特定空き家は緊急安全措置により解体される可能性が!対象となる場合とは?
近年、空き家の増加に伴うさまざまなトラブルが発生しており、空き家の増加が社会問題化しているといっても過言ではありません。
空き家をきちんと管理していないとさまざまなリスクが想定されます。
そのため、政府も空き家対策に本腰を入れ改善に取り組んでいますが、空き家対策特別措置法も空き家対策の一環です。
では、空き家を放置しているとどのようなリスクがあるのでしょうか?
また、空き家対策等別措置法の概要や特定空き家の解体などについて詳しく解説します。
空き家を放置した場合には近隣が負う迷惑な状況とは
空き家を放置されると最も迷惑を受けるのは近隣住人です。
では、空き家を放置しているとどのような迷惑をかけることになるのでしょうか?
空き家を放置することによる近隣住人への影響について解説します。
(1) 景観が悪化する
管理されていない空き家が近隣にあると景観が悪化するといった点が挙げられます。
特に廃墟化したような空き家があるとそれだけで近隣住民は、あまりいい気はしません。
また植木が伸び放題になっていて、隣の敷地に入り込んでしまう可能性もあるし、雑草が伸び放題ともなると、害虫の発生なども気になる点です。
最もマイナス要因となるのが、近隣の資産価値の下落といったことが挙げられるでしょう。
もし、管理されていない空き家の近隣住人が、自分の家を売却したいとする場合、近隣に管理されていない空き家があるとどのように感じるのでしょうか?
その家を購入したいと思う人は、当然ながら近隣の状況が気になります。
近隣に管理されていないような空き家があると購入をためらってしまうかもしれません。
例えば、購入しないという選択や金額を下げたいと思ってしまいます。
つまり近隣住宅の資産価値下落につながるのです。
景観の悪化は、資産価値の下落にまで繋がります。
(2) 放火など火災の恐れ
管理されていない空き家のリスクとして火災の恐れが挙げられます。
前述しましたが、空き家の管理をきちんと行っていないと、雑草が伸び放題となり、枯草や、雑草だらけの庭となっていることでしょう。
そうなると、放火のリスクなどが気になります。
枯葉に火が引火してしまい火災発生の元となってしまうかもしれません。
放火ではなくともタバコのポイ捨てなどから枯草に引火するといったリスクも考えられます。
火災のリスクに関しては非常に重いリスクとして受け取られるでしょう。
万が一火災となってしまうと、近隣住民の家に延焼してしまう可能性も考えられますので、近隣住人は、絶対に巻き込まれたくないと考えるでしょう。
(3) 治安の悪化
治安の悪化も注意しなければいけないリスクです。
管理されていない空き家が放置されていると、そこに不審者が入り込む可能性が高くなるでしょう。
不審者が入り込み、勝手に生活することも考えられます。
そうなると、生ごみなどの放置により、ネズミなどの害虫が派生するかもしれません。
ネズミなどの害虫が発生すると近隣へ入り込む可能性が考えられます。
また、不審者だけではなく、犯罪の取引場所として利用されるかもしれません。
麻薬取引や不正な商品の取引現場に利用される可能性も考えられます。
治安の悪化も近隣住民には大きな悪影響です。
万が一、その空き家で犯罪が起こったともなると、その一帯は治安が悪いといったイメージになってしまいます。
近隣全体にも悪い影響を与えてしまいますので大きなリスクといえるでしょう。
空き家対策特別措置法とは
きちんと管理されていない空き家は、近隣住人にとって大きなマイナス要因であることがわかります。
空き家は年々増加の一途となっており、政府も空き家に対する対策を検討し、できた法律が空き家対策特別措置法です。
では、この空き家対策特別措置法とはどのような法律で、どのような罰則があるのでしょうか?
ここからは、空き家対策特別措置法について解説します。
(1) 空き家対策特別措置法の概要
平成26年11月に成立した法律が空き家対策特別措置法。
この法律は、名前通り空き家に関する対策が定められた法律です。
この法律では以下のような点を定めています。
- 空き家の調査
- 管理されていない空き家に対する指導
- 特定空き家への指定
- 特定空き家に対する、助言・指導・勧告・命令の発信
- 特定空き家に関するさまざまな罰則の施行
などが行政からできるようになりました。
今までは、個人情報の関係などから、あまり詳しい調査などができず行政としても管理されていない空き家に関する対策が不十分だったといえるでしょう。
空き家に関するさまざまなトラブルから、現在は、直接空き家に立ち入り調査が可能になり、改善が見られない空き家に関しては、罰則も科せられるようになったのです。
空き家問題に対し、日本政府も本気で取り組んでいるといったことがいえるでしょう。
(2) 空き家対策特別措置法にはどのような罰則がある?
ではこの空き家対策特別措置法により、どのような罰則が科せられるようになったのでしょうか?
まず、管理されていない空き家と認定されると特定空き家に指定されます。
特定空き家となると改善のために行政からさまざまな指摘が入ることになるのです。
最初は、助言や指導といった内容で改善を促される程度です。
しかし、それでも改善されない場合は、勧告となり罰則が適用されます。
所有している空き家は、土地部分において1/3か1/6まで固定資産税が安くなっています。
しかし、空き家の管理不十分な状態が改善されなければ、固定資産税の軽減措置を受けることがでないのです。
つまり固定資産税が3倍から6倍へと跳ね上がります。
それでも改善しなかった場合は、命令となり罰金刑に処せられ、最後には行政代執行による解体も含め行政が処置することになります。
段階的に罰則を与えることで空き家の改善を促す法律といえるでしょう。
(3) 行政の措置による費用はどうなるのか?
先ほど、最悪の場合は行政代執行による解体になると前述しました。
では、この行政が自ら行う措置についての費用はどのようになるのでしょうか?
基本的に行政代執行により行った解体などの措置に関して、費用は全て所有者に請求されます。
残った土地の差し押さえや所有者に対する請求といった対応により費用を回収しなければいけません。
極端なケースになると、所有者の給与や財産の差し押さえといった対応が行われるかもしれません。
しかし、現実を見てみると、ここまで各行政も空き家対策特別措置法による行政代執行での対応を行っていますが実際に回収できた費用は全体の1割程度だといわれています。
非常に回収率が少なく、行政の予算にも今後大きく影響する可能性も考えられるでしょう。
今後はさらなる厳しい対応へ繋がることが想定されます。
特定空き家の解体方法は?
特定空き家に指定され、解体となった場合には先ほど行政代執行により解体ができると述べました。
では、その他にはどのような方法で解体されるのでしょうか?
行政代執行も含めた解体方法について詳しく解説します。
(1) 行政代執行による解体
まずは、先ほどから述べている行政代執行です。行政代執行とは、行政が行う強制執行の一つです。
行政における義務を履行しないものに対し、行政自ら、若しくは行政が指定した第三者により義務を履行し、費用はその義務を負うものに請求します。
行政代執行を行うまでに相当の期間を定め、履行を勧告し、期限が来ても履行されない場合は行政が対応するという流れです。
(2) 略式代執行による解体
その他の方法として次にあげられるのが略式代執行です。
先ほどの行政代執行は、所有者がいる場合に行う措置で、後日所有者に対して費用の請求を行います。
しかし、ケースによっては所有者が特定できない空き家があるのです。
この場合は、所有者がいないので行政代執行ができません。
このケースで行う措置が略式代執行といわれています。
空き家の所有者が特定されていないが、早く解体を行わなければ近隣住民への被害が起こる可能性がある場合などに略式代執行による解体となるのです。
解体を行った後に所有者を特定し、費用を請求するといった流れになります。
(3) 緊急安全措置による解体
緊急安全措置による解体も可能です。
緊急安全措置とは防災上において、緊急を要するものに対し、安全性の担保や二次被害を起こさないための措置です。
空き家対策特別措置法では、一定の段階を踏まなければ行政代執行や略式代執行ができません。
しかし、緊急安全措置による対応は一定の手続きを得ることなく執行可能です。
解体までできるのかというと難しいケースがあり、必要最小限度の応急安全措置に限られてしまいます。
解体まではできない可能性がある点が、行政代執行や略式代執行とは異なるといえるでしょう。
緊急安全措置による解体はどのような場合に有効?
先ほど、緊急安全措置による解体などについて前述しました。
ではどのようなケースにおいて緊急安全措置による対応が可能なのでしょうか?
緊急安全措置による対応が可能な事例について解説します。
(1) 台風などによる災害
台風などによる災害が起こる可能性がある場合に、緊急安全対策による措置が可能です。
管理されていない空き家は外部がかなり傷んでいる可能性があり、空き家の外壁や屋根の一部が飛んで近隣住人に被害を及ぼす可能性が考えられます。
また大雨により、空き家が倒壊し、近隣住人への被害といったケースもあるでしょう。
このようなケースにおいて空き家対策特別措置法の段階を踏んでいると近隣住人への大きな被害に繋がるかもしれません。
そのため、緊急安全対策による措置を行わなければいけないのです。
災害による対応が最も多い事例です。
(2) 明らかに倒壊の恐れがある
空き家が廃墟と化してしまい、いつ倒壊してもおかしくないようなケースでも緊急安全措置による対応が行われる場合があります。
急激な劣化により廃墟と化したような空き家に対してよく当てはまるケースです。
いきなり屋根が落ちた、瓦が落ちてきたなど、劣化のスピードが目に見えてわかり、近隣から連絡があった場合に対応するケースが多いといえるでしょう。
きちんと管理されていないため、ちょっとした突風でも屋根が落下してしまうかもしれません。
このようなケースにおいて倒壊リスクが明らかとなった段階で緊急安全対策の適用となるでしょう。
(3) その他明らかな危険がある場合
その他、緊急的な危険が起こった場合にも、緊急安全措置により行政は対応を行います。
管理されていない空き家に関しては、いつ突発的な事態が起こりえるのかわかりません。
そのため、その他にも緊急事態を要する場合は、緊急安全措置の対象となります。
まとめ
空き家をきちんと管理しないことは、もはや何のメリットもなくなってきます。
空き家対策特別措置法の成立により、さまざまな罰則の対象となったためです。
空き家を所有しており、管理に自信がない場合は、売却などの対応も検討してはいかがでしょうか?
今後はさらに空き家に対する管理を求められることになりますので、管理方法や運用方法を検討することをおすすめします。