既存不適格物件はリフォームできる? 確認申請が必要なケースや注意点を解説
所有している住まいが既存不適格物件となっている場合、売却する場合にさまざまな不利益が生じてしまうことがあります。
そこで、今の住まいをリフォームして住み続けようと検討する方も多いのではないでしょうか。
この記事では既存不適格物件に対するリフォームについて詳しく解説します。
既存不適格物件の意味や主な事例
そもそも、既存不適格物件とはどのような物件を指すのかわからないといった方も多いでしょう。
既存不適格物件の意味や、既存不適格物件になるケースなどについて詳しく解説します。
(1)既存不適格物件とは?
既存不適格物件とは、何らかの法令に違反している物件のことを指します。
しかし、建築当初から法令に違反している物件は、既存不適格物件ではなく違法建築物といった取り扱いです。
既存不適格物件とは、建築された当初においては基準に適合していたのに、基準の変更などがあり現時点において基準に適合しなくなった物件のことを指します。
事例を挙げると、今まで所有していた土地の一部を道路として収容されてしまい、容積率や建ぺい率を満たさなくなった場合などです。
既存不適格物件になったからといって、すぐに基準を満たすように改善する必要はありません。
そのままの状態で居住し続けることが可能です。
どのような法令が改正された場合に既存不適格物件になりやすいのかについて、次の項目から解説します。
(2)建築基準法が改正された場合
建築基準法の改正は、住まいの基準に大きな影響を及ぼします。
建築基準法は、建物を建築する場合においてルールを定めたものです。
もともと、建築基準法に違反している物件に反しては違法建築となります。
建築基準法の改正により既存不適格となったケースの事例で挙げられるのは1976年に日影規制が定められたケースです。
建物が定められた時間で日影に入ってしまう高さの建物は、改正後の規制に抵触することになり、既存不適格物件となってしまいます。
現実的に建物の高さを下げることはできませんので現行の基準には合いませんが、そのまま変更しなくていいという意味合いで既存不適格物件といった扱いになるのです。
(3)耐震基準が改正された場合
近年、国内ではさまざまな地震により、大きな被害を受けています。
1995年の阪神・淡路大震災、2016年の熊本地震、そして2011年の東日本大震災などが近年の大きな地震被害として挙げられるのではないでしょうか。
このような地震被害を受け、耐震基準も大きく改正されています。
特に大きな変化があったのは1981年の耐震基準の改正です。
1981年以前に建築された建物を旧耐震、1981年以降に建築された建物は新耐震と分けられています。
しかし、旧耐震物件だからといって、新耐震基準に変更する必要はありません。
既存不適格物件として、現時点の状態で使用することになります。
(4)都市計画法などの改正が要因となった
都市計画法の改正も既存不適格物件が出やすい事例です。
都市計画法とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため制定されており、市街化区域や市街化調整区域、用途地域、容積率や建ぺい率などが決められています。
改正事例として、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を定めた容積率や、敷地面積に対する建物面積の割合である建ぺい率の規制値が変更になることがあります。
これらの規制値が変更になり、現行の基準に適合しなくなった物件は、すぐに改善するわけではなく既存不適格物件として、そのまま使用を認められているのです。
既存不適格物件でもリフォームは可能か?
既存不適格物件であっても、建物を現行の基準に適合しない状態で使用し続けることは可能です。
では、既存不適格物件のリフォームができるのかが気になる方も多いのではないでしょうか。
ここからは、既存不適格物件のリフォームについて解説します。
(1)既存不適格物件でもリフォームは可能
既存不適格物件でもリフォームを行うことは可能です。
ただし、リフォームにも制限があります。
リフォームの内容によっては注意が必要ということになります。
リフォームの内容次第では建築確認申請が必要です。
後ほど詳しく解説します。
(2)ローンは通りにくい
戸建て住宅に関しては既存不適格物件であっても確認申請の必要がなくリフォームすることは可能です。
しかし、既存不適格物件を売却する場合、現行の基準に適していないことがマイナスポイントとなってしまい、担保価値が低く設定されてしまう場合があります。
必ずしも、既存不適格物件だと担保価値が低くなるわけではありません。
しかし、プラスの要因ではありませんので、もし既存不適格物件の購入を検討する場合には、住宅ローンの審査に注意しておきましょう。
(3)リフォームの場合は現行の基準に合致させる
既存不適格物件のリフォームに関して、不適格箇所に指定される部分がリフォームの対象になっている場合には、現行の基準に適合できるような改修が望ましいでしょう。
リフォームだけでは改善のしようがないケースもありますが、現行基準に適合させることにより、売却がしやすくなります。
また、物件によっては現行基準に合わせるリフォームをしないといけないケースもありますので、基本的には現行の基準に合わせるリフォームを検討しましょう。
(4)違法建築と既存不適格物件の違い
既存不適格物件がどのようなものなのかを説明する際に少し触れましたが、既存不適格物件と違法建築物件では意味合いが大きく異なります。
既存不適格物件とは、当時の基準に合致している建物が、法律改正などにより基準に満たなくなった物件です。
違法建築はもともと法令の規制を守らずに建てている物件を指します。
違法建築物件は、売却しようとしても住宅ローンが通りません。
一般的な物件や、既存不適格物件と比較しても価値は非常に低い物件になってしまいます。
安全基準や耐火、耐震基準に関連した違法だった場合、違法建築物を賃貸に出していると事故などが起こった際、所有者責任を大きく問われてしまいます。
違法建築物件を所有することはマイナス要因ばかりとなってしまい、ほとんどメリットはありません。
既存不適格物件のリフォームで確認申請が必要なケースとは
既存不適格物件のリフォームは可能だと前述しました。
しかし、リフォームの内容や物件の構造によってはリフォームが可能だったとしても建築確認が必要なケースもあります。
(1)簡単なリフォームだと確認申請の必要はない
簡単なリフォームについて、建築確認申請は必要ありません。
例えば、居室内のクロス交換や畳の表替え、ちょっとした修繕などに関しては既存不適格物件でも問題なくリフォームが可能です。
基本的に居室内における設備交換や小修理などは建築確認申請を行わずともリフォームができますし、現行の基準に合わせる必要性もありません。
(2)4号建築物の場合も建築確認は不要
4号建築物の建物もリフォームに対し確認申請の必要はありません。
4号建築物とは、木造の2階建て住宅や、木造以外の平家建て住宅など、いわゆる一般的な戸建て住宅などが含まれます。
4号建築物以外で、主要構造部の1種類以上を改修や修繕をする場合、その工事が構造部の半分以上だった場合は確認申請が必要です。
(3)外壁のリフォームは建築確認が必要
外壁部分のリフォームを行う場合、その建物が4号建築物以外であり、リフォーム個所が外壁面積の半分以上だった場合は建築確認申請が必要です。
外壁のリフォームは、建物自体の構造によってリフォームの内容が異なります。
例えば、外壁がタイル張りだった場合、経年によってタイルの汚れが目立ってきたので、洗浄作業と破損個所の修繕程度であれば建築確認申請の必要はありません。
また、外壁が吹き付け塗装だった場合、定期的な塗り替えに関するリフォームも建築確認申請せずにリフォームができます。
外壁タイル張りをサイディング張りに変更するといった構造上の仕様が変更になる場合は建築確認申請が必要です。
リフォーム内容によっても必要性が異なりますので注意しておきましょう。
(4)屋根葺き替えは建築確認が必要
屋根の葺き替えといったリフォームの場合も4号建築物以外で半分以上の面積を行う場合は建築確認申請が必要です。
屋根の葺き替えとは、経年変化によって古くなった屋根を撤去し、新たな屋根材を設置するリフォームを指します。
例えば、トタンだった屋根をガルバリウム鋼板仕様や瓦屋根などにリフォームする場合などの場合、建築確認申請が必要です。
しかし、屋上防水の修繕や張替え作業などに関しては、屋根自体の葺き替えには該当しませんので、建築確認申請の必要はありません。
このように、4号建築物以外でもリフォームの内容自体によって建築確認申請の有無が異なります。
既存不適格物件のリフォームにおける注意点
既存不適格物件におけるリフォームの場合、建築確認申請が必要になることを解説しました。
ここからは、建築不適格物件をリフォームする場合の注意点などについて詳しく解説していきましょう。
(1)リフォームしても高い価格では売却しにくい
建物を売却するときにリフォームする場合、売主は最低でも売却相場とリフォームにかかった費用を合わせた価格以上での売却を求めるのが一般的です。
しかし、既存不適格物件に関して、いくらリフォームして見栄えを良くしたとしても、既存不適格個所が改善できていなければ、売却金額に反映しにくいといえます。
現行の基準に合わないため、金融機関からも担保価値が低く設定されますので、相場の金額で売却しようとしても住宅ローンが通らない可能性もあるでしょう。
リフォームした場合でも高い金額で売却しにくいという点を注意しておかなければいけません。
(2)売却時には解体する可能性もある
前述したようにリフォームしたとしても現行の基準に適合しない物件は、売却時に高い金額での売却はできないでしょう。
住宅ローンを利用しての購入を検討している方でも、既存不適格物件ということで住宅ローンが通らず、全く売却できないかもしれません。
建築不適格物件は、現行の基準に合わない物件のこと指します。
つまり、築年数も古い物件が多い点も特徴です。
築年数が古いので現行の基準に適合させるリフォームを行うよりも、解体して更地の状態にした方が売却しやすくなることも多いといえます。
(3)不適格内容を解消するリフォームだと効果的
既存不適格物件の売却において、現行の基準に適合させるためのリフォームを行うことができると、売却相場程度の金額では売却も可能です。
現行基準に合わせるリフォームとなると、場合によっては高額になるケースも多いのですが、現行基準に合わせられなければそもそも売却できないかもしれません。
現行基準に合わせるリフォームができなければ、解体して売却するしか方法がなく、解体費用が余計にかかることになってしまいます。
不適格内容をリフォームによって解消することにより、建物にも価値を生み出すことができますので効果的といえるでしょう。
まとめ
既存不適格物件は、現行の基準に合わなくなったということですので、もともとから基準に違反している違法建築物とは大きな違いがあります。
しかし、既存不適格物件になってしまうと、売却時不利になってしまうケースや、リフォーム時に建築確認申請が必要になるケースがありますので手間を考えなければいけません。
不適格物件の解消ができるリフォームなどは効果的ですが、金額も高額になりがちですので、コストと価値のバランスを考える必要もあるでしょう。