空き家の境界杭がない場合のトラブル回避策・境界の確定方法は?
空き家の所有期間が長く、境界の測量などを長期間にわたり行っていない場合、いつの間にか境界を判別する杭が紛失していることがあります。
実は、境界に関するご近所間のトラブルは少なくはありません。
気づいたときに何らかの対応を取りたいところなのですが、どのような対処をすればいいのでしょうか?
また、境界杭がない場合には、どのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか?
この記事では、空き家となっている境界杭の概要やトラブル事例、対処方法などについて詳しく解説します。
目次
空き家の境界杭がない? そのままにしても大丈夫?
空き家の境界杭がいつの間にか無くなっていることは珍しいことではありません。
長い年月を経てしまうと雨風や雪などにより、知らないうちに杭が埋まってしまうことや無くなってしまうことがあるのです。
では境界杭がない場合、何か対処が必要なのでしょうか?
境界杭が無くなった場合の対応について解説します。
(1)そのまま居住するのであればすぐに何か手を打つ必要はない
特に空き家に対して何かを行うことがなければ、急いで杭をつけるような必要ありません。
長期間、測量をしていない状態で境界杭が無くなってしまうと、土地家屋調査士に依頼して実測を行うこともありますが、費用がかかってしまいます。
そのため、そのまま居住する場合や賃貸に出す場合など、自分で所有し続ける場合には、特に何か対応することなく、そのままの状態にしているケースが多いといえるでしょう。
(2)空き家の売却を検討中ならば早めに対処する必要がある
境界杭の対応を特にしなくいていいケースは、自分が保有し続ける場合に限ります。
特に、売却する場合などはきちんと実測を行い、境界を確定しておかなければいけません。
特に何十年も測量をしていない場合ならば、きちんと測量して引き渡さなければトラブルの原因となってしまいます。
実測により、隣地との境界をしっかりと認識した上で売却を行う必要があるといえるでしょう。
(3)ブロックや塀を建てる時も早めに境界杭を設置しなければいけない
例外として、自分たちが所有している場合に境界杭の紛失に対し早急に対処しなければいけないケースがあります。
これは、隣との敷地にブロックをする場合や塀を建てる場合などです。
もし境界をよく把握しないまま塀などを建ててしまうと、あとから実は隣の敷地に越えて塀を建ててしまったということにもなりかねません。
何らかのタイミングで塀を建ててしばらく時間がたった後に境界を間違えていたことがわかると、塀の撤去と再設置の費用などがかかってしまうでしょう。
境界杭は自分の敷地確認と、隣の住民ときちんと境界を分けていることをわかりやすくするために設置されています。
売却以外でも、境界杭を再度設置する必要が出る場合もありますので注意しておきましょう。
空き家に境界杭を設置する場合の境界線とは?
境界とはそもそも一つの土地と、周りの土地の境目のことを指します。
一般的に一つの土地を筆と呼ぶことから境界ではなく、筆界とも呼ばれており混同しますが意味合いは同じものです。
境界杭はその境目をきちんと認識するためのもので、土地と土地の角部分などにそれぞれ境界杭が設置されており、境界杭と境界杭を結んでいる線が境界となります。
ひとことで境界といっても境界にはいくつかの種類があります。
では境界にはどのような種類があるのでしょうか?
ここからは、境界の種類について詳しく解説しましょう。
(1)敷地境界線
まずは、敷地境界線が最もよく認識されている境界線の名称です。
敷地全体の境界を指し、全体的な総称として使われています、
建物の敷地というのは、一筆の土地にだけ建物が建っているわけではありません。
2筆、3筆といくつもの土地の上に建物が建っている場合がありますが、この場合、筆ごとに境界を設定するわけではなく、その外周を結んだ境界を敷地境界線といいます。
つまり、敷地境界線は、北側の境界はAという敷地の境界線、南側はBという敷地の境界線といった風にそれぞれの土地の外周によって形成されているのです。
一筆の外周だけではないということをしっかりと認識しておきましょう。
(2)隣地境界線
次に挙げられるのが隣地境界線です。
隣地境界線とは、隣の土地と隣接する境界線のことを指します。
この隣地境界線がトラブルの原因となることが多いといえるでしょう。
隣地同士にブロック塀が設置されているから、ここが隣地境界線というものではありません。
前述しましたが、境界杭が紛失してしまい隣地境界線の認識があいまいなままでブロック塀をつけてしまうことも考えられます。
敷地境界線の杭が無くなっている場合は、ブロック塀の設置や境界部分に何かを設置する場合は境界の確認をしっかりと行う必要があるでしょう。
(3)道路境界線
道路境界線は、道路と自分の敷地の境界線を指します。
道路境界線は、しっかりとした杭が設置されていることが多いのでそうトラブルにはなりにくいといえるでしょう。
考えられるケースとして長い年月で土がかぶり、境界杭が埋まっている場合がありますが、この場合は杭を掘り起こせば大きな問題はありません。
しかし、道路によっては、四角のプレートだけ設置されている場合があり、プレートのみであれば外れるケースも多いといえます。
この場合は、一度道路の所有者である国土交通省か地方自治体に問い合わせると境界杭の復元を行ってくれることもありますので不安な場合は道路所有者に問い合わせましょう。
空き家の境界杭を設置しないまま売却する際、起こりうるトラブルとは?
先ほど、境界杭が紛失している場合、売買においてトラブルになるので測量した方がいいと述べました。
では境界杭がなく、測量も行わずに空き家を売却した場合、どのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか?
ここからは、境界杭や測量なしで空き家を売却した場合のトラブルなどについて詳しく解説します。
(1)隣の家に越境していた 越境されていた
空き家を売却した後に、実は隣の建物や設備が自分たちの敷地に入り込んでいることが分かったというケースがあります。
この場合、新しい空き家の所有者が隣の住民と交渉することになってしまいますので、購入そうそうトラブルを抱えてしまうことになってしまうのです。
逆に空き家の購入時に、建物の一部が隣の敷地に入っていたということも考えられるでしょう。
隣の敷地に建物がはみ出している場合や、ブロック塀が実は、相手の敷地内だったなどを総称して越境といいます。
測量を行わずに売買することを購入者はわかったうえで購入しますので、売主は特に責任を負うことはありません。
しかし、越境トラブルは隣近所との関係性を大きく損なうことになってしまいます。
境界線トラブルの最も多い事例といえるでしょう
(2)空き家を取り壊し新築するときに近隣からのクレーム
境界があいまいなまま空き家を取り壊し新築するときに、近隣からクレームを受ける場合があります。
建物が越境するというケースだけではなく、増設しようとした駐車場のガレージが境界をはみ出しているケースなどが近隣からのクレーム対象として挙げられるでしょう。
また、実は空き家が越境しているのを前の所有者と隣の住民はお互いに理解しているのを購入者は知らずに新築しようとしたら近隣からのクレームがあることもあります。
この場合、前の空き家と同じような建て方をしてしまうとまた越境してしまうことになるでしょう。
このケースでは化売主側の告知義務違反となり、空き家の所有者に責任が生じてくることになります。
このようなトラブルも起こりえる可能性があるので、境界杭がない場合は以前の連絡事項などもお互いに共有しておきましょう。
(3)当初の広さより狭い広さの土地だった
空き家を購入する場合、売買契約書には敷地全体の広さが明示されています。
しかし、実際に測量してみると当初売買契約書に明示されている広さより増減がある場合があるのです。
一般的に、土地の広さは登記簿などに明示されていますので、登記簿上の広さである公簿上の面積で売買を行います。
しかし、実際に測量してみると、土地の広さが登記簿の広さと同じといったことはほとんどありません。
多少の増減がありますので、注意しなければいけません。
多少の増減であれば大きな問題はありませんが、大きく異なる場合もありますので、公簿売買とはいえトラブル防止の観点からも、測量して引き渡すことがおすすめです。
空き家の境界杭を確定させる手順について
空き家の境界線を確定させるためには土地家屋調査士に測量を依頼しなければいけません。
では、土地家屋調査士はどのような手順で測量を行うのでしょうか?
境界杭を確定させる手順について解説しましょう。
(1)資料を調査する
まずは、昔の資料を調査することから始めます。
法務局などに掲載されている公図や地積測量図、登記簿などを取得しますが、それだけではありません。
市役所には古い公図や土地台帳などが残っている場合があります。
これらの書類も全て調査し、今までの状況を確認しなければいけません。
(2)現地を調査する
次に行うのが現地の調査です。
実際にどこの部分の境界杭が紛失しているのか?
境界杭はどの程度残っているのかを目視で確認します。
また、先ほど取得した公図や台帳などと現地の状況を照らし合わせ、どの部分に疑問点があるのかといった点を調査します。
(3)境界の立ち合いを行う
ここが最も大切で、時間がかかりやすい作業ですが隣地の住民や役所の担当者などとお互いの境界確認です。
ここで、合意が得られなければ非常に時間や手間がかかることになるでしょう。
合意が不調に終わり、境界が確定できなかったといった事態も起こりえます。
基本的に、境界を特定する作業は土地家屋調査士が行いますので、自分たちが交渉することはありません。
それだけに測量を依頼する土地家屋調査士には測量を行うスキルだけではなく、このような交渉に対する手腕が問われることとなるでしょう。
(4)土地の測量を行う
境界が確定したので、合意書を基に測量を行います。
(5)測量図を作成する
測量を基に図面に落としこみ測量図を作成します。
この測量図を作成後、再度境界の合意を行った隣地住民に対し測量図と境界確認書をセットにして一人一人に記名押印を頂かなければいけません。
この際に、一度は合意した境界に反発するようなケースもまれにありますので、最後の最後まで気が抜けない作業といえるでしょう。
まとめ
普段生活している中で、境界の存在などあまり気づかないかもしれません。
しかし、売却や境界近くに新たな設備を設置するような場合に思わぬトラブルとなる場合があります。
自分たちの敷地に境界杭はあるかどうかをしっかりと確認しましょう。
万が一ないことがわかると、すぐには対応しなくても今後手放す可能性がある場合などは前もって対策を行う必要があるかもしれません。
境界杭が紛失していても、少し前に測量を行っている場合は境界杭の復元で対応できる場合があります。
この場合は比較的安価に復元ができますので、境界の復元といった方法も利用してみてはいかがでしょうか?
境界の問題は隣地とのトラブルの火種になりやすいのでこの記事を参考にもう一度自分の敷地を確認してみましょう