特定空き家と不良住宅の違い・指定された場合の罰則も解説
空家を所有している場合、管理をきちんとしていなければ、特定空家に認定される場合があります。
また、特定空家ではなく不良住宅として扱われる場合もありますが、この違いがよくわからないという人も多いのではないでしょうか?
この記事では、特定空家と不良住宅、それぞれの定義や違い、罰則などについて詳しく解説します。
特定空家の定義や指定された場合の罰則は?
最初に解説するのが特定空家についてです。
特定空家とはどのような建物を指すのか?
特定空家に指定されてしまうと、なにか罰則などがあるのでしょうか?
ここからは特定空家の定義や罰則の有無などについて解説します。
(1)特定空家の定義
特定空家は、2015年5月に施行された「空家等対策特別措置法」によって指定される建物です。
特定空家の定義は、
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態。
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態。
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家です。
荒れ果てているような空家を近隣住民などの通報などにより行政が発見し、調査を行った上で上記の状態に合致すると特定空家に認定されてしまいます。
特定空家に指定されてしまうと罰則の対象となってしまいますので、特定空家に指定された場合は、速やかに改善する必要があるといえるでしょう。
(2)助言・指導
では実際に特定空家に指定されてしまうと、どのような罰則を受けることになるのでしょうか?
まず、特定空家に指定された住まいに対して行政が行うのが、所有者に対する助言・指導です。
特定空家の状態を速やかに改善するように、そして適切な管理を行うように助言や指導が行われます。
助言や指導の段階では、空家がきちんと管理されていない状態をもし改善しなかったとしても、特に罰則があるわけではありません。
しかし、助言や指導を守らなかった場合、次の段階に進んでしまいます。
助言や指導の間に特定空家の状態を改善し、適切な管理を行える状態にしておく必要があるでしょう。
(3)勧告を受けるとどうなる?
助言や指導でも全く改善の余地がない特定空家に対して次に行われるのが勧告です。
勧告を受けてしまうと罰則の対象となってしまいます。
ではどのような罰則を受けることになるのでしょうか?
勧告を受けてしまうと、固定資産税の住宅用地の特例から外されてしまいます。
空家が放置された状態で残っている大きな要因のひとつが、住宅用地の特例を利用することが目的です。
不動産を所有していると所有者は固定資産税や、地域によっては都市計画税の課税対象者となります。
しかし住宅用地として土地を利用していると、従来の固定資産税よりも1/3若しくは1/6まで減額されているのです。
住宅用地の特例から外れてしまうと、土地の固定資産税が3倍若しくは6倍に跳ね上がってしまいます。
空家のままにしていても、固定資産税の減額対象にはなりません。
大きな罰則といえるでしょう。
(4)命令を受けるとどうなる?
勧告を受けても全く状況が改善しなければ次の段階が命令となります。
命令を受けてしまうと、罰則が科せられるケースがあります。
50万円以下の過料が課せられてしまいますので、固定資産税は高いし、過料まで支払ってしまう羽目になってしまうでしょう。
これも大きな罰則です。
(5)最終的には行政代執行による解体
どんな罰則を受けても、全く改善の余地がない場合、特定空家は劣化が著しく廃墟化している可能性も考えられます。
つまり、倒壊のリスクが非常に高くなってしまうということです。
近隣住民も特定空家に対して、なんとかしてほしいと思っているのではないでしょうか?
どんな罰則を科しても全く改善されず、放置しておくと倒壊してしまう可能性もある特定空家に関しては、最終的な手段として解体されてしまいます。
行政代執行による解体です。
行政代執行とは、行政が所有者に代わって手続きを行うことで、今回の場合は解体を代わりに行います。
費用は所有者に請求されますので、支払わなければ残った土地の差し押さえなども考えられるでしょう。
特定空家になってしまうとメリットはなにもありませんので、定期的な管理や修繕が必要です。
特定空家になりやすい空家の状態とは?
先ほど、特定空家の定義について述べました。
倒壊や保安上のリスクなどいくつかの状態が対象となりますが、もう少し具体的にどのような状態が対象となるのかを知りたいという人も多いのではないでしょうか?
ここからは、特定空家になりやすい空家の状態について詳しく解説します。
(1)衛生上有害になる可能性が高い空家
衛生上有害となる可能性とは不法投棄によるゴミなどが発生し、空家自体の臭気がひどい場合や、ねずみ、ハエといった害虫が発生している場合になります。
このような状態になってしまうと、地域住民の生活に大きな支障となるでしょう。
放置しておくと、害虫だけではなく猫や犬も寄ってしまい、フンなどをすることによりさらなる被害が発生するかもしれません。
当然ながら、地域住民から行政による苦情も多くなってしまいますので、特定空家に指定して空家の管理に口出しできる状態にします。
(2)倒壊リスクがある空家
倒壊リスクがある空家とは下記の状態により判別されます。
- 建築物の著しい傾斜
- 建築物の構造耐力上主要な部分の損傷など
基礎に不同沈下がある場合や柱が傾斜している場合は対象となるかもしれません。
また構造耐力上主要な部分として基礎部分の状況が重要になります。
基礎部分が破損や変形、基礎と土台にずれが発生している場合なども対象です。
このような状態にある空家は特定空家に指定される可能性があります。
(3)近隣住民が迷惑と感じる空家
先ほど、衛生上有害な不法投棄によるゴミの発生やゴミに群がる害虫の発生が特定空家の対象となってしまうと前述しました。
その他にも近隣住民が迷惑と感じる状態になってしまうと、特定空家となるかもしれません。
例えば、庭の植木が全く管理されていないために伸び切ってしまい、道路にまで植木が伸びてしまうと、歩行者の視界が悪くなり交通事故の可能性が考えられます。
また、全く管理されていなければ不審者の侵入による火災発生なども考えなければいけません。
空家に動物が侵入し、毎夜鳴き声に悩まされていることもあるのではないでしょうか?
このような状態になってしまうと近隣住民が迷惑と感じてしまいますので、早急な改善のために特定空家となる可能性が考えられます。
(4)管理が悪く、著しく景観を損なっている空家
全く管理されていない空家はどんどん劣化してしまい、廃墟のような状態になってしまうことも考えられます。
廃墟化しているような空家は景観を著しく損なっているのではないでしょうか?
その地域のイメージが著しく低下することになってしまい、資産価値の下落にも繋がってしまいます。
単に景観が悪くなってしまうことでも、その地域が非常に悪いイメージを持ってしまいますので、行政としてもなるべく改善しなければいけません。
景観が悪くなっている空家も特定空家の対象となります。
不良住宅の定義や指定された場合の罰則は?
特定空家とは別に不良住宅と指定される住まいがあります。
ここからは不良住宅とはどのような定義づけで、どのように判別されるのかといった点について解説していきましょう。
(1)不良住宅の定義
不良住宅とは、住宅地区改良法第2条第4項で定義された住まいです。
建物の著しい破損や欠陥がある場合に不良住宅と判断されてしまいます。
判別方法については次の項目で解説しますが、基本的には建物の劣化状況により判断されると考えておけばいいでしょう。
(2)不良住宅の判別方法
不良住宅の判別方法は、「住宅地区改良法施行規則第1条」による住宅の不良度の測定基準を用います。
建物の判別箇所が定められており、その箇所が不良だと判別された場合は、それぞれに定められた点数が加算され、合計100点を越えてしまうと不良住宅と認定されるのです。
主に基礎部分や柱、外壁、床、天井などのほか設備面に対しても判別項目があります。
それぞれ、どのような状態になると点数が加算されるかをきちんと理解しておかなければ、不良住宅と認定されるかもしれません。
(3)不良住宅に関する罰則
特定空家のように全く改善が見られない場合罰則の対象となるのかといえば、特に罰則などはありません。
しかし、いくら罰則がないといっても、不良住宅の場合は建物自体の破損に起因しますので、倒壊のリスクを大きくはらんでいるといえます。
そのため、行政によっては不良住宅の解体に補助金制度を設けている場合もありますので、罰則ではなく、行政からの補助が出る場合がある点を理解しておきましょう。
特定空家と不良住宅の違いはどこにある?
特定空家と不良住宅では、内容も似通っているし、どのように違うのかがわからないといった人も多いのではないでしょうか?
ここからは特定空家と不良住宅の違いについて詳しく解説します。
(1)明確な違いは空家であるかどうか?
特定空家は、「空家等対策特別措置法」で定められ、不良住宅は「住宅地区改良法」により定められますので、法的に認定先が異なるといった点が挙げられます。
しかし、最も大きな違いは、特定空家は空家が対象となるのに対し、不良住宅は現在居住中でも認定される可能性があるという点です。
不良住宅の場合は必ずしも空家だけではないという点をしっかりと認識しておきましょう。
(2)判別方法も異なる
判別方法が異なるのは先ほど特定空家と認定されやすい空家の状態と不良住宅の判別基準について解説しましたので、判別方法が異なることはわかるのではないでしょうか。
どちらかといえば、判断基準によって点数付けして判断する不良住宅の方がわかりやすいといえるでしょう。
逆を言えば、特定空家は行政によって認定基準がはっきりと決まっているわけではありませんので注意が必要です。
(3)特定空家や不良住宅に指定されない管理が重要
特定空家や不良住宅に認定されてしまうと、所有者にとって基本的にほとんどメリットはありません。
解体する場合、不良住宅や特定空家に認定された住まいは解体に対し補助金が出る場合がありますが、そのまま所有希望の人はマイナス要因がほとんどです。
そのまま住まいを所有しておきたい場合は、特定空家や不良住宅に認定されないような対策が必要となります。
つまり現在住んでいる場合は、不良個所の適切な修繕が必要で、特定空家の場合は修繕だけではなく管理が必要です。
適切な修繕や管理により、不良住宅や特定空家にならない対策を行いましょう。
まとめ
この記事では、不良住宅と特定空家の違いについて解説してきました。
どちらも似たような意味で、自治体によっては同じものと認識している場合もありますが、そもそも法律が異なりますので、同じではないことを認識しておきましょう。
どちらにしても所有者にとって好ましくない状況となります。
しっかりと管理や修繕を行い、資産価値を下げない対策が必要といえるでしょう。