空き家が倒壊した場合の責任の所在は?倒壊するリスクの回避策も解説
近年、空き家の増加が社会問題化しています。
しかし、空き家が増加するとなぜ問題になるのか、わからない人も多いのではないでしょうか?
また、空き家を放置しているとどのようなリスクがあり、空き家を放置して倒壊した場合、責任の所在はどうなるのでしょうか?
この記事では空き家を放置することによるリスクや倒壊した場合の責任の所在について解説します。
空き家を放置した場合のリスク
空き家を放置しておくとどのようなリスクを負うことになるのでしょうか?
空き家の放置はいろいろなリスクを負う可能性がありますが、特に重大なリスクが以下の点です。
- 景観の悪化
- 放火など火災
- 倒壊
ここからはそれぞれのリスクについて解説します。
(1)景観が悪化する
第一に景観の悪化が考えられます。
空き家を放置したままになっていると、急速な建物の老朽化や雑草が生い茂るなどの状態になってしまいます。
このような状態になってしまうと、不法投棄されてしまいがちです。
また、害虫などが発生する原因ともなってしまいます。
大きな景観の悪化になってしまうと同時に、不法投棄のにおいや、害虫が近隣へ侵入してしまうかもしれません。
さらに雑草や樹木が近隣の敷地へ入り込むなど近隣住民に大きな迷惑をかけてしまうことになるでしょう。
もう一つ大きな問題が近隣の資産価値に大きく影響することがある点です。
例えば隣の住民が住宅を売却することになった場合、隣の建物が荒れた状態にあった場合、どうしても売却価格に悪影響を及ぼしてしまいます。
つまり隣の家が空き家で、しかもみすぼらしい状態のため、自分の家が安い金額になってしまい資産価値を下げてしまうことがあるのです。
近隣住民の不安を高めてしまいますので、空き家放置のリスクとしても影響は大きいといえるでしょう。
(2)放火など火災の恐れ
前述するような景観の悪化が著しい建物が近くにある場合におこりやすいのが、治安の悪化です。
不審者が勝手に空き家に入り込み、住み着いてしまう可能性や、犯罪取引の場所として利用される可能性などが考えられます。
最も心配なのが火災です。
不審火や放火などにより空き家が火災で焼け落ちてしまうリスクを考えなければいけません。
消防庁の調べによると平成24年の総出火件数のうち、約12%が放火で、放火の疑いまで合わせると20%前後が放火絡みによる出火原因となっています。
このパーセンテージは出火原因の第1位を記録しており、空き家などは放火の対象となりやすいといえるのです。
建物が火災により焼け落ちてしまうと、近隣への損害賠償や、建物の解体費用などかかる支出は非常に大きいものになります。
特に人的被害を負わせてしまうと費用だけではない負担を負うことになってしまうのです。
また、空き家の場合は、通常の火災保険では保険が下りない可能性も大きく、損害費用を丸ごと背負う可能性も高くなってしまいます。
このような放火などの可能性も深刻なリスクといえるでしょう。
(3)倒壊の危険
長期間空き家を放置してしまうと、空き家が廃墟化してしまいます。
そうなると、倒壊のリスクを深刻に考えなければいけません。
いきなり倒壊してしまう可能性はそう高くはありませんが、近隣は十分耐えうる程度の地震により一気に倒壊するといったことが考えられます。
倒壊により、近隣に被害を与える可能性も十分に考えられるでしょう。
また、前述しましたが火災保険の対象からも外れる可能性が高いため、火災と同じく大きな費用を負担してしまうことになります。
空き家が倒壊した場合の責任の所在
空き家を放置しておくことでさまざまなリスクを背負うことを解説しました。
では、実際に空き家が倒壊してしまった場合、責任の所在はどこにあるのでしょうか?
ここからは、空き家が倒壊した場合の責任の所在について解説します。
(1)空き家が倒壊した場合賠償責任を負うのは所有者
基本的に空き家における損害は、倒壊も含め所有者が責任を負う可能性が非常に高いといえるでしょう。
前述しましたが倒壊による損害は近隣への被害をもたらすこともあり、その損害によっては何千万円~何億円と非常に高額になる場合もあります。
被害を起こさないためにも適切な管理が必要です。
では、どのような被害が考えられるのかといった点について事例を踏まえながら解説していきましょう。
(2)空き家が倒壊した場合の損害賠償事例①
空き家が倒壊し、近隣の建物へ被害が及んだ場合にはどの部分までの責任を負うことになるのでしょうか?
まずは、所有している空き家の解体費用がかかります。
解体費用は、広さや形状によっても異なりますが一般的には木造の場合、建坪50坪程度で250万円前後の費用負担となるでしょう。
次に近隣建物への被害が及んだ損害賠償費用及び家財の損害を与えた賠償責任を負うことになります。
この費用は損害具合により修繕で済むのか、建て替える必要があるのかといった部分で大きく異なります。
建替えとなった場合などは、何千万円という損害を受ける可能性もあります。
前述しましたが、たとえ火災保険に加入していたとしても空き家となると、加入していた火災保険では対象外となる可能性が非常に大きいです。
空き家状態で火災保険に加入していると、保険の対象となるケースもありますが、そうでない場合は、空き家状態では保険はおりません。
大きな損害負担となる可能性が非常に高いといえます。
(3)空き家が倒壊した場合の損害賠償事例②
次に空き家が倒壊し、通行人に損害を与えてしまったケースを見てみましょう。
建物に関しては前述した場合と同じように解体費用を見ておく必要があります。
50坪で250万円前後の費用です。
しかし、人的損害ともなると費用は何千万円や、不幸なことに亡くなってしまった場合などは何億円となるケースも決して少なくはありません。
前述しましたが損害保険の対象とはならないことがほとんどのため、損害費用をすべて負担することになる可能性も高いでしょう。
空き家を放置しておくデメリットが最も顕著に表れるといえます。
空き家が倒壊するリスクを回避する方法
このように、空き家を放置しておくことのデメリットは非常に大きいものとなり、リスクを回避するためにも適切な管理を必要とします。
自分で管理することができれば余計な費用負担をする必要がなくなります。
では自分で行う管理において必要な道具には何があるのでしょうか?
また、どのようなことを行い、管理を行えばいいのでしょうか?
ここからは、自らが管理を行う方法について解説します。
(1)空き家管理に必要な道具や適切な服装
基本的に空き家管理を行う場合は清掃作業が中心となります。
服装は汚れてもよく、動きやすい服装を準備しましょう。
注意する点は夏場によくあることですが、ハチなど害虫が出てくる可能性があります。
夏場とはいえ長袖の服、長ズボンを着用し、害虫対策をしっかりと行いましょう。
持ち物として必要なのは敷地内のごみ処理を行うため、ごみ袋は必須です。
庭の雑草処理などのために軍手、建物に入るときのためにスリッパ、電気が止められている可能性もあるため懐中電灯を持っていくといいでしょう。
(2)室内の換気とご近所廻り
あまり、近隣の方と面識がない場合、空き家になっている部屋で何かしていると不審に思われるかもしれません。
あらかじめ、ご近所さんに挨拶しておくと、動きやすくなります。
あわせて、空き家の状況や不審者が出入りしていないかなど、それとなく確認も可能です。
ご近所に挨拶した際に、その地域で事件などが起こっていないか、治安が悪くなっていないかといった点も確認しておきましょう。
緊急連絡先として自分の連絡先を教えておくと、近隣住民も安心です。
ご近所廻りが終わると、室内に入り窓を一斉に換気します。
室内の空気がうまく換気されていませんので、カビや害虫が発生しやすく、ほこりもたまっている状態です。
まずは換気を行い、空気を入れ替えましょう。
(3)外回りの清掃と確認作業
換気している間に、外回りの清掃を行います。
除草やごみの掃除とあわせて、建物に破損個所がないかをチェックします。
破損個所があれば、修繕の依頼を行い維持管理に努めましょう。
除草で出たごみは、大量に出ることがあるので、前もって廃棄の手配も行っておく必要があるかもしれません。
(4)室内清掃
外回りの掃除が終わると、室内の清掃に入ります。
全体的な掃き掃除や拭き掃除から、水道のチェックで水漏れがないかを確認しましょう。
建物内部も破損個所がないかをチェックします。
破損個所があれば、自分で修理できない場合は業者へ依頼するといった対応も必要です。
これらの管理作業を数か月に1回程度に行うことで、維持管理に役立てることができます。
空き家の管理を行うメリット
空き家を管理することにより空き家の廃墟化やさまざまなリスクを回避する手立てとなります。
では、空き家の管理を行うことについてメリットはあるのでしょうか?
ここからは空き家管理を行うメリットについて解説します。
(1)資産価値の維持
空き家を管理しておくことは、資産価値を維持することに繋がります。
空き家が廃墟化していくと、空き家自体の価値がなくなるどころか、解体など余計や費用がかかるということで、資産価値が大きく下落することになるのです。
空き家があることで逆に売却する費用が大幅に下がることになります。
空き家を適切に維持管理しておくことが同時に維持管理へと繋がることは大きなメリットといえるでしょう。
(2)景観の悪化を防ぎ、近隣と余計なもめ事を起こさない
景観の悪化はさまざまなリスクを負いますが、きちんと維持管理を行うことで、近隣とのもめ事を防ぐことになります。
近隣を味方につけておくことで、何かあったときの対応や近隣からの連絡なども期待でき、空き家の管理に対して大きな助けとなるでしょう。
また、余計なもめ事もなく良好な関係を築くことで、売却などの場合も有利になります。
売却時には、境界の確定など、近隣住民にも協力が必要です。
このような面においても、近隣住民との関係性の構築は大きなメリットとなるでしょう。
(3)倒壊リスクの回避
建物の維持管理は、空き家の廃墟化を防ぐことになります。
つまり倒壊のリスクを大幅に引き下げることに繋がるのです。
倒壊における損害は前述したとおり非常に大きな費用がかかってしまう場合があります。
倒壊のリスクを事前に防ぐことも大きなメリットです。
(4)こまめな管理で修繕費用の繰り延べに期待
空き家のまま放置しておくと急速に劣化していきます。
劣化するとさまざまな箇所で破損や劣化が起こり修繕をする機会が多くなってしまうでしょう。
建物をしっかりと維持管理しておくことにより破損個所に早めに気づき、修理費用が安価なうちに直すことが可能です。
破損個所がひどくなればなるほどかかる費用は大きくなってしまいます。
こまめな管理は、費用の削減にもつながるので大きなメリットです。
まとめ
空き家が倒壊してしまうと、大きな責任を所有者が負うことになりますので、空き家をほったらかしにしてはいけません。
空き家の管理がずさんだと、景観の悪化や、火災、倒壊などさまざまなリスクが降りかかります。
事例でも述べたように何千万円~何億円もの費用が請求されることもあり得るのです。
このようなリスクを回避するためにはこまめな管理が必要といえるでしょう。
自らが出向き、点検するだけでも維持管理に大きく役立ちます。
空き家とはいえしっかりと管理して資産価値の維持などに努めましょう。