特定空き家の認定基準・認定された場合の罰則とは
相続した実家が遠方にあり、なかなか管理ができずに放置しているという人も多いのではないでしょうか?
現在、我が国における住宅総戸数の約14%前後は空き家だといわれており、今後も空き家は増え続けていくと想定されています。
空き家が社会問題化し、施行された法律が空き家対策特別措置法です。
リスクがあると思われる空き家を特定空き家に指定し改善を促すのですが、特定空き家の認定基準や罰則などよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
この記事では、空き家対策特別措置法に伴う特定空き家への認定基準や、罰則などについて解説します。
特定空き家等の認定基準
どのような空き家が特定空き家に認定されるのかがわからないという人も多いのではないでしょうか?
まずはどのような空き家が特定空き家となるのでしょうか?
特定空き家となる恐れがある空き家について解説します。
(1)建築物が倒壊等するおそれがある
人が住んでいないということは換気も満足にできていません。
さらに、シロアリなどの害虫やネズミなどの害獣や害虫が発生し、建物にダメージを与える可能性も高くなります。
建物の管理を行わず、放置していると建物は急速に劣化してしまうのです。
倒壊といってもいきなり倒壊するわけではありませんが、他の建物が耐えうる状態の地震程度でもあっという間に倒壊してしまうかもしれません。
また、倒壊までいかなくても外壁の落下や屋根の飛来などにより、隣の建物に被害を及ぼすことも考えられます。
建物に対する被害だけでなく、歩行者など人身に被害を及ぼすかもしれません。
外観で判断し、廃墟化し、倒壊の恐れがあると判断された場合は特定空き家へ指定される可能性が高いといえます。
(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態
空き家を放置していると、建物の劣化を早めるとともに外構部分にも大きな影響を及ぼします。
外構部分もほったらかしになってしまうので、雑草が生い茂り、樹木が伸び放題になってしまい、近隣敷地内に侵入するケースが考えられます。
また、雑草が原因でハチが巣を作り、近隣に被害を及ぼすこともあるでしょう。
このような事例において近隣住人に迷惑をかけてしまいます。
また、庭が荒れ果てた状態になってしまうと、ゴミの不法投棄が起こりやすいといえるでしょう。
ゴミの不法投棄によりハエが発生するかもしれません。
また悪臭などの被害も考えられます。
ネズミや野良犬、野良猫などが不法投棄された生ごみを食い荒らし、ごみが散乱する状態へとなってしまいます。
このように、著しく衛生上有害と思われる恐れのある状態になっても特定空き家に指定される可能性が高くなってしまうでしょう。
(3)著しく景観を損なっている状態
先ほどから前述しました内容は、言い換えると著しく景観を損なうことにも繋がるでしょう。
景観を損なうことは、前述した倒壊や不衛生な問題も含め、さまざまなリスクを負うことになります。
近隣住民に対して被害が及ぶ点が一番の問題点なのですが、さらに問題となるのが資産価値に大きく影響することです。
もし近隣住民が所有している不動産を売却しようとしている場合に、放置された空き家が原因で、売りにくい状況になることがあるのです。
近隣に廃棄化したような空き家があると、治安の悪さや、火災などのリスクを考えてしまうでしょう。
隣にそのような空き家があるならばなおさら売却価格に反映してしまいます。
近隣不動産の資産価値に大きな悪影響を及ぼすような空き家も特定空き家に指定される可能性があるといえるでしょう。
各自治体の認定基準
特定空き家に指定される要件は上記のようなケースとは別に各自治体により認定基準が定められているケースがあります。
では、どのような基準が定められているのかといった点について解説していきましょう。
(1)損壊状態等一部を点数化
国土交通省のガイドラインに準拠し損壊状態を点数化した表があり、その表を用いて特定空き家にするかどうかを判断しています。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理がおこなわれていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
この4つの状態をさらに細分化して点数化し、合計が100点を超えてしまうと特定空き家に指定されるといった流れです。
例外的には合計点が100点越えなくても適切な管理を行っていないなどの情報が提供された場合などは適切な助言や指導も行います。
ある程度、自治体の判断によるところがありますが、ガイドラインに即した点数付けができますので、平準化した目線での特定空き家の指定が可能といえるでしょう。
(2)被災家屋の応急危険度判定を準用
被災家屋の応急危険度判定を準用している自治体もあります。
被災家屋の応急危険度判定とは、地震で被害を受けた場合の建築物についてその後余震などがあった場合に2次災害を起こす恐れがあります。
2次被害を防ぐ意味合いで、倒壊や落下、店頭危険物の危険度を判定し、分類する判定方法です。
被災地応急危険度判定の場合は、赤、黄、緑でそれぞれの危険度を判定します。
特定空き家の場合は、自治体で点数をつけ特定空き家かどうかを判断するのです。
被災家屋の応急危険度判定を用いて特定空き家を特定している自治体は青森県 五所川原市です。
被災地応急危険度判定の場合、被災状況を特定するのは応急危険度判定士で各都道府県の登録を受けた約11万人の登録者から選ばれます。
しかし、特定空き家の指定を行う場合は、自治体によって異なりますが、一般的には役所の担当者などが行うケースが多いようです。
(3)独自の基準を作成
独自の判断基準を作成している自治体もあり、東京都板橋区などが独自基準を作成し判断しています。
板橋区は独自の判断基準により、特定空き家を認定し、特定空き家に認定すると居住の有無は関係なく、改善を指示するといった流れです。
- 建築物に係る影響度
- 衛生環境面から見た影響度
- 生活環境から見た影響度
これらの面から各々を評点し、特定空き家、特定老朽建築物、空き家等に分類します。
独自基準ではありますが、国土交通省のガイドラインを基に作成していますので全く一般的な基準から外れているわけではありません。
特定空き家に認定された場合の罰則は何?
では実際に特定空き家に指定されてしまうとどのような罰則を受けるのでしょうか?
特定空き家に認定され、自治体からの改善要望に応じなかった場合、段階的に罰則が科せられてしまいます。
ここからは特定空き家に認定され改善されない場合の罰則について解説します。
(1)固定資産税の特例措置から除外される
そもそも、なぜ空き家のまま放置しているのでしょうか?
遠方で管理ができないなどといったさまざまな理由もあるのですが、要因の一つとして固定資産税や都市計画税が挙げられます。
固定資産税や都市計画税は、不動産の所有者に対してかかる税金で、各自治体に納めなければいけない地方税です。
計算方法は、
固定資産税評価額の1.4%が固定資産税、
固定資産税評価額の0.3%が都市計画税とそれぞれ課税されます。
かかる対象となるのは土地、建物双方です。
例えば土地と建物の固定資産税評価額が2,000万円だった場合の固定資産税と都市計画税は
2,000万円×1.4%=28万円
2,000万円×0.3%=6万円
合計34万円の税金を支払わなければいけないのです。
しかし、マンションや戸建て住宅などの居住用不動産には、固定資産税の軽減措置があり、本来の課税額から1/3、または1/6まで減額されます。
空き家を解体してしまい更地としてしまうと、固定資産税の軽減措置を受けることができません。
つまり3倍か6倍へと固定資産税が跳ね上がってしまうことになるのです。
このような点から、管理できなくても税金対策のために空き家のまま放置しているケースが見受けられます。
今回の条例により、特定空き家と認定され、勧告されてしまった場合、この固定資産税の軽減措置が除外されることになりました。
つまり、行政の勧告に従わなかった場合は固定資産税が、3倍から6倍になってしまいます。
これにより、空き家状態で保有することに対しメリットがなくなりますので特定空き家の改善につながるのです。
(2)罰金を科せられる可能性もある
固定資産税の軽減措置から除外される勧告を受けても改善しない場合、次の段階は改善命令となります。
多くの空き家所有者は勧告を受ける前には固定資産税の軽減措置から外れてしまうので、空き家の改善に取り組みます。
しかし、さまざまな諸事情により、改善できず勧告まで無視すると、命令となり、これにも対応しなければ罰金が科されるのです。
50万円以下の罰金が空き家の所有者に対して科されます。
特定空き家に指定されてしまうと、空き家のまま放置しておくメリットはどんどんなくなってしまうことがわかります。
(3)最後は行政代執行による解体処分
命令を受けても改善されなかった場合、最終的には行政代執行により、多くは解体の措置を取られてしまいます。
これは、行政が所有者に代わり、代理で改善措置を行うことです。
行政が代わりに解体を行ったからといって解体費用を行政が負うわけではありません。
当然ながら、かかった費用は所有者へ請求されてしまいます。
支払わなかった場合は残った土地の差し押さえや、所有者の財産差し押さえといった措置が取られてしまう可能性もあるのです。
解体費用ともなると何百万円ともなってしまい、かなりの高額な請求を所有者は覚悟しなければいけないでしょう。
万が一所有者が自己破産したとしても、この費用に関しては免責の対象とはならないのです。
しかし、実務において行政代執行まで至った場合、実際に所有者から解体費用を回収できているのでしょうか?
2018年に特定空き家を行政代執行により、解体したのは約67件でした。
その中で費用が回収できたのは、わずか1割程度だったといわれています。
しかも、特定空き家の行政代執行は件数が増加しており、今後は厳しい措置が想定されるといえるでしょう。
まとめ
2015年に施行された「空き家対策特別措置法」により、国も空き家対策に本腰を入れ始め固定資産税軽減措置の除外や、罰金、行政代執行などができるようになりました。
一定の効果は出ていますが、まだまだ完全ではありません。
しかも行政代執行により、解体した費用の回収もままならない状態です。
ただし、今後はさらなる厳しい措置も想定されます。
空き家をしっかりと管理していくことは所有者として当然の責任として行わなければいけないでしょう。
空き家を持っている場合は、ほったらかしにしない早急な対応が求められます。