空き家を解体して農地転用するメリットとデメリット・手順や注意点も解説
空き家を保有している場合、どのような利用をしたらいいのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
よく耳にする売却や賃貸に出すなどさまざまな運用方法がありますが、最近、農地に転用しているケースが見かけられます。
しかし、今まで空き家があった土地を農地に変えることは可能なのでしょうか?
また、農地に転用することでどのようなメリットがあるのでしょうか?
この記事では、空き家があった土地を農地に転用した場合のメリットやデメリット、農地に転用する方法などについて解説します。
目次
空き家を解体し農地転用することは可能?
まずは、実際に空き家等の宅地を農地に転用できるかどうかがわからない人も多いのではないでしょうか?
そもそも農地転用とはどのようなものかわからない人もいるでしょう。
ここからは農地転用しついて解説します。
(1)農地転用とは
農地とは、畑などを耕し、野菜などを育てる土地のことを指します。
住居を建てる目的や駐車場として利用する目的などで保有していた土地を、農地に転用することは可能です。
農地を宅地に転用する例はいくつかありますが、宅地を農地にする例はあまり見られません。
しかし、近年空き家の急激な増加により廃墟化したような空き家が増えています。
そのため、きちんと管理できていない空き家を対象とした空き家対策特別措置法により、特定空き家に認定されると罰則を受けてしまうのです。
例えば、宅地だと固定資産税の軽減措置を受けことができたのですが、特定空き家となると固定資産税の軽減措置を受けることができません。
これらの状況により、空き家を解体し、宅地を農地とする例が増えています。
宅地を農地に転用することは可能であり、増えているということがいえるでしょう。
(2)どの土地も農地に転用できるのか?
では、どのような宅地も農地に転用できるのかというと、基本的には自由に転用が可能です。
基本的に農地を宅地にする場合、農地転用に関する届け出や許可を受けなければいけません。
しかもすべての農地が宅地にできるわけではなく、一定の規制があります。
しかし、宅地を農地にする場合は特に法的な規制がなく転用することが可能です。
とりあえず宅地を耕して現況で農地にすれば農地として認められます。
宅地を農地にすることはそう難しいことではなく申請の費用もかかりません。
空き家を農地転用するメリットはなにがある?
実際に空き家を農地転用する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?
今まであまり宅地を農地にする例は多くなかったのですが、農地にすることによるメリットも多く、新しい空き家の注目されている活用方法です。
ここからは宅地を農地転用するメリットについて解説します。
(1)固定資産税の軽減
最も大きなメリットとして挙げられるのが固定資産税の軽減です。
固定資産税の計算式は自治体にもよりますが、
固定資産税評価額×1.4%=固定資産税
上記数式が計算方法です。
この計算方法は農地でも宅地でも変わりません。
しかし、宅地評価と農地評価では評価額に大きな違いがあり、宅地の評価が高くなるのです。
つまり農地にした方が、評価が安くなります。よって農地にすることにより、固定資産税の軽減が計れます。
但し注意点として、どの農地でも宅地より固定資産税が安いというわけではありません。
農地にするエリアによっては宅地並みの課税額の場合もあります。
もしも固定資産税の軽減目的で農地にする場合は、固定資産税が安くなるかどうかの確認を前もって行っておく必要があるでしょう。
(2)農地として利用し、収益を得る
そのまま空き家を保有していても、賃貸にも出せないような状況の場合は、いっそのこと農地にして作物を育て収益を得ることも可能です。
空き家のままで保有していてもなにも収益を生まず、固定資産税や、建物のメンテナンスなど費用がかかって経済的にマイナスになってしまいます。
そのため、農地にすることで作物を収穫し、販売流通に乗せることであまり多くはありませんが収益を生むことも可能です。
どの程度の収益を上げることができるのかという点は、耕作する作物の種類や、耕作できる農地の広さなどによって異なります。
しかし、空き家のまま保有するよりも収益を少しでも得ることができるので維持管理費用も少し捻出できるのです。
このように耕作した作物を収入に変えることができる点もメリットといえるでしょう。
(3)土地の運用に悩まなくてよい
なかなか運用が思い浮かばない空き家を保有している場合、どうしたらいいのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
しかも、空き家対策特別措置法の制定により空き家に関する管理も今まで以上に求められています。
解体しても結局高い固定資産税を払い続けなければいけないので、空き家のままの状態になっているという人も多いでしょう。
農地にしてしまえば、今後、土地の運用に悩むことはありません。
どうしても農地の管理ができない時期は、いっそのこと休耕地にしておくといいでしょう。
農地にしてしまった後は、土地の運用に悩まなくていい点もメリットといえるでしょう。
空き家を農地転用するデメリットとは
空き家のある宅地を農地に転用するのはメリットばかりではありません。
デメリットもありますので、メリットだけではなくデメリットもしっかりと理解しておきましょう。
ここからは、宅地を農地に転用するデメリットについて解説します。
(1)必ず農地にできるわけではない
基本的に宅地を農地にすることは可能です。
ここでいう必ず農地にできるわけがないという意味は、農地にしたからといって必ず固定資産税が安くなるわけではないということを指しています。
空き家のある場所を農地にしたからといって宅地並みの固定資産税評価額になっている場合もあります。
都心部などにその傾向は強くみられているといえるでしょう。
農地にする目的が固定資産税の減額ならば、農地にする前に固定資産税がどう変わるのかを前もって確認しておく必要があります。
(2)資産価値が下がってしまう
資産価値が下がってしまう点もデメリットとして挙げられます。
ここでいう資産価値とは、売却価格のことです。
農地にして売却してしまう場合と、宅地のまま売却する場合のどちらが高く売却できるのかといえば、宅地のまま売却する場合です。
農地として売却しようとしても買い手が少ないことや、専業として農業をやろうとするには宅地程度なら狭いといった理由からどうしても金額が安くなってしまいます。
(3)手続きに手間がかかる
宅地を農地にする場合、基本的に現況の状態を農地にすることで農地として利用は可能です。
しかし、実際に農地としてきちんと認められるためには、農地法の規制に沿った農地にする必要もあるのです。
現況ではなく農地法に沿った農地にするためには登記などいくつかの手続きも必要となります。
このような手続きに時間がかかってしまう点がデメリットといえるでしょう。
空き家を農地転用する方法はなに?
空き家があった宅地を農地とする場合、いくつかの手続きが必要な場合もあります。
ではどのような手続きが必要になるのでしょうか?
ここからは空き家のある宅地を農地に転用する方法について解説します。
(1)現実的に農地にしておく
まずは現況農地にし、土地を耕しておかなければいけません。
野菜を栽培するなど、誰が見ても農地としておく必要があります。
単純に空き家を解体し更地にしている状態では農地として認められません。
(2)課税の地目を変更する
課税の地目を農地に変更しておく必要があります。
そこに家などが建っていると固定資産税が請求される場合には、現況の地目は宅地となっていることの方が多いでしょう。
課税の地目に関しては、固定資産税が請求されたときに地目を確認し、現況の状況と異なっている場合は、役所の固定資産税課などに問い合わせる必要があります。
(3)登記の地目を変更する
登記の地目変更を行う必要があります。
これは課税の地目と異なり、必ず行う必要があるでしょう。
地目変更は、法務局へ出向き地目変更の手続きを行います。
自分で地目変更を行うことは可能ですが、司法書士に依頼し地目変更の手続きを行うのが一般的でしょう。
空き家を農地転用する場合の注意点は?
空き家がある宅地を農地に転用するにはいくつかの方法があることを述べました。
農地への転用は、いくつかの注意点がありますので、注意点を理解した上で農地への転用を行う必要があるのです。
ここからは、農地へ転用する場合の注意点について解説します
(1)地目の変更を行わなければ罰金も
登記の地目を変更する方法について解説しましたが、法務局へ出向き地目変更の登記を行う必要があります。
不動産登記法によると、地目の変更が生じた場合は1ヶ月以内に地目の変更を行わなければいけません。
もし1ヶ月以内に地目変更を行わなかった場合には、10万円以下の過料に課せられてしまいます。
年間のコストを抑える目的で農地への転用を行ったにもかかわらず、登記忘れから罰金を支払うことになると何のために転用したのかわからなくなるでしょう。
登記における地目の変更は遅滞なく行いましょう。
(2)きちんと農地として活用する
農地としてきちんと運用しておく必要があります。
ただ畑を耕して農地のように見せているだけで、何も行わなければ荒れ果ててしまい、農地として認められないかもしれません。
もし作物を育てていなかったとしてもその場合はきちんと手入れしておく必要があります。
農地にしたからには農地として活用しましょう。
(3)農地にするには地域の農家との連携が不可欠
農地として活用するには、近隣農家との連携は不可欠です。
作物を育てるには水が必要ですが、水路を利用する場合は、水利委員会の承諾が必要な場合もあります。
また、薬剤の散布なども近隣農家の理解が必要になる場合もあります。
近隣農家との連携を行うためにも関係性を深めておく必要があるでしょう。
まとめ
空き家の活用をどのようにしたらいいのかについて悩んでいる人に新たな活用方法として農地にするという方法が挙げられます。
今まではあまり見られなかった活用方法ですが、空き家対策特別措置法の制定から、宅地を農地として利用する人が増えているのです。
固定資産税の減額や、作物を出荷することで収入を得るといったメリットがある反面、宅地並み課税の可能性があるといったデメリットも考えられます。
しっかりとメリットやデメリットを理解した上で農地にするかどうかの判断をしなければいけません。
しかし、もし近々で売却しようとしている人に関しては宅地の状態で保有していた方が高く売却することができるでしょう。
必ず事前の調査や分析を行い、農地として活用するかどうか決めることをおすすめします。