空き家を放置すると罰則の対象に!空き家対策特別措置法の規定を解説
相続で引き受けた実家など空き家状態でほったらかしにしているケースが増えています。
「管理方法が分からない」、「築年数が古すぎて売れない」、「なかなか帰る時間がない」などほったらかしにしている理由はさまざまです。
しかし、空き家がどんどん増加していることから管理されていない空き家に対して、国が規制を行うようになりました。
この記事では空き家が罰則の対象となる理由や空き家の活用法などについて解説します。
なぜ空き家が罰則の対象となる
空き家に関してマイナス面を感じるニュースを近年良く目にします。
例えば、明らかに居住用としては利用できていない空き家がそのまま残っている、
空き家が放火で半焼しているがそのまま現存していて倒壊の恐れがあるなどです。
空き家の管理が悪いと判断されてしまうと、行政により、指導や勧告を受ける場合があります。
そうなると罰則の対象となるのですが、なぜ、空き家に対して行政措置が入るようになったのでしょうか?
(1)空き家の急激な増加
空き家が急激に増えていて、同時に空き家の管理がままならない廃墟となった空き家が増えています。
空き家は、増加の一途をたどっており、2019年には864万件もの空き家が現存しているのです。
空き家率は全体の13.6%。
しかし、2033年には30%程度の空き家率になると想定されています。
空き家が増えた原因はさまざまですが、空き家であってもきちんと管理されているのであれば大きな問題はありません。
しかし、前述しましたが満足に管理されていない、廃墟と化した空き家が増えているのが、大きな問題なのです。
(2)空き家対策特別措置法の施行について
廃墟となった空き家をこれ以上増やさない、空き家の管理を徹底させるといった目的で2015年9月に施行されたのが空き家対策特別措置法。
満足に管理されていない空き家に関し、行政が立ち入ることができるようになりました。
例えば、
- 今までは立ち入り禁止だった敷地に入り、調査が可能になった
- 住民票や固定資産税台帳など個人情報に関わるものの閲覧が可能になった
など、個人情報に関わる部分にも行政が踏み込み、調査することが可能になったのです。
なぜ、空き家対策特別措置法により、自治体へここまでの権限を与えたのでしょうか?
大きな理由は、廃墟となった空き家が与える近隣へのリスクが大きくなっているからなのです。
倒壊となってしまうと近隣住民が大きな被害を受けてしまうかもしれません。
近隣住民や街の管理といった点により、一定の権限を与え、空き家の所有者に対し、厳しく指導できるようになりました。
(3) 空き家の基準や特定空き家とは何?
空き家対策特別措置法により、管理が悪いと判断される空き家に関しては特定空き家に認定されてしまいます。
特定空き家の定義とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態にある空き家を指します。
また、著しく衛生上有害となるおそれのある空き家。
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている空き家。
他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である空き家。
これらの要件のどれかに当てはまる空き家が、特定空き家とみなされます。
特定空き家に指定されてしまうと、
- 住宅を保有した場合の特例対象からの除外
- 50万円以下の過料
- 行政代執行
などさまざまな罰則がかかりますので今後空き家とはいえ、きちんと管理することを求められているのです。
そもそもなぜ空き家が増えている?
そもそもなぜ空き家のままにしているのでしょうか?
空き家のまま保存しておく方が管理などにおいてお金がかかりそうなものですが、なぜ空き家のまま保有している人が多いのでしょうか?
空き家が増えている要因について触れてみましょう。
(1)固定資産税が安い
最も大きな要因が固定資産税の軽減措置です。
固定資産税は、不動産を所有している人が毎年支払わなければいけない地方税を指します。
所有者に納付書が送られ、不動産の所有者は4回に分けて支払いますが、土地を住宅用地として利用している場合は、特例により軽減措置を受けているのです。
特例を受けていない場合の固定資産税より1/3若しくは1/6まで軽減されます。
つまり解体すれば住宅用地としての使用ではなくなりますので、住宅用地の特例措置を受けることができません。
一気に固定資産税が3倍から6倍にあがってしまう。
これが空き家のまま所有している要因の一つといえるでしょう。
(2)少子高齢化や核家族化が要因
少子化や高齢化、そして核家族化も大きな要因です。
昔は、長男が実家を引き継ぎ、家を残していくといった考え方が当たり前でした。
しかし、少子化によって担い手がいなくなった家が残っているケースやそもそも実家とは完全に離れて生活する核家族化が一般的になっています。
そのため、親が亡くなり実家にだれも住まなくなっても、Uターンによって実家を残すといったケースが少なくなったことも影響しています。
また、第一次ベビーブーム世代である団塊の世代が残した財産として空き家が残り、急激に増えていることも付け加えておきましょう。
(3)自分が住んでいないので他人事感が強い
そもそも自分が住まない実家に関して他人事感が強くなってしまうことも挙げられます。
特に、相続などによって引き継いだ場合、兄弟など複数の相続人が所有するといったケースも考えられ、誰かがやるだろうといった責任感の欠如もあるでしょう。
空き家のまま放置していても、普段の生活に影響がないといった点も挙げられます。
空き家となった田舎の実家 罰則以外にもこんなリスクに注意
今後、空き家は厳しく行政の監視が入る可能性があるのですが、そもそも空き家の管理をきちんとしていなければさまざまなリスクを後々受けてしまうこともあります。
空き家に関する管理を怠った場合の考えられるリスクについて解説します。
(1)防犯面のリスク
空き家の管理を怠ってしまうと、誰が見てもだれも住んでいないということが分かってしまいます。
そのため、犯罪の温床となってしまうことがあるのです。
例えば、犯罪の取引場所となってしまう場合や、詐欺により届けられた品物の取引先に指定されるといったことが考えられます。
更に不審者が入り込み、火気の取扱不備による出火や放火されることもあり、賠償責任を負うことにもなりかねません。
特に火災のリスクは深刻で、火災により第三者が被害を受けた場合、きちんと管理していなければ所有者が賠償責任を負うケースもあります。
火災保険も空き家の場合は対象外となる場合もありますので、多額の賠償金を支払わないといけないかもしれないのです。
防犯面のリスクは、特に注意しておく必要があります。
(2)衛生面でのリスク
空き家の管理を怠ると、換気や掃除ができないため、害虫が発生することになってしまいます。
害虫の発生は建物の劣化を急速に早めてしまい、倒壊してしまう可能性も否定できません。
たかが衛生面と思うかもしれませんが、不衛生な状態が続くと、本当に早い時期に家として使い物にならなくなってしまいます。
特に注意したい害虫はシロアリやネズミでしょう。
シロアリの発生は、近隣の住民にも大きな悪影響となってしまいます。
1ヶ月に一回でも定期的に訪問すれば、衛生面のリスクは大幅に解消できますし、害虫対策のために薬の散布などを徹底して行えば回避できるリスクです。
しかし、かんたんな管理すらできなければ後々受ける被害は非常に大きなものになるでしょう。
(3)環境悪化のリスク
近隣住民に迷惑をかけるといった点では環境悪化のリスクも考えられます。
管理を怠っていると、庭の草木が伸び放題となり、蚊などが発生しやすくなってしまいます。
庭にある樹木が隣の敷地や道路まで伸びてしまい、迷惑をかけてしまうことも考えられるでしょう。
また、廃墟状態となっていると、景観を非常に損ない、誰も近くに住みたがらなくなり、近隣の資産価値さえ下げかねません。
直接的な被害ではありませんが、近隣に大きな迷惑をかけるので、今後の活用を考えた場合、近隣住人の協力が得られない可能性が高くなります。
空き家を放置せずに活用する方法は?
空き家を管理が悪い状態で所有しておくことはほとんどデメリットばかりといえるでしょう。
つまり、何かに運用していくのか、いっそのこと売却してしまうのか活用方法を考えなければいけません。
しかし、実家などの場合、思い出が詰まっている場所を売却してしまうことにためらいを感じて、そのままにしている人も多いのです。
では、売却以外ではどのような活用方法があるのでしょうか?
(1)古民家として貸し出す
空き家の特徴で多いのは実家など築年数が経過してしまっていることが考えられます。
賃貸で貸し出すにしても大きくリノベーションしなければいけないので投資費用がかかるとためらう人もいるのではないでしょうか?
しかし、近年スローライフ生活を送りたいとあえて、築年数が古い家を好む人が増えています。
そこで、あえてあまり家に手を加えず、借主に自由にリノベーションしてもらい古民家として貸し出すのはいかがでしょうか?
すると費用もあまりかからないし、管理も借主が行います。
更に家賃収入を得ることもできるので一挙両得です。古さをあえて強調する活用方法は、ひとつの手法です。
(2)自分の別荘にする
空き家が避暑地にある場合やレジャーが楽しめる場所にある場合、いっそのこと自分で別荘として活用してはいかがでしょうか?
2020年からテレワークという新しいワークスタイルが登場しました。
これは、わざわざ会社に出社せず、自宅で仕事をするスタイルでコロナ禍により定着した新たなワークスタイルを指します。
少し遠い場所にいてもネット環境があれば仕事ができるので実際に郊外物件の購入が増加しているのです。
実家にしばらく滞在する間に仕事をすることも可能なワークスタイルなので、別荘として活用しやすい環境が整い始めています。
自分で時々別荘代わりとして活用するのもおすすめの活用方法です。
(3) 更地にして駐車場経営
結局空き家状態にしているから、管理やコストがかかるわけです。
空き対策特別措置法の施行により、管理が悪ければ固定資産税は安くなりません。
それなら、いっそのこと解体して駐車場として活用するのはいかがでしょうか?
駐車場ならば、特にこまめな管理は、必要ありません。
管理会社に任せてしまえば、所有者が対応する必要もなくなります。
更に収入を得ることも可能です。
コストを減らし収入を得る方法としては駐車場経営を検討してもよいでしょう。
まとめ
空き家のまま所有しておくことは、しっかりと管理をしていなければ逆に大きな不利益を生じる可能性も高くなりました。
前述した、特定空き家に指定されないように、日々管理に注意しておかないといけません。
空き家対策特別措置法による特定空き家に指定される以前にさまざまなリスクがあります。
火災保険の適用外ともなりえる賠償責任を負う可能性もあります。
相続により得た実家などは資産となりますが、管理次第では大きな負債を産みだす要因となり得るのです。
空き家の有効活用を、売却も含めしっかりと検討しましょう。