不良住宅の解体に利用できる補助金は?不良住宅の定義や補助金の事例も紹介
近年、今後の少子高齢化による人口減少などが影響し、空き家が急増しています。
空き家の増加により懸念されるのが、全く管理されていない空き家や不良住宅の増加です。
不良住宅は、倒壊などのリスクだけではなく、近隣住民へも悪影響を及ぼす可能性が非常に高くなってしまいます。
現在、不良住宅の増加を防ぐため自治体が解体などに対して補助金を出している場合があり、不良住宅の除去に力を入れているのです。
この記事では、不良住宅の定義や解体に伴う補助金の要件、自治体が行っている補助金の事例などについて詳しく解説します。
不良住宅とはどのような状態の住まいを指す?
人口減少や、団塊の世代の相続などにより空き家が急増していますが、空き家が不良住宅という訳ではありません。
空き家でもきちんと管理されており、いつでも人が住める状態を維持している空き家もあり、不良住宅との判断がつきにくいかもしれません。
ここからは不良住宅の定義や判別方法といった点について解説します。
(1)不良住宅の定義
不良住宅の定義として根拠となるのが、住宅地区改良法第2条第4号です。
「主として居住の用に供される建築物又は建築物の部分で、その構造又は設備が著しく不良であるため居住の用に供することが著しく不適当なもの」となっています。
実は、空き家ということは全く関係がなく、人が住んでいたとしても構造や設備が著しく不良だと認定された住まいは不良住宅と定義付けされます。
構造が著しく不良ということになれば、倒壊すら考えられますので、居住の有無は不良住宅の定義に関係はありません。
住居としての機能が著しく低下している場合は、不良住宅と定義付けされるでしょう。
(2)不良住宅をどのように判断する?
では、どのような方法により不良住宅となるのかといった点が次に気になるところです。
不良住宅を判断する方法として不良度を判定する書面によって測定可能です。
この書面は、住宅地区改良法施行規則第1条に基づき作成された書面で構造や設備部分において不良度をチェックします。
大きく4か所に分類されており、点数で100点を超えてしまうと不良住宅と認定されるものです。
不良と認定される箇所においては、1か所だけでも100点となってしまう箇所もあります。
また、不良住宅の判断は、外観の目視だけでも判断が可能です。
不良住宅と認定されるような状態の家は、所有者がわからずに中の点検ができない場合も考えられます。
そのため、外観だけでも判断できるように目視できる項目を取りまとめ、不良住宅の判断をわかりやすくしているといえるでしょう。
(3)特定空き家と不良住宅は同じ扱い?
不良住宅と混同されやすいのが特定空き家に認定された家です。
不良住宅と特定空き家は同じではありません。
特定空き家とは空き家対策特別措置法に基づき制定されており、きちんと管理されていない空き家だと地方自治体に認定されてしまうと特定空き家となります。
特定空き家に認定されてしまうと、改善されるまでに段階を踏んでさまざまな罰則が科せられます。
最終的には行政代執行による解体となりますので、早いうちに改善して特定空き家を解消する必要があるでしょう。
特定空き家は空き家が対象となる点や空き家対策特別措置法に基づくため、不良住宅の認定とはそもそも基準が異なります。
まったく異なる基準といった点を理解しておきましょう。
不良住宅の解体にあたる補助金の要件とは
不良住宅は放置しておくと倒壊のリスクすら考えられる建物です。
そのため、地方自治体としても、解体などで除去することにより不動産の流通を促進したいと考えています。
そのため、不良住宅の解体を促進するために補助金制度を設けている場合があります。
ここからは不良住宅の解体にかかる補助金について解説しましょう。
(1)自治体によって補助金制度は異なる
不良住宅の解体にあたり、全ての地方自治体が不良住宅の解体に対し補助金を出しているわけではなりません。
不良住宅の解体における補助金の名前や要件、補助金額などは異なります。
自治体ごとにまったく異なりますので、不良住宅の解体を行う場合は、自治体のHPなどを確認しておくといいでしょう。
(2)補助金の額について
補助金の額に関しても自治体ごとに異なりますが、どの自治体も解体費用全額が補助対象とはなっておりません。
一定の金額を上限として解体工事の80%や50%などが対象となるケースが一般的です。
これも自治体によって全く異なりますので、不良住宅の解体を検討する際には、住宅が所在するエリアのHPなどを確認するといいでしょう。
(3)補助金の対象者について
補助金の対象者として真っ先に挙げられるのは、不良住宅の所有者であることです。
また、相続人などに関しても自治体によっては認めています。
複数の相続人がいて、全ての相続人が同意を得ていることが条件となっている自治体などもあります。
対象となる物件の所有者であったとしても、固定資産税などを滞納していると補助金制度を申請できないといった場合もありますので、注意しておきましょう。
(4)対象となる不良住宅について
対象となる不良住宅に関しては前述した、住宅地区改良法第2条第4号に基づき不良住宅と認定された物件です。
特定空き家などは対象ではありません。
中には、自治体が居住の用を供さないほどの不良住宅と認定した場合に補助金の申請を認めるなど、これも自治体によって違いがあります。
不良住宅解体に関する補助金事例
不良住宅の解体における補助金については、地方自治体によって大きく異なるといったことを前述しました。
ここからは、いくつかの自治体が取り組んでいる補助金の内容を紹介します。
(1)山形県米沢市の取り組みについて
山形県米沢市は不良住宅と特定空き家の解体促進に対する支援事業を行っている自治体です。
対象要件として、住宅地区改良法第2条第4号に基づき不良度が100点を超えた物件を不良住宅と認定し解体に関する補助金を受け付けています。
補助金の額は申請者か共有者の所得税が非課税の場合は、120万円を最大として解体工事の80%までが補助金の額です。
申請者や共有者の所得額が320万円未満の場合は、60万円を最大として解体工事の80%までが対象となります。
一定の予算が設けられており、期初の予算に達すると期中でも事業は終了しますので、解体に関する補助金促進事業が継続しているかの確認が必要です。
(2)佐賀県有田町の取り組みについて
次に佐賀県有田市の取り組み事例について説明します。
佐賀県有田市では不良住宅かつ空き家住宅であることが、解体の要件です。
補助金の対象者は、不良住宅の所有者か相続人となります。
しかし、税金の滞納がある方や、相続人全員の同意が取れていない場合などは対象から外れますので注意しておきましょう。
補助金の額としては50万円を上限として解体工事の80%が補助金の対象です。
注意点としては、事前調査や予算の確保に時間がかかるので解体工事を検討している場合は早めに相談することが挙げられます。
場合によっては工事開始まで3ヶ月程度かかるケースもありますので注意しておきましょう。
(3)愛媛県松山市の取り組みについて
愛媛県松山市の補助金制度について説明します。
松山市の事業名称は、老朽危険空き家除去事業となっています。
対象となる住宅は、松山市独自で不良度を判定し不良度判定が100点を超えると対象の建物です。
また空き家であることも対象の要件となります。
補助金の対象者は、建物の所有者として登記されている方や法定相続人、また同じような権限を要していると市長が認めた方です。
しかし、暴力団関係者や市税の滞納者、その他市長が不適当と認めた場合は対象外となります。
補助金の額は80万円を上限として解体工事費の80%までが補助金対象です。
愛媛県松山市の取り組みに関しても年度ごとに予算の上限があり、期中でも授業が終了するケースがありますので、事前に申請するなどの対策が必要となります。
(4)山梨県都留市の取り組みについて
最後に山梨県都留市の取り組みについて解説します。
補助金の対象となる不良住宅は、個人が市内に所有しており構造や設備が著しく老朽化している空き家のことを指します。
山梨県都留市の補助対象空き家の特徴として挙げられるのは、住宅地区改良法第2条第4項に規定する不良住宅で、市長が別途定める方法などにより指定された物件となる点です。
床面積の半分以上が居住目的で利用されたなどの要件もあります。
補助対象者は、対象なる空き家の所有者や法定相続人です。
また暴力団員や市税の滞納者などは、補助の対象外となります。
補助金の額は60万円を上限として解体工事の50%までです。
山梨県都留市の場合。空き家の位置図や現況図、申請書や誓約書など複数の書類が必要となります。
不良住宅を解体以外に活用する方法
不良住宅の解体にあたり、自治体が補助金を出している事例を解説しましたが、要件から外れてしまい、補助金申請を受けられない場合も考えられます。
ここからは、不良住宅を解体以外で活用する方法について解説します。
(1)改修して賃貸に出す
きちんと改修工事を行うことにより、自分たちが居住しなかったとしても賃貸として貸し出すことが可能です。
改修工事することで不良住宅ではなくなりますので、自分たちが住まないのであれば、賃貸として貸し出し、家賃収入を得ることも可能になります。
ここでは賃貸の需要があるかどうかがポイントになる点と、改修工事がどの程度かかるのかといった点などを検討しなければいけません。
家賃収入が得られても高額な改修費用がかかるのであれば、あまり意味がありません。
コストと収入のバランスを考えての活用が重要です。
(2)セカンドハウスとして利用する
あまり改修費用がかからず、賃貸としても需要がない場合はセカンドハウスとしての活用も可能です。
避暑地などに住宅がある場合は、長い休みの時に別荘代わりとして利用してもいいでしょう。
また、テレワークなどであまり会社に行く必要がない場合なども、気分転換にセカンドハウスで生活するといった活用も可能です。
(3)売却する
不良住宅を改修する費用も高額で、賃貸としての需要もなく、自分たちで活用することもない場合は売却する方法も考えられます。
不動産は所有しているだけでも維持管理費や固定資産税などのコストがかかります。
活用しない不動産を所有していてもコストだけがかかりますので、売却して整理する方法も効果的といえるでしょう。
まとめ
不良住宅は、そのまま居住していると倒壊の恐れも考えられますので、早急な対策が必要となり解体も効果的といえるでしょう。
自治体によっては解体に対し補助金を出している場合があります。
ただし、補助金制度は自治体によって異なり、対象となる不良住宅と認定される内容や補助金の額などは事前のチェックが必要です。
自治体のHPなどで確認できますので、不良住宅と認定され、ほとんど利用していない場合は解体などを検討すると良いでしょう。
解体以外にも賃貸として貸し出すことや、セカンドハウスとしての活用などが考えられます。
しかし、どちらも改修工事が必要なので、コストと収入のバランスなどを考えて判断する必要があるでしょう。