空き家管理のポイント・劣化を防ぐために必要なメンテナンスとは
「空き家となった実家を相続したけど、どう管理していいかわからない」、「空き家ってメンテナンスの必要があるの?」など、
空き家の管理やメンテナンスに関する不安や悩みを持っている人も多いのではないでしょうか?
家は人が住んでいるときよりも空き家状態の方が劣化に気づかず、気づいたら大きな修理費用が必要になることがあります。
空き家とはいえ適切な管理をしなければ、さまざまなリスクに直面してしまうことがあるのです。
この記事では、空き家に関する管理方法やメンテナンスなどについて詳しく解説します。
空き家を保有している場合のメンテナンス どの箇所が多い
まず空き家を保有しているときに注意しなければいけないメンテナンス個所はどこがあるのでしょうか?
特に注意しておきたいメンテナンス個所は、大きく3か所に分類されます。
ここからは、なぜ注意しておく必要があるのかについて掘り下げてみましょう。
(1) 給排水管について
給排水管は、使用していなければ、給排水管内部の劣化が急激に進んでしまう非常に悩ましい箇所です。
空き家状態とはいえ給排水管はどうしても水分が残ってしまいます。
空き家状態で水の流れがなくなると、残った水分がなくなる間にサビが進み、水を流すときにサビを含んだ赤水が流れてきます。
また、サビが更に進むと給排水管内部に穴が開き、漏水などの原因となり大きなダメージを負ってしまうのです。
給排水管が大きなダメージを受けてしまうと、給排水管の修理ではなく交換になってしまい多額の費用が発生する原因となってしまいます。
給排水管のうち、排水管は使い続けることにより、乾燥を防ぐ役割を果たしているので水の流れは欠かせません。
排水管内部にはどうしてもごみや汚れが付着してしまいます。
排水管に水が流れなくなってしまうと、これらのごみや汚れが乾燥し、硬化や劣化に繋がり排水管にダメージを与えるのです。
空き家となって最もダメージを受けやすい箇所の一つといえるでしょう。
(2) 害虫駆除について
空き家にとって悩ましいのが害虫の発生です。
空き家となってしまうと清潔に維持していくことがなかなかできません。
掃除を定期的にできないためです。そのため、害虫が発生しやすい状態となってしまいます。
ゴキブリなどの小さい害虫から始まり、ネズミ、シロアリの発生につながりかねません。
ネズミは柱などをかじります。
シロアリは木材部分を食べてしまうでしょう。
そうなると建物の劣化が急激に進むこととなってしまい、最悪の場合は倒壊といった可能性も否定できません。
空き家は、管理が悪いと今まで掃除することで自然とおこなわれていた害虫対策や害虫駆除が全くできなくなってしまいます。
害虫に関する対応も空き家における大きな課題といえるでしょう。
(3) 換気が不十分な場合のカビなどについて
人が住んでいければ全くできないのが換気です。
木材には、実は水分が含まれています。
換気不足により木材にある水分や、給排水管内部の水分が蒸発しカビの原因となってしまいます。
カビは木材の劣化を早め、腐食の原因ともなってしまうので住まいの劣化には大敵です。
また、換気が行われなければ新鮮な空気が入ってきません。
換気が全く行われなければ空気が循環されなくなり、劣化が急激に進む要因となりえます。
空き家管理が不十分で廃墟化したら
近年、空き家の増加が社会問題化されており、空き家が増え廃墟と化していることに大きな危機感を感じた政府は、
2015年2月に空き家対策特別措置法を施行しました。
では、この空き家対策特別措置法によって、廃墟化した空き家への対応や対策はどのように変わっているのでしょうか?
(1) 行政指導が入る
管理がきちんと行われていないと判断される空き家に対し、特定空き家として認定し、行政指導に入ることが可能になりました。
まず、特定空き家に指定されると、指定した自治体の職員が敷地内に入り、調査を行うことができます。
更に住民票や戸籍の取得が可能となり、わかりにくかった所有者の情報を取得することで適切な行政指導が行えるようになりました。
特定空き家に認定され、行政指導が入ると、空き家の所有者は、直ちに改善に向けて対応しなければいけません。
このような指導に対し、誠意ある対応を取らなかった場合や、全く改善しなかった場合、指導の段階であれば特に罰則があるわけではありません。
しかし、指導を経ても改善が見られない場合は次の段階へと進みます。
(2) 固定資産税の軽減措置が受けられない
そもそも、なぜ空き家を放置しておくのでしょうか?
答えは、空き家を保持しておくことで、固定資産税の軽減を図っているからなのです。
空き家がある土地は、宅地として取り扱われます。
宅地は固定資産税の軽減措置を受けることができ、一般的な固定資産税の1/3若しくは1/6まで減額された金額を固定資産税として納めなければいけません。
しかし、建物がなくなってしまうと更地となり宅地ではなくなるのでこの固定資産税の軽減措置を受けることができなくなります。
これが、空き家が解体せずに放置されている大きな要因の一つです。
しかし、前述した空き家対策特別措置法により、指導を受けても改善しない空き家には次の措置として勧告を受けることになります。
勧告を受けた空き家となってしまうと、建物があったとしても固定資産税の軽減措置を受けることができなくなる場合があるのです。
そうなると税金負担が一気に増えますので空き家としておく意味があまりなくなってしまいます。
指導→勧告となることにより、より所有者に不利益をもたらすことになるでしょう。
(3) 行政代執行になるかも
勧告を受けても全く改善されない場合はどのような措置を受けることになるのでしょうか?
指導→勧告を受けたとしても全く改善が見られない場合、命令措置となり罰金刑の対象となってしまいます。
これでも改善されない場合、自治体が所有者に代わって建物の解体を行います。
これが行政代執行です。費用は後日所有者の下へ請求されます。
もし、これでも支払いが行われなかった場合は、所有している土地の差し押さえに入られることになるのです。
もし、行政代執行の費用が差し押さえた土地よりもかかった場合は、さらに所有者が
保有している財産への差し押さえもできます。
これが、特定空き家に指定され全く改善されなかった場合の大まかな流れです。
空き家管理に効果的なメンテナンス方法
今後、空き家のまま適切な管理やメンテナンスが行われなければ、最悪の場合財産が差し押さえられてしまう可能性もあるということを伝えました。
今後は、空き家といえども保有し続ける限り適切な管理やメンテナンスが必要になるということです。
では先ほど、空き家となって注意しておくべきメンテナンス個所について解説しましたが、注意しておくべき箇所のメンテナンス方法について解説します。
(1) 給排水管について
給排水管の適切な管理方法は、こまめな水道使用です。
定期的に訪問し、水を出すことで錆の除去や劣化を防ぐことに繋がります。
高圧洗浄を行うことで、配管内の汚れやごみを除去しておくことも効果的です。
しかし、あまりにも古く、傷んだ配管なら高圧の水を流した際に配管に穴が開き、水漏れの原因となることもありますので注意しておきましょう。
このようなメンテナンスで配管の劣化を防ぐことが可能です。
(2) 害虫駆除について
害虫駆除について、最も費用がかからずに効果的なのはこまめな掃除です。
不衛生な状態になっていることが害虫発生の最も大きな要因といえます。
しかし、ゴキブリ程度の害虫であればまだ、大きな被害にはつながりにくいのですが、
ネズミやシロアリといった害虫が発生してしまうと劣化のスピードを急速に速めてしまいます。
ネズミ対策としては忌避剤を散布するなどの対策が効果的です。
シロアリは、最も空き家の劣化に影響を与えます。
空き家を保有しておく場合、最初の段階でシロアリの対策工事を行っておくと安心です。
費用は少しかかりますが、もしシロアリが居住して大きな被害を及ぼすとかえって高い修繕費用を支払うことになります。
このような忌避剤の散布や防蟻処理などの害虫対策が効果的です。
(3) カビやほこりの対策について
カビやほこりの対策としてもこまめな換気や掃除が最も安価で効果的です。
カビやほこりの原因は、換気がされていないことが最も大きな要因ですので、最低でも1ヶ月に1度ほど掃除と換気を行いましょう。
また、防犯対策のため、雨戸を閉めっぱなしにしている空き家も見受けられます。
それ自体は全然問題はありませんが、湿気や換気がより遮断されますので1ヶ月に1回以上の周期で掃除や換気を行う必要があるでしょう。
空き家管理が十分にできない その際に行うことは?
メンテナンス箇所についてメンテナンス方法や予防法を解説しました。
ほとんどの項目で、いえるのはやはり定期的に出向くということなのです。
しかし、なかなか空き家が遠い場合など定期的に出向けないケースも多いのではないでしょうか?
ここからは空き家に関し、わかっているけど十分な管理ができないといった場合の対応方法について解説します。
(1) いっそのこと売却してしまう
管理することが難しいのであれば、いっそのこと売却も検討してみてはいかがでしょうか?
空き家は保有しているだけで、メンテンナンス費用や税金などさまざまなコストがかかります。
しかも、その空き家が何か収益を生んでいるならいいのですが、収益を生み出していないとただコストだけがかかってしまうのです。
コスト面において余計な費用がかかるのであれば、いっそのこと売却してはいかがでしょうか?
例えば空き家を相続で得た場合、3年以内に売却できれば、3,000万円の特別控除といった売却による譲渡税の支払いを抑えることが可能です。
このような軽減措置による恩恵を受けるときに売却して、毎年かかるコストを圧縮しましょう。
(2) 不動産管理サービスを利用する
こまめな訪問が劣化を防ぐと何度か述べています。
しかし、遠方に住んでいてなかなか出向くことができない場合などは、空き家管理サービスの利用も効果的です。
空き家管理サービスとは、依頼された空き家に対し、不動産会社が月に1回程度訪問し、換気や簡単な清掃、不具合個所の報告といった業務を行うサービスです。
費用も月額1万円程度ですので、そう大きな費用ではありません。
早めに修繕個所を見つけて修繕することで、大きな費用がかかる前に手を打つことができます。
年々空き家管理サービスの利用者は拡大しており、空き家の健全な管理に大きな手助けとなっているサービスです。
(3) 更地にして土地貸しする
建物を解体し、土地貸しや駐車場経営も効果的な方法です。
建物を解体することでメンテナンスの費用や修繕の費用をなくすことができます。
土地の固定資産税は上がりますが、建物を廃墟化して自治体から勧告を受けてしまうと固定資産税の軽減措置を受けることはできないので結局は同一の税金となるでしょう。
更地にすることで活用の幅を広げ、収入を得ることができると、税金面などのコストに対しての対策となりえます。
場所にもよりますが土地貸しの需要も高いので効果的な方法といえるでしょう。
まとめ
空き家の管理やメンテナンスは今後、適切に行わなければ空き家対策措置法の特定空き家に指定されてしまいます。
そうなると固定資産税の軽減措置がなくなる、行政代執行の可能性があるなど空き家に対する所有者の責任が問われてくることになるでしょう。
空き家は適切な管理やメンテナンスで劣化を防ぐことが大きなポイントです。
給排水管や害虫発生などいくつか、管理やメンテナンスに注力しなければいけない点があります。
しっかりと管理方法やメンテンスを認識し、建物を長期間において維持管理させましょう。