特定空き家に指定される流れ・指定されないための対処法も解説
2015年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別対策措置法」。
この条例に伴い、あまり管理されていない空き家が特定空き家に指定されると、さまざまなデメリットを負ってします。
ではどのような空き家が特定空き家に指定されるのでしょうか?
また、特定空き家に指定されてしまうと、どのようなデメリットを負うのでしょうか?
この記事では、特定空き家に関する特徴やデメリット、対策などについて詳しく解説します。
特定空き家に指定される空き家の特徴
まず気になる点は、特定空き家に指定される空き家はどのような特徴があるのかという点です。
ここからは、特定空き家になりえる空き家の特徴について詳しく解説します。
(1)廃墟となり倒壊の恐れがある空き家
空き家を放置しておくと、建物が急速に劣化し、廃墟と化した空き家になる可能性が高まります。
廃墟化して最も大きな不安が、建物が崩壊するという点です。
崩壊まではいかずとも、外壁の脱落や屋根の飛散などの可能性がありえます。
空き家の放置により、躯体の主要部分が腐食、劣化するので、構造の耐久性が大きく減退し、このような状況になるといえるでしょう。
建物の倒壊や、屋根の飛散といったリスクを最も受けてしまうのが近隣住民です。
近隣住民の建物に屋根や外壁が飛散して破損させることが考えられますし、なにより、近隣住民に身体的な被害を負ってしまうことも想定されます。
このような倒壊の恐れがある空き家は特定空き家へと指定されることが多いといえるでしょう。
(2)ゴミ屋敷となり明らかに不衛生な空き家
ゴミがたまり、明らかに不衛生な状態の空き家も挙げられます。
空き家を放置しておくことで建物の劣化とともに、庭の草が生い茂り、樹木が伸び放題になってしまうことも考えられるのです。
このような状態になってしまうと、不法投棄が起こりやすくなってしまいます。
不法投棄がおこると、誰もが簡単にごみを捨て始めるでしょう。
そうなると、あっという間にゴミ屋敷になってしまいます。
更に、ゴミが原因により害虫や害獣が発生し始め、近隣住民へも大きな迷惑をかけてしまうことになるでしょう。
また、生ゴミが原因による悪臭も発生しやすく、これもまた近隣住民への迷惑へと繋がります。
このようなゴミ屋敷となっている明らかに不衛生と思われる空き家に関しても特定空き家に指定されやすいといえるでしょう。
(3)簡単に侵入できそうな空き家
空き家の放置で近隣住民が気になる点は治安の悪化です。
空き家と明らかにわかり簡単に侵入できそうな空き家は、不審者が入り込みやすいので治安の悪化へと繋がるでしょう。
不審者が室内に入り込み生活していると、考えられるのが火の不始末による火災です。
また、明らかに空き家とわかり侵入しやすいところは、放火による火災リスクも考えられます。
放火や不審火は火災発生の原因の中でも大きな割合を占めており、空き家は特に狙われやすいといえるでしょう。
また簡単に侵入できることから、犯罪の取引に利用される可能性もあります。
治安の悪化から火災という大きな被害が起こりえることから、特定空き家として認定されやすい空き家です。
空き家対策特別措置法により特定空き家に指定されるデメリット
ここまでは、特定空き家に指定されやすい空き家の特徴について解説しました。
では実際に特定空き家に指定された場合にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?
特定空き家に指定されると段階に応じた措置が施されます。
ここからは特定空き家に指定されてしまうデメリットについて解説します。
(1)助言や指導により特定空き家の改善を求められる
特定空き家に指定されてしまうと、まずは行政から空き家の所有者に対して、空き家のずさんな管理を改善するように助言がなされます。
助言を行った後、一定期間様子を見ますが全く改善が見られない場合、段階的にはもう少し強い指導という措置を受けることになるのです。
内容も助言に比べると強い文章で空き家の改善を促します。
しかし、指導の時点では空き家を放置しているからといって何ら厳しい罰則があるわけではありません。
まずは、所有者の状況を尊重した対応を行うといったところでしょう。
(2)勧告により固定資産税の特例から除外される
助言や指導によって状況が改善しない場合、次に取られる措置は勧告です。
当然ながら指導よりも強く改善を促し、一定期間猶予を与えますが、勧告を受けても改善しなかった場合、ここで初めて罰則を受けることになります。
勧告を無視した場合の罰則は、固定資産税の優遇措置の解除です。
不動産を所有していると必ずかかるものが固定資産税です。
所有している土地に居住用の建物が建ち、自らが保有している場合、固定資産税は一般的な税額から1/3若しくは1/6まで減額されてしまいます。
つまり優遇措置を解除されてしまうと固定資産税が3倍から6倍へと跳ね上がってしまうのです。
固定資産税の優遇措置を解除し、固定資産税を増額してしまうことで、実質的な罰則としています。
(3)命令され違反すると罰金を科される
それでも改善されない場合は、いよいよ改善措置命令となります。
固定資産税の優遇措置を解除されても従わないのでかなり厳しい対応となるのですが、これでも改善されない場合は罰金刑を課されてしまうのです。
改善措置命令を受けても空き家が全く改善されない場合は、命令違反となり50万円以下の罰金が科されることになります。
ここまで行政を無視し続けますので大きな罰則を科されるのです。
(4)最終的には行政代執行されてしまう
改善措置命令にも従わない場合は最終的に行政代執行という措置が取られます。
これは、所有者に代わり行政が改善を行うか改善不可能と判断されると解体にいたってしまうのです。
費用は当然ながら所有者に請求され、残った土地や、所有者が給与所得者の場合、給料の差し押さえといった措置が取られる可能性もあります。
財産の差し押さえまでかかってきますので、特定空き家に指定される前には改善しなければいけません。
空き家のまま放置する理由
特定空き家の措置を受けそうな可能性があっても空き家をほったらかしの状態にしておくのにはどのような理由があるのでしょうか?
ここからは空き家のまま放置している理由について解説します。
(1)相続放棄して所有者がいない
相続放棄してしまい所有者がいない住まいは空き家のまま放置されてしまう状況になることがあります。
しかし、この場合は特定空き家に指定されるようなことはありません。
行政の対応が遅れた場合などに放置された空き家になってしまうこともありますが、少し特殊な事例といえるでしょう。
この場合は基本的に国庫に帰属されることになりますので、一定の予算が下りた場合には、放置空き家の解消に向けて行政が動くことになります。
責任の所在が行政側にあるのは明確になっている分、空き家に対する対応は時間がたつかもしれませんがきちんと行います。
(2)複数の相続人で対応方法がまとまらない
逆に相続人が複数いる場合なども空き家の処理に対して意見がまとまらず、放置される可能性も高くなります。
不動産は、高額な資産となってしまい、相続における財産分割がうまくまとまらず、一応分割されたけど禍根を残すことも少なくありません。
そのため、空き家の処遇に対して意見がまとまらないことも多々あります。
空き家の改善ともなると、費用もかかってきますので、相続人でどのように費用を分担するのかといった話になり全くまとまらず、改善されないのです。
このような複数の相続人がいる場合も空き家のまま放置されやすいといえるでしょう。
(3)いずれ親が返ってくるのでそのままにしている
空き家を処分したくともできないケースも挙げられます。
例えば親が入院やケアセンターに長い間入り続けているが、いずれ元気になったら戻ってくるなどのケースが考えられるでしょう。
本来であれば子供さんなどが時々訪問して管理を行えばいいのですが、疎遠になっている場合や、子供がいない場合などに起こりやすいといえるでしょう。
特に一人暮らしの高齢世帯にこの傾向は強く、少子高齢化の波が空き家にも大きく影響しているのです。
(4)相続人が遠方にいてきちんと管理していない
空き家の相続人が遠方にいてなかなか対応できない場合も、放置されてしまう原因の一つです。
特に相続したが、非常に関係性が薄い場合などは、空き家の改善費用を支出することを嫌いなかなか改善しないといったことにもなるようです。
空き家対策特別措置法の施行により、登記簿の調査や立ち入りなども可能になり所有者の特定が比較的早くできるようにはなりました。
しかし、すでに廃墟化しており、改善や解体に大きな費用がかかってしまう場合には放置していることも少なくはありません。
特定空き家に指定されないための対策
特定空き家に指定されてしまうとさまざまなデメリットを負うが、なかなか自分で管理ができないといった場合にはどのような対策があるのでしょうか?
自らが管理できない場合。特定空き家に指定されない対策について解説します。
(1)解体して土地活用
特定空き家に指定されない方法として要は、空き家をなくせばいいわけです。
ただし、解体費用などが気になりなかなか解体できない人も多いのではないでしょうか?
このような場合、土地が活用できるならば、費用は支出してしまいますが、いったん解体して、土地活用により収益を上げることをおすすめします。
土地活用の方法としては駐車場経営や建て貸しなどが挙げられるでしょう。
収入を上げることにより、解体費用を少しでも回収できますし、運用状況が良ければ長期的な安定収入に繋がります。
(2)売却する
今後、特に使用する予定がないのであれば、資産整理の一環として売却することも効果的です。
しかし、なかなか売りにくいようなエリアに空き家がある場合は、不動産会社に買い取ってもらうこともできます。
一般的な相場よりも低い金額にはなりますが、そのまま保有しておいて、固定資産税や維持管理の費用を支払うのが難しい場合などは買い取ってもらう方法もいい選択肢です。
(3)賃貸で貸し出す
賃貸で貸し出すことも空き家回避の一つです。
築年数の古い家の借り手はないと思う人も多いでしょう。
しかし、近年はあえて築年数の古い家に住み田舎でのスローライフを楽しむ人なども増えています。
新たな賃貸ニーズもありますので、賃貸の需要などを地域の不動産会社に相談してみるのはいかがでしょうか?
まとめ
空き家特別措置法の施行により、ほったらかしにしている空き家に対して行政のメスが入りました。
それだけ空き家の増加に対する危機感が増しているといえるでしょう。
空き家問題はすでに社会問題化しており、廃墟となった空き家があちこちで散見されます。
このような空き家にはさまざまなリスクがあり、最も被害を負ってしまうのは近隣住民です。
このような近隣住民の不安をなくすため施行されたこの条例により、空き家を放置しておくことにはもはやデメリットしかありません。
管理ができないのであれば、売却や解体などの措置を早めに行い特定空き家に指定されないような対策を取らなければいけません。