにメリットは無くなってしまいます。
近隣地域にも多大な迷惑をかけることになりますので、空き家管理をきちんと行っていない人は、管理について今一度しっかりと考えましょう。
解体費用は、融資を受けることも可能なローン商品なども出ています。
管理方法などもこの記事で解説していますので是非参考にしてはいかがでしょうか?