特定空き家に指定されたら固定資産税が高くなる?減免事例も紹介
2015年に全面施行となった空き家対策特別措置法により、空き家の管理をより強く求められるようになりました。
きちんと管理していないと見なされた空き家は特定空き家に認定され、改善の放置度合いによりいくつかの罰則を受けるようになったのです。
その罰則の中には固定資産税に関係するものも含まれます。
では、特定空き家に認定されてしまった場合、固定資産税はどのように影響するのでしょうか?
また、そもそも固定資産税とはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、空き家と固定資産税の関係性や固定資産税を支払わない場合のリスクなどについて解説します。
空き家対策特別措置法が固定資産税にどう影響?
まずは、空き家対策特別措置法の施行によりどう影響するのかといった点について、固定資産税の特徴も踏まえて解説しましょう。
(1)固定資産税とはどのような税金
固定資産税とは、不動産という固定資産を保有している人に課せられる税金です。
不動産には、田んぼや畑、山林などの土地関係から、マンション、戸建て、工場などの建物関係がありますが、これら全てに固定資産税は課税されます。
毎年1月1日時点の所有者に対して各地方自治体が課税する地方税です。
地方自治体によって若干異なる部分はあるのですが、一般的には4月から6月頃に不動産の所有者に対して納税通知書が送られます。
届いた納税通知書は、4期分に分かれていますので、1期ごとの締め切りまでに1期ずつ納税することになるのです。
自治体によっては、クレジットカードでの一括納税などができるところもありますが、一般的には銀行や郵便局、コンビニなどでの支払いが一般的でしょう。
賃貸に住んでいる場合と住まいを購入して所有している場合の最も大きな違いが、固定資産税の支払いでもあります。
(2) 空き家の固定資産税等の計算方法
では、固定資産税は、どのように計算され課税されるのでしょうか?
自治体によって若干異なる部分はあるのですが、所有している不動産の評価額に1.4%を乗じた金額が固定資産税として課税されます。
自治体によっては1.5~1.6%を乗じて固定資産税としているようです。
この評価額は、3年ごとに見直しがされ地価や建物の経年劣化分などで変化していきます。
固定資産税の計算方法は、
固定資産税評価額×1.4%=固定資産税となります。
しかし、土地部分において、マンションや戸建てが建っている土地は宅地となり、固定資産税の軽減措置を受けることができるのです。
土地の広さが200㎡以内の部分については1/6。
200㎡以上の部分に関しては1/3まで減額されます。
固定資産税は毎年課税されますので住まいの居住者には大きなメリットとなるでしょう。
(3)勧告により固定資産税が最大6倍になる
空き家対策特別措置法により自治体は管理されていない空き家を特定空き家と認定し、いくつかの段階に分かれて改善を促します。
まずは、助言や指導といった形で自治体から所有者に向けて、特定空き家をきちんと管理するように警告するのですが、この時点では特に罰則はありません。
しかし、助言、指導をしても何も改善されない場合、次の段階として勧告を行います。
勧告を受けた時点で固定資産税の軽減措置から除外されるのです。
つまり、今まで土地の固定資産税は、住宅用地の軽減措置が除外される為、固定資産税が3倍若しくは6倍まで跳ね上がってしまうことになります。
そもそも管理ができない状態でも更地にせずに空き家のままにしている理由のひとつがこの固定資産税の軽減措置を受けることが目的のケースが多いのです。
しかし、固定資産税の軽減措置から除外されてしまうと空き家を保有しておくことに何のメリットもなくなってしまいます。
空き家対策特別措置法では、軽減措置を除外することで空き家に対する管理を、解体も含め促すことが大きな目的です。
(4)固定資産税の支払い拒否 どうなる?
固定資産税は、税金ですので当然ながら納税の義務があります。
後ほど詳しく解説しますが固定資産税の支払いを拒否すると最終的には差し押さえされ、競売されてしまう可能性もあるでしょう。
納税は所有者の義務ですので支払わない選択をしたいならば売却して所有権を手放すしかありません。
空き家の固定資産税を安くするには?
空き家の固定資産税を安く維持するためには空き家の管理をしっかりと行わなければ、特定空き家に認定されてしまうと固定資産税の軽減措置を受けることができません。
固定資産税が宅地並みの課税が受けられないのであれば、空き家の管理を行うか、解体して更地とし、建物の固定資産税を支払う必要がないようにする方法が考えられます。
ここからは、空き家における固定資産税の計算事例や固定資産税の減免措置といった点にスポットを当てて解説しましょう。
(1)空き家の固定資産税等計算事例
ここからは、事例を挙げて、固定資産税の軽減措置を受けた場合と受けなかった場合などを比較します。
例えば、土地の評価額が6,000万円、建物の評価額が3,000万円だった空き家の場合、固定資産税は、
6,000万円×1.4%=84万円
3,000万円×1.4%=42万円
計126万円となるのです。
年間126万円ですので、戸建てやマンションといった居住用不動産を保有している場合、毎年100万円以上の税金は大きな負担となるでしょう。
しかし、居住用の不動産が建っている土地に関しては、固定資産税の軽減措置を受けることができます。
200㎡以下の土地は小規模住宅用地として課税標準額が1/6。
200㎡以上を越えた部分に関しては一般住宅用地として課税標準額が1/3へと軽減されるのです。
先ほどの6,000万円の評価額であった土地の広さが300㎡だったとしましょう。
200㎡(4,000万円分)に関しては1/6、100㎡(2,000万円分)に関しては1/3に軽減されます。
つまり、
4,000万円×1/6×1.4%=186,000円
2,000万円×1/3×1.4%= 93,000円
となり279,000円となるのです。
先ほど、軽減措置を受けない場合の固定資産税が土地部分においては84万円でした。
84万円-27万9千円=561,000円もの違いが出ることが分かります。
軽減措置の有無によって大きな開きが出ることが分かります。
(2)固定資産税の減免事例
自治体によっては空き家対策特別法により特定空き家になることを事前に防ぐために固定資産税の減免措置などを行っている自治体があります。
東京都荒川区の事例を見てみましょう。
荒川区には、木造住宅の密集地がありこのような地域を不燃化特区としています。
この不燃化特区において老朽化している建物を解体し更地にすると固定資産税を減免しているのです。
老朽化した住宅を取り壊した場合、最長5年間更地となった土地に対して固定資産税が
8割も減免されます。
更に、その後建て替えを行った場合は、新築した建物の固定資産税が5年間において全額減免されるのです。
自治体によりますので各自治体のホームページなどで確認してみましょう。
(3)解体した場合の補助金事例
固定資産税を軽減するもう一つの方法として解体し、建物の固定資産税を支払わなくする方法を挙げました。
しかし、建物の解体は費用的に少額で出来る訳ではありません。
広さや、土地の形状などにもよって金額は異なりますが、百万円単位の費用がかかってしまうので、解体せずに空き家のまま放置しているケースもあるのです。
自治体によっては解体費用に関する補助金が出るケースがあります。
東京都文京区の事例を挙げてみましょう。
文京区では、平成26年度より空き家対策特別措置法の特定空き家に該当する管理不十分な建物に関して解体に関しての補助金が出ます。
特定空き家に該当するような空き家を解体更地にした後、荒川区が無償で借り上げるといったかたちにして、200万円を上限とした解体費用の助成を受けることができるのです。
解体費用の助成に関しては、いくつかの自治体が積極的に取り扱っています。
解体費用がないために空き家を放置しているケースの人に関しては、建物がある自治体に確認してみましょう。
固定資産税を支払わない場合のリスク
先ほどまで、固定資産税の軽減措置や、減免措置、特定空き家に認定された場合の罰則など、固定資産税にまつわることを重点的に解説しました。
では、固定資産税を支払わなかった場合にはどのようなリスクがあるのでしょうか?
ここからは、固定資産税を支払わなかった場合のリスクについて解説します。
(1)延滞金がかかる
固定資産税を延滞すると期限の翌日から延滞金がかかります。
前述しましたが、固定資産税に関しては各自治体から納税通知書が届く地方税です。
つまり、固定資産税を支払わない場合の対応や延滞金の利率などについては各自治体で異なります。
また、年度ごとに延滞利息の割合が変わるので一概にはいえません。
一般的には、延滞した翌日から1か月間程度は3%前後ですが、延滞後1か月程度経過すると10%前後の延滞利息がかかります。
どうしても手元に現金が無く固定資産税が支払えない場合などは、一度自治体の固定資産税課などに相談してみるのもいいでしょう。
(2)納税に対して督促される
いつまでも納税しなかった場合、前述したように延滞金が発生しますが、延滞金が発生するだけではありません。
自治体からも当然ながら督促の連絡が入ります。
督促の方法としては、督促状の発送、文書の投函などにより支払いを促されます。
それでも支払いがない場合や連絡がない場合、直接訪問されて督促されることになってしまうでしょう。
実は督促状を発送し10日間、なんの連絡もなく支払いもなされない場合は財産を差し押さえるといったことが法律により決まっているのです。
しかし、さすがに10日間では短すぎるということでもう少し余裕をもった督促が行われます。
(3)差し押さえされてしまう
最終的には滞納している不動産に対して差し押さえられることになります。
差し押さえられてしまうと、その後支払ったとしても登記簿には差し押さえされたことが記載され、今後その土地には差し押さえられた過去が残ってしまうことになるでしょう。
実は売買などのときに、差し押さえの過去がある土地はあまり歓迎される内容ではないことからも悪い影響しかありません。
そして、差し押さえられたままそれでも支払いがなされない場合は競売にかけられ、固定資産税へ充てられます。
結局自分の資産を失ってしまうことになりますので、固定資産税の支払いは定期的にきちんと支払いましょう。
まとめ
固定資産税は不動産を所有している人に関して、必ず納税しなければいけない地方税です。
宅地に関しては、固定資産税の軽減措置が受けられますが、管理されていない空き家に関してはこの軽減措置を受けることができない場合があります。
特定空き家に指定される前に必ず管理するか解体して軽減措置が除外される前には、何らかの対応を行わなければいけないでしょう。
自治体によっては固定資産税の減免措置や解体の補助金などさまざまな助成制度を取り扱っています。
空き家管理に役立つ部分に関しては、どんどんこの様な制度を活用しましょう。
また、固定資産税を支払わなければ、延滞金がつくだけではなく、最悪の場合差し押さえとなりますので、所有者は当然の納税義務を果たさなければいけません。