特定空き家の解体に利用できる補助金制度の内容を解説
「特定空き家ってどんな空き家?」、「特定空き家に指定されると何か影響が出る?」、空き家を所有している人にとって悩みとなるのが空き家の管理です。
空き家をきちんと管理していないと認められると、「空き家対策特別措置法」により「特定空き家」に指定されるかもしれません。
特定空き家に認定される前に何らかの手を打たなければいけませんが、その方法のひとつが解体です。
解体には当然ですが費用がかかります。
しかし、自治体によっては解体に関し補助金制度が利用できるケースもありますのでうまく活用できるとコストを減らすことが可能です。
この記事では特定空き家の特徴や罰則、空き家を解体する場合に利用できる補助金制度などについて詳しく解説します。
特定空き家の特徴や罰則について
特定空き家に指定されてしまうと、さまざまな罰則などを受けてしまうリスクが考えられます。
そもそも特定空き家とはどんなものかを知らないといった人も多いのではないでしょうか。
ここからは特定空き家に指定される空き家の特徴や罰則、空き家の解体費用相場などについて解説します。
(1)特定空き家に指定される空き家の特徴
特定空き家とは、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」に基づき行政から指定される空き家です。
特定空き家の定義として、
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
が挙げられます。
近隣住民にも迷惑をかける恐れがあり、倒壊の恐れさえある空き家を行政が特定空き家に指定することで行政の加入ができるようになりました。
(2)なぜ特定空き家に指定されるまで放ったらかしにしている
なぜ所有者は空き家をほったらかしにしているのかという点も気になるところです。
人が住んでいないため、空き家をほったらかしにしていると急速に劣化し、廃墟化してしまう場合もあります。
空き家の所有者が近くにいる場合は、自ら出向き管理することも可能なのでしょうが、空き家が遠方にありなかなか管理できないケースも増えています。
また、空き家の管理ができなければ解体すればいいのでしょうが、解体するにも大きな費用がかかってしまう点も所有者には大きな負担です。
あわせて、固定資産税の問題もあります。
空き家が建っている土地は、住宅用地の特例を受けることができ、固定資産税が1/3若しくは1/6まで減額されています。
しかし空き家を解体してしまうと、土地は宅地並み課税の特例から外れますので固定資産税が3倍若しくは6倍まで上昇してしまうのです。
これらの理由から管理されていない空き家は、ほったらかしにされているケースが多いといえるでしょう。
(3)特定空き家になるとどのような罰則がある?
特定空き家に指定されてしまうと、いくつかの罰則を受けてしまいます。
一気に罰則があるわけではなく、段階を踏んで罰則が重くなるのが特徴です。
段階ごとの罰則は以下の通りです。
①助言・指導
近隣住民に迷惑を及ぼすような状況にある場合、行政から管理に関する助言や指導を行います。
この時点で速やかに助言や指導を実行すると、特に罰則を受けることはありません。
助言より指導の方がより、行政からの忠告が重いと考えておきましょう。
②勧告
助言や指導でも改善しなかった場合、より重い勧告を受けます。
もし勧告を受けても改善されない場合は住宅用地における固定資産税の特例から除外されてしまい固定資産税が従来の課税額となってしまいますので早急な改善が必要です。
③命令
勧告を受けても改善が見られない場合は、さらに重い命令が下されます。
ここから行政処分か下されてしまい、改善が見られない場合は、50万円以下の罰金が科されてしまいますので、非常に重い行政処分といえるでしょう。
④行政代執行による解体
これでも、全く改善が見られない空き家に関して、最終的行政が所有者に代わって空き家を解体します。
費用は当然所有者に請求され、支払われない場合は差し押さえなどの措置を受けてしまうことも考えられるでしょう。
このような罰則などにより行政が介入することで空き家の速やかな管理などを促進します。
(4)解体費用はどのくらいかかる?
なかなか管理できない空き家に関しては、特定空き家に指定される前に解体することがおススメです。
しかし気になるのは、解体費用がどの程度かかるのかという点ではないでしょうか。
空き家の解体費用は、広さや構造などでも異なりますので一概にはいえません。
一般的な解体費用の概算を広さと構造により下記に表でまとめました。
20坪 | 30坪 | 40坪 | |
木造 | 80万円~120万円 | 100万円~170万円 | 150万円~250万円 |
鉄骨造 | 80万円~130万円 | 120万円~200万円 | 180万円~280万円 |
鉄筋コンクリート造 | 100万円~150万円 | 170万円~240万円 | 220万円~320万円 |
あくまでも概算になりますので、地形や道路の幅などによっても異なります。
まずは、複数の解体業者に見積もりを取るといいでしょう。
特定空き家の解体における補助金の理由や事例
空き家の増加は社会問題となり、今後も人口減少などの要因などで空き家は増えてくると想定されています。
さらに空き家対策特別措置法により特定空き家に指定されてしまう前にきちんと管理するか解体しなければいけません。
自治体によっては空き家の解体に対し補助金や助成金を出している場合があります。
ここからは、空き家の解体に関する補助金について詳しく解説しましょう。
(1)特定空き家に補助金や助成金が出る理由
空き家の解体に関して補助金や助成金が出る最も大きな理由は、空き家が管理されないことにより、近隣住民に大きな被害が出ることを行政は食い止める必要があるからです。
その他の理由としては、街の景観が損なわれるのを防ぐため、放火などの犯罪抑制、不法投棄や害虫の発生抑止などが挙げられます。
管理されていない空き家に関しては、近隣住民に対し、大きな悪影響を及ぼす可能性が高くなってしまうため補助金を出して解体しやすい環境をつくっているといえます。
(2)特定空き家に補助金を出すのはどこ?
特定空き家の解体に関して補助が出るのは、国土交通省による、「空き家再生等推進事業」が基幹となっています。
空き家を撤去し、新たな土地を活用することにより、地域の活性化を促進する事業です。
特定空き家の解体に関しては、国から地方自治体に補助金がおりますので、これを利用して地方自治体が補助金を支給します。
自治体により、解体に関する補助金の制度設計や補助される金額はさまざまです。
空き家の解体を検討する場合の補助金に関しては、所在地の地方自治体に確認しなければいけません。
(3)解体補助金の事例
実際にどの自治体が、特定空き家の解体に関する補助金制度を行っているのかが気になるところです。
いくつかの自治体で取り組んでいる補助金の事例を見てみましょう。
●北海道小樽市
特定空き家等住宅除去費助成との名称で、一定の要件を満たすと上限を30万円として、解体費用の1/3までが助成されます。
●横浜市
建築物不燃化推進事業補助との名称で一定の要件を満たすと、上限を150万円として、解体費用の最大3/4までが補助されます。
●京都市
老朽木造建築物除去事業の名称で、上限を60万円として解体費用の2/3までが補助対象です。
●福岡県北九州市
老朽空き家等除却促進事業の名称で上限が50万円として解体費用の1/3までが補助されます。
その他にもさまざまな自治体が取り組んでおり、補助金の額や対象となる空き家、要件なども異なりますので、まずは自治体に問い合わせてみましょう。
特定空き家に解体の補助金が出る場合の条件
特定空き家に解体の補助金が出る場合、一定の要件を満たしておく必要があります。
自治体によって要件は異なりますが、一般的にどのような条件が対象となるのでしょうか。
ここからは、補助金に必要な条件について解説します。
(1)所有者が個人であること
所有者が法人の場合は、補助金の申請を受けられない場合がります。
基本的に、補助金などは個人が対象になるケースが多いといえるでしょう。
(2)築年数に注意
築年数も条件の対象となる場合が多いといえます。
1981年に建築基準法が改正され、耐震に関する規定などが厳しくなりました。
そのため、1981年以前の建物は「旧耐震建物」として、補助金の対象になるケースが多いといえます。
(3)所得に関する制限
自治体によっては所得制限を設けています。
基本的に金銭面で困っていて解体ができない人のために補助金などを支給する制度です。
解体に困らないほどの所得がある場合は、自分たちで解体してもらわなければ本当に困っている人に補助ができない場合があります。
そのため、一定の所得制限を定めているケースが多いのです。
(4)納税に関する制限
固定資産税や都市計画税、その他の税金に関して滞納がある場合も要件に満たない場合があります。
補助金は税金の一部を充てて解体費用にするものですので、国民の義務である納税をきちんと行っていない場合は要件を満たさない場合が多いといえるでしょう。
(5)破損度合いや老朽度合いに関する制限
破損度合いや老朽化の度合いも要件を満たす条件となるケースが多いといえます。
あまり破損個所がない家や、老朽化していない家などは基準に満たず、補助金の対象ではなくなるケースもあるでしょう。
一般的には国土交通省の定めるガイドラインにより自治体が独自の基準を定め、基準に達した住宅を補助金の対象とするケースが多いようです。
特定空き家の補助金に関する種類
補助金の種類や要件などは自治体によって異なりますが、一般的にはどのような種類の補助金制度となっているのでしょうか?
ここからは主な補助金の内容などについて解説します。
(1)老朽危険家屋解体撤去補助金
老朽化や破損度の度合いが高く、このまま放置しておくと、倒壊してしまう恐れがあるような建物に対して補助金が支給されます。
廃墟化して、いつ倒壊するかわからないような建物が近くにあると近隣住民は不安でたまりません。
そのため、解体しやすいように補助金を支給し、促進する制度といえます。
(2)都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金
全く管理されていない空き家などは景観面に関しても周辺に悪い環境をもたらしていることが多く、景観面を維持する目的として補助金を支給する制度です。
都市景観形成地域で補助金が支給される場合、その後の活用方法も都市景観を維持する活用法が求められる場合もあります。
(3)空きや解体補助金
空き家に対する解体に補助金を出します。
この場合は空き家になっている期間が要件となるケースも多く、人が住まなくなってあまり日数が経過していない場合は、補助金の対象とならない場合もあります。
対象のものが空き家となっていますので、比較的対象の範囲が広くなるのが特徴です。
まとめ
空き家対策特別措置法の施行以来、空き家の管理責任が今まで以上に厳しくなっています。
特定空き家に指定されてしまうと、所有者にとって厳しく管理を追及されますので、その前に維持管理するか解体する必要があるでしょう。
この記事では、空き家の解体における自治体の補助金について解説しました。
上手く活用することで解体費用のコスト負担を大幅に軽減することができます。
しかし、要件や補助金の額などは自治体によって異なりますので、まずは自治体に問合せてみましょう。