空き家を高齢者向け介護施設として活用することは可能?需要や注意点を解説

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空き家 高齢者向け介護施設

空き家の増加が目立ってきている昨今、空き家を今までのように単純な賃貸ではなく、何かに変更して賃貸するような動きも顕著です。

空き家の有効的な活用方法として高齢者向け介護施設の設立などが挙げられていますが、実際に空き家の有効活用として効果的なのでしょうか?

また、高齢者向け介護施設の設立にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

この記事では、空き家を高齢者向け介護施設に変更する場合の分析をさまざまな角度から行い、解説します。

高齢者向け介護施設の需要や将来性はある?

今後の高齢化社会へ向けての対策という点から考えると高齢者施設はニーズが高そうな気がします。

しかし、実際のところ、高齢者向け介護施設の需要や将来性は今後どのような見込みがあるのでしょうか?

まずは、高齢者向け介護施設の将来性や需要といった観点から分析してみましょう。

(1)市場ニーズは高くさらなる需要が見込める

高齢者向け介護施設の需要は年々右肩上がりになっています

引用:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム

サービス付き高齢者向け住宅の登録状況

上記の表を見てみると、年々高齢者向け介護施設の数は増えていることがわかります。

平成23年には100棟程度だった施設が令和3年には8,000棟に迫る勢いとなっているのです。

戸数も同様で、平成23年には3,500戸に満たない戸数なのが令和3年には27万棟に迫っています。

今後の高齢化社会に向けてすごい勢いで増加しており、市場のニーズは非常に高いといえるでしょう

つまり、将来性もニーズも高いため、高齢者向け介護施設の設立により空き家を解消するという方向性については非常に理にかなっているものだということがわかります。

(2)超高齢化社会に向けて対策となる助成制度も多彩

高齢者向け介護施設の利用者となるのは当然ながら高齢者ということになります。

少子高齢化が叫ばれている昨今ですので、当然ながら人口は減っており、高齢者が増えているというのは何となく理解している人は多いでしょう。

では実際にどのように今後、人口推移は変化するのでしょうか?

下の表を見てみましょう。

引用:総務省「わが国の人口の推移

2005年の12,708万人をピークに年々減少していることがわかります。

しかし高齢化率は増加の一途をたどっており、2060年には40%以上が高齢者となるとの想定がなされているのです。

今後、高齢者が増加する中で高齢者向け介護施設は、補助金制度に関してもさまざまな補助金が活用できるようになっています。

このような人口減少、高齢化の中、国や政府も高齢者向け介護施設の増加を後押ししているといえるでしょう

(3)空き家の新たな活用方法として注目されている

高齢者の増加とともに懸念されているのが空き家の増加です。

これも下の表を見てみましょう。

引用:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査

上記の表を見てみると、空き家数は年々上昇し、平成5年には450万戸程度だった空き家が平成30年には850万戸に近い数字となっています。

更に懸念されるのは空き家率の上昇です。

平成30年に13.6%の空き家率となっていますが、この数字は過去最高の数字で今後も空き家率はどんどん上昇していくと見られています。

これは、人口減少が大きな影響を及ぼしていることが理由のひとつです。

また住宅着工件数は、依然として増加しているので古くなった空き家に誰も住まなくなってしまうといったことが挙げられます。

これらの理由から、空き家となったものを次に貸すといっても、そもそも需要自体が少なくなっていることから業種を変えた施設の建築などが求められるのです。

人口は減っていますが高齢者は増えていくので、高齢者のニーズに合った住まい、つまり高齢者向け介護施設などが注目されているといえるでしょう

空き家を高齢者向け介護施設として活用 メリットは?

高齢者向け介護施設の需要は高く、将来性も有望であることを解説しました。

高齢者向け介護施設の設立は、時代のニーズに合っている施設といえるでしょう。

では、実際に空き家を高齢者向け介護施設に活用する場合、どのようなメリットがあるのでしょうか?

ここからは高齢者向け介護施設を建築する場合のメリットについて解説します。

(1)補助金などが活用できる

介護施設を建築する場合、空き家を改修して活用する場合や、空き家を解体し、高齢者向け介護施設を建築するといった方法が考えられます。

一定の要件を満たしている高齢者向け介護施設の建築や改築にはさまざまな補助金制度が準備されているのです。

しかし、これを知らなくて活用できなかったといった事例も見受けられます。

補助金を有効活用して高齢者向け介護施設を建築する場合は、高齢者向け介護施設に詳しいコンサルタントなどに依頼するとスムーズに申請が可能でしょう

このような補助金を活用することにより負担を軽減することが可能です。

(2)税制面でも優遇されている

高齢者向け介護施設のオーナーとなると、設立に伴い、いくつかの税制優遇措置を受けることが可能です。

例を挙げてみましょう。

高齢者向け介護施設を新築する場合、固定資産税の優遇措置を受けることができます。

高齢者向け介護施設を新築し、一定の要件を満たすと、1戸当たり120㎡相当部分において5年間は2/3程度に軽減することが可能です。

また不動産取得税においても優遇措置があり、家屋課税標準から1戸当たり1,200万円を控除します。

このような優遇措置が挙げられますが、一定の要件など少しわかりづらい面もあり、こちらもコンサルタントなどを依頼することで有効的に活用することができるでしょう

(3)都心部である必要はない

高齢者向け介護施設は、必ず都心部である必要はありません。

単純に賃貸物件として貸し出す場合、立地条件は借りやすさにおいて大きな要素となります。

しかし、高齢者向け介護施設はそこまで気にすることがなく郊外でも十分賃貸の需要があるのです。

郊外の方が、利用料などが安くなるケースが多い点も郊外でも好まれる理由の一つといえます

都心部だと利便性がいい分、各種税金が高くなってしまうこともあるし、経営に関するコストが高くなってしまうのです。

当然ながらユーザーの利用料金に跳ね返ってしまうでしょう。

郊外でも特に出歩くことが少ない高齢者向け介護施設は、特に不便さも感じず需要が高い点も空き家活用のメリットとして挙げられます。

空き家を高齢者向け介護施設として活用 デメリットは?

空き家を高齢者向け介護施設に変更することはメリットばかりではなくデメリットもありますので、双方をしっかりと理解し、分析する必要があります。

ここからは、空き家を高齢者向け介護施設として活用する場合のデメリットについて解説しましょう。

(1)法的な制限が多い

高齢者向け介護施設には、いくつかの法的な制限がかかります。

かんたんな例を挙げると、25㎡以上であることやバリアフリーであることなどです。

これらの制限や条件をしっかりと満たしていない場合、最悪の場合は高齢者向け介護施設として認定されないということになってしまいます

建築や改装に多額の資金を投入し、結果高齢者向け介護施設として認定されないとなると大問題です。

しっかりと法的制限を理解して取り組まなければいけません。

(2)コストがかかるケースがある

高齢者向け介護施設は建物というハコを準備しただけではなく、食事の供与や介護といったさらなるサービスを求められます。

このようなサービスとコストのバランスを考えた経営を行うことが必要です。

コストと収益のバランスを考えないといけませんので、通常の賃貸住宅としての貸し出しよりも、労力や資金が必要となるでしょう

建築面の資金準備だけではなく、サービス提供に関する資金や、開所後間もなくの赤字運営になったときの運営資金など一定の余剰資金が必要といえるでしょう。

(3)立地だけではないサービスの質もポイント

先ほどと似たような話にはなりますが、一般的な賃貸住宅に関しては立地が大きく影響し、高齢者向け介護施設には、立地はあまり影響しないと解説しました。

では何が影響するのかというと、上述したサービスです。これには建物の使い勝手も含まれます。

このようなサービスの向上や質の高さといった点を十分に踏まえた経営を考える必要があります。

空き家に高齢者向け介護施設を行う場合どんな点に注意する

空き家を高齢者向け介護施設として利用する場合、制限があるので注意しなければいけないとデメリットの部分で解説しました。

高齢者向け介護施設を行う場合、建築面から考えるとどのような面に注意しなければいけないのでしょうか?

ここからは、高齢者向け介護施設を建築する場合の注意点について解説します。

(1)手すりの設置やバリアフリーに

手すりの設置やバリアフリーは必須といえます

高齢者は、ちょっと転倒するだけで大きなけがをしてしまうことがあります。

施設内でケガしてしまうと、施設側の責任問題となってしまいますので、転倒防止対策などによる手すりの設置やバリアフリーはかかせません。

高齢者が快適に生活するスペースを提供する意味でもこのような設備を設置しましょう。

(2)転倒防止など床にも注意する

先ほどの転倒防止に関しては手すりやバリアフリーだけではなく、床も転びにくいような材質を利用するなどの工夫を行いましょう。

デザイン性を重視してしまい、転びやすい材質の床にしてしまうと、機能面で非常に不便さを感じてしまいます。

杖などを利用している高齢者など転んでしまうと大けがになりますので、先ほどの手すりやバリアフリー同様、床の仕様にも十分注意しておかなければいけません

(3)ドアを引き戸に変更

ドアも引き戸に変えておくと便利です。

ドアの開閉は、高齢者には少し負担に感じてしまう場合があります。

また開け閉めという2段階の手順を踏む必要もあるでしょう。

引き戸にしていると、一旦開けて、自動的にゆったりと閉まる仕様にしておくと高齢者には非常に便利です。

また開閉ドアよりも引き戸の方があまり力を使わないといった利点もあります。

ちょっとしたことですが日常の負担を減らすには効果的な方法です。

(4)照明を変更

明るめの照明を選ぶなどの気遣いが必要です。

暗い照明を使っていると、全体的に暗さを感じてしまうし、何より目が不自由な高齢者も多いので、不便さを感じてしまうかもしれません。

照明は、なるべく明るい照明を利用し、普段の生活において不便さを感じさせないようにしましょう。

(5)廊下も広くとる

廊下など通路関係も広く取っておく必要があります。

前述した杖を利用している高齢者や、車いすなどを使っている高齢者など歩行に関して不便さを感じさせないようにする必要があるのです。

車いすが十分通ることができるスペースの確保や、手すりを設置しても車いすが通ることができる広さの確保といった対応が必要となるでしょう。

まとめ

空き家を高齢者向け介護施設へ変更し、活用することは高齢者向け介護施設の需要が高まっている点や、今後も必要としている点などからも効果的な活用方法です。

都心部である必要もなく、補助金の活用や税制の優遇など、国や政府も力を入れていることがわかります。

反面、法的制限やサービスのコストなど簡単にできる施設ではありません。

何度か繰り返しましたがコンサルタントなどを中に入れて慎重に検討する必要があります。

しかし、うまく経営ができると空き家の活用で悩む必要は無くなるでしょう。

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