空き家対策措置法施行の問題点・改正後の罰則は?

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空き家対策措置法施行 問題点

2015年8月に施行された「空き家対策特別措置法」。

これにより空き家に対する管理が一層厳しく求められるようになったといわれています。

なぜ、空き家対策特別措置法が施行されたのでしょうか?

また空き家対策特別措置法により、特定空き家に指定された場合、どのような罰則を受けるのでしょうか?

この記事では、空き家対策特別措置法による、空き家に関する対策や施行された理由、空き家を放置している理由などについて解説します。

空き家対策特別措置法はなぜ施行されたのか?

そもそも、なぜ空き家対策特別措置法は施行されたのでしょうか?

施行された理由などについて解説します。

(1)空き家の増加と廃墟化した空き家

空き家が増加していることが大きな理由の一つです。

少子高齢化などにより空き家が増加し2019年時点では、総戸数の約14%が空き家となっています。

今後、2033年には空き家が30%を超える想定ともいわれているのです。

空き家が増えたとしても、きちんと管理ができていればそう大きな問題ではありません。

問題は管理が行き届かずに廃墟となっている空き家が増えている点です。

廃墟化した空き家はさまざまな面で、リスクを伴います。

最悪の場合倒壊となりかねません

倒壊のリスクを含むさまざまな点から空き家の早急な改善が望まれます。

(2)放置空き家に対する近隣被害対策

空き家が放置されてしまう場合、最も迷惑になり被害を受けるのは近隣住民です。

例えば、雑草や樹木が伸びて近隣に侵入する、害虫が発生するといったことが起こりえます。

また、管理されていない空き家は、不法投棄がされやすく、悪臭が発生する原因となるでしょう。

放置空き家により近隣が被害を受ける可能性が高くなってしまうので、近隣の被害を防ぐ意味合いとしても、この条例は施行されました。

(3)プライバシーによる対策の遅れを阻止

空き家が廃墟と化し、近隣にさまざまな被害を起こしてしまっても、行政では、所有者の特定などが非常に難しい場合があります。

また、外観で空き家の状況があまり良くない状態だと判断しても、中に入ってみなければわかりにくい場合でも、敷地内に立ち入りができませんでした。

これは、所有者のプライバシーに入り込むことになるため、対応に苦慮する場面が所々で見受けられたのです。

そこで、空き家特別対策措置法が施行され、特定空き家と認定される可能性がある空き家に関しては敷地への立ち入りや台帳の確認などができるようになりました。

今まで、所有者のプライバシーを守ることで空き家に対する対策が遅れてしまう現状を阻止するために、この条例が施行された側面もあるのです。

空き家対策特別措置法による空き家に対する対策とは?

空き家対策特別措置法により、管理されていない空き家と認識されてしまうと、どのようなことになるのでしょうか?

管理されていない空き家に関する対応について解説します。

(1)空き家に対する調査

まず、人が住んでおらず、空き家が荒れ果てた状態になると、近隣住人が行政に対して連絡するケースが最も多いようです。

住民から連絡を受けた行政は、空き家の調査に入ります。

敷地内に入り込み空き家の状態や、所有者の特定などを調査します。

そして、空き家を特定空き家に認定するかどうかを決定するといった流れです。

(2)特定空き家とは

  • 建築物が著しく保安上危険となるおそれがある
  • そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  • 切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  • その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

であるとみなされた建物は特定空き家へと指定されます。

指定の基準は、各自治体によってさまざまですが、国土交通省のガイドラインなどを用いて一定の基準に達したものを特定空き家へと指定します。

特定空き家に指定されてしまうと、行政からの注意喚起や罰則規定がありますので次の項目から解説しましょう。

(3)助言・指導を受けるとどうなる?

まずは、特定空き家の改善について行政から助言を受けることになります。

それでも改善の兆しが見えない場合、行政から指導を受けることになるのです。

助言より少し厳しく改善を求められます。

尚、この時点までに改善されると特に罰則などはありません。

(4)勧告を受けるとどのような罰則がある?

指導の段階でも改善が見られない場合、次に行政が打つ手は勧告です。

勧告を受けると罰則を受けることになります。

罰則とは固定資産税の軽減措置から除外されてしまうのです。

尚、固定資産税の軽減措置については後程詳しく解説します。

勧告以降、罰則がどんどん重ねられていくことになるのです。

(5)命令を受けた場合の罰則は何?

勧告を受けてもなお、改善の兆候が見られない場合いよいよ命令となります。

固定資産税の軽減措置も受けられなくなり命令を受けても改善しなければ50万円以下の罰金を科されることになるのです

行政の通告を4段階も受けたにもかかわらず、全く改善の兆候が見られないため、いよいよ罰則まで受けることになってしまいます。

(6)行政代執行とはどのような措置なのか?

命令まで受けても全く改善されないと、行政が所有者の代わりに空き家に対する改善を行います。

多くは解体です。何百万円もの費用を肩代わりして解体を行います。

費用は当然ながら所有者へと請求されます

残った土地の差し押さえなどにより費用を回収されることになるでしょう。

このような措置が空き家対策特別措置法により可能になりました。

なぜ空き家を放置しているのか?

空き家対策特別措置法により、空き家に対する改善に行政も本腰を挙げたといえるのですが、そもそも、不動産の所有者はなぜ空き家を放置しているのでしょうか?

ここからは空き家を放置している理由について解説します。

(1)固定資産税の軽減措置が受けられなくなる

不動産の所有者は、毎年固定資産税と都市計画税を支払わなければいけません

しかし、マンションや戸建てなどの居住用不動産の場合、固定資産税の軽減措置を受けることができます。

一般的な固定資産税の1/3若しくは1/6まで減額されるのです。

これは、居住用の建物があることが前提となるため、建物を解体してしまうと固定資産税が3倍、若しくは6倍にまで上がってしまいます。

非常に大きな負担となってしまうため、空き家のまま放置して固定資産税の軽減を図る目的で空き家を放置しているケースがあるのです。

(2)解体に関する費用がかかり負担が大きい

空き家の管理が難しく、解体しようと考えたとしても、解体費用がかかるために放置しているケースも見受けられます。

解体の費用は、広さなどによって異なりますが、百万円単位の費用が発生することが想定されるでしょう。

しかも解体した後、特に収益を上げないので、費用だけかかってしまうことになります。

解体に関する費用はローンを利用するのも可能なのですが、借金してまで解体したくないという人も多いのです。

解体の費用負担の大きさから空き家のまま放置している人も多いといえるでしょう。

(3)相続人がたくさんいてまとまらない

空き家となるケースで両親が住んでいた住まいを相続で引き受けたといったことがあります。

相続人が一人の場合は、相続した実家に対してある程度自由な動きが取れるのですが、相続人が複数いると意見の相違から話がまとまらないことがあるのです。

しかも費用がかかる問題ともなれば、話がこじれて一歩も前に進まず、管理ができないといったことも考えられるでしょう。

このようなケースも空き家のまま放置される可能性が非常に高いのです。

(4)解体してしまうと家を建てることができない

建物はどの場所でも建てられるというわけではありません。

それぞれの地域に用途地域といわれる、あらかじめ定められた建物しか建てられないように区分けされています。

その中で、以前は特に規制がなかったため、戸建てなどを建てることが可能だった地域が、市街化調整区域となり、戸建てを建てることができなくなることがあるのです。

そのような地域になると、市街化調整区域になる前に建っていた戸建ても、解体してしまうと、その土地には建物を建てることができなくなってしまいます

このような場合にも、空き家のまま解体もできないといったことがあるといえるでしょう。

空き家対策特別措置法の改正が必要な理由とは

2015年に空き家対策特別措置法が施行され5年が経過しています。

この間にさまざまな問題点や改善点も出てきました。

この法律は、5年を経過する時に見直しを行うことが附則で定められています

ではこの空き家対策特別措置法に関する問題点はどのようなものがあるのでしょうか?

また、今後空き家の対策は厳罰化するのでしょうか、それとも緩和されるのでしょうか?

ここからは、空き家対策特別措置法の改正について解説します。

(1)空き家対策措置法施行から5年 問題点は?

2019年10月時点で、空き家対策特別措置法に基づき、1741市区町村中1091市区町村が空き家対策計画を策定しました。

ここまで、特定空き家と認定された空き家196物件が行政代執行などにより解体されましたが実際にはまだ16,000件以上の特定空き家が残っています。

まだまだ、空き家の解決には程遠い点や、完全なる人手不足を訴える自治体などもありました。

また、NPO法人や不動産会社との連携を求める声も多く5年を経過して、さまざまな改正に関する要望が上がっています。

しかし、空き家対策特別措置法が施行され、空き家の解消には効果がある点も踏まえ、改正することで空き家解決に向けてスピードアップする必要があるといえるでしょう

(2)今後、空き家対策は厳罰化する?緩和する?

特定空き家を行政代執行により解体した場合、費用は所有者へと請求されます。

しかし2019年に行政代執行を行い、実際に全額回収したのは1割未満と非常に回収率が悪い状況です。

しかも行政代執行により解体を行うケースは年々増加しており、今後もこのような回収率だと自治体の負担が非常に大きくなってしまいます。

しかし、空き家でしかも廃墟化した空き家の増加を見ると、今後も空き家に対する対応を行うケースは増えてくるでしょう。

つまり、今後、空き家対策は厳罰化する可能性が非常に高くなると想定されます。

行政も、今までのような回収率のままだと、負担が更に大きくなりますので所有者への負担を求める方向がより強まる可能性が高いのです。

このような点から、今後は厳罰化の動きが顕著になると想定されます。

まとめ

2015年の空き家対策特別措置法により、空き家に対する改善がより求められるようになりました。

特定空き家に指定されると、固定資産税の軽減措置の除外や罰金などさまざまな罰則を負うことになります。

最後には行政代執行により解体されてしまうことになってしまうでしょう。

空き家のまま放置しているケースはさまざまですが、空き家対策特別措置法が施行されて以来、空き家のまま放置しておくのはデメリットがとても多くなります。

またこの法律が施行されて以来5年が経過しましたので、改正も視野に入れており今後は厳罰化の流れになるのではないかといわれているのです。

空き家を管理できず放置している場合は、きちんと管理する、できなかったら売却する、などの対策を講じる必要があるでしょう。

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