木造住宅の寿命はどの程度?耐用年数より長く住み続けられるコツも解説
木造住宅を相続した場合や、新たに購入する場合、気になるのが築年数とどのくらい住み続けることができるのかという点です。
木造住宅など建物には寿命があり、いつまでも住み続けられるというものではありません。
この記事では木造住宅の寿命や少しでも長く住み続けるためのポイントといった点について詳しく解説します。
木造住宅の寿命(耐用年数)はどのくらい?
木造住宅の寿命について考えるとき耐用年数との関係性をきちんと理解しておかなければいけません。
ここからは、耐用年数の意味や耐用年数の種類について詳しく解説します。
(1)耐用年数の意味と種類
耐用年数とは言葉だけを見ても、建物が耐えられる年数と理解している方も多いのではないでしょうか?
耐用年数が建物自体の寿命ではありません。
耐用年数とは、国が定めた不動産などの資産を使用できる年数のことを指します。
耐久年数ではなく資産として利用できる年数のことですので、耐用年数が過ぎたからといって建物が使用できないということではありません。
経済的に価値がある期間と考えるといいでしょう。
木造住宅の耐用年数は22年と定められています。
また耐用年数にはいくつかの種類があり、次の項目からそれぞれの耐用年数を詳しく解説しますが、22年と定められているのは法定耐用年数のことです。
(2)法定耐用年数について
法定耐用年数が一般的に言われる耐用年数のことを指します。
不動産の価値を評価するにあたり、あらかじめ国で定められた耐用年数です。
前述したように木造住宅は22年となっており、築22年を過ぎた木造住宅を売却する場合、査定上、建物の価値はゼロと評価されるケースが多いといえます。
同じように鉄筋コンクリート造の建物は47年、レンガ造の建物は38年と定められていますので構造によって耐用年数が異なる点に注意しましょう。
(3)物理的耐用年数について
物理的耐用年数とは、名前の通り、物理的に建物が耐えられる年数のことを指します。
つまり、寿命のことです。
一般的に物理的耐用年数を超えてしまった建物に関しては取り壊しとなりますが、建物の状態などによって異なりますので、明確な年数はわかりません。
同じ木造住宅でも寺院や仏閣など何百年もの間、残っている場合もあれば、一度地震など災害被災を受けてしまった建物は、物理的耐用年数が短くなってしまいます。
明確な年数の規定などがない点が特徴のひとつです。
(4)経済的耐用年数について
経済的耐用年数とは、主に不動産鑑定士などが用いる年数といえます。
鑑定した建物が、経済的な価値を有し続ける年数を、物理的要因や経済的要因、機能的要因などを勘案して経済的に稼働できる年数を算出します。
経済的耐用年数も建物があるエリアや管理状態などにより大きく異なり、法定耐用年数よりも長い年数で算出されることもあるといえるでしょう。
(5)期待値耐用年数について
期待値耐用年数とは、一般的に該当する建物を維持管理した場合に、居住の用として使用できる年数を示したものです。
期待値耐用年数が利用されるようになったバックグラウンドには、中古住宅の流通が諸外国と比較しても低い点が挙げられます。
中古住宅の売買を活発にして、有効活用するにあたり、期待値耐用年数を用いて、残りどの程度購入した物件が利用できるかを目安とするものです。
今までは、住宅をリノベーションしても耐用年数が増えるようなことはありませんでした。
住宅の評価を、より正当性のあるものとする耐用年数といえるでしょう。
実際に住み続けることができる木造住宅の寿命は?
耐用年数とは、建物自体の寿命を表したものばかりではないことについて解説しました。
実際に住み続けることができる年数は、それぞれバラバラなのですが、一般的に木造住宅に住み続けることができる寿命は、どの程度可能なのかを考えておくといいのでしょうか。
ここからは、木造住宅に実際に住み続けることができる年数について詳しく解説します。
(1)一般的には35年程度
木造住宅に住み続けることができる年数を問い合わせると意見は全く異なり、一概にはいえない部分があります。
法定耐用年数の22年と答える人もいれば、何代も住んでいる木造住宅を知っている方は50年以上などさまざまです。
一般的に最も多い意見としては、築35年程度と答える方が多いのではないでしょうか。
築35年程度が寿命と答える方が多いのには以下の理由があります。
- 住宅ローンの最長借入期間が35年程度であることが多いから
- 35年程度で家族構成がガラッと変わり、リノベーションと同時に建て替えを検討する方が多いから
- 設備が30年程度の寿命であるケースが多いため、設備交換時期に建て替えを検討する方が多いから
等が挙げられます。
(2)実際には35年以上の木造住宅も多い
先ほど、築35年前後が寿命としては一般的と前述しました。
しかし、35年以上でも住まいとして利用されている木造住宅は非常に多いのが特徴です。
先ほど、耐用年数の中でも期待値耐用年数について解説しました。
国土交通省によると、期待値耐用年数はフラット35の基準でみると60年前後、劣化対策等級3だと90年前後、長期優良住宅だと100年超ともなっています。
基本的に、よほど構造や躯体部分に大きな劣化がなければ、そのまま35年程度で住めなくなるということはありません。
35年というのはリノベーションなどを行わず、ほとんど木造住宅に対し、手を入れない状態であることを前提とした寿命といえるでしょう。
(3)材質によっても寿命は大きく異なる
木造住宅に使用される木材によっても寿命は大きく異なります。
例えば、法隆寺にある五重の塔は、材質にヒノキを使用しています。
ヒノキは、住まいの木材として使用されてから200年前後で強度が強くなるのが特徴です。
つまり、長寿になればなるほど強度を増し、最終的には伐採された時点の強度まで戻るといえます。
また、ヒノキだけではなく、スギやカバといった国産の無垢材でも非常に強度が高く、長持ちする住宅になるのです。
しかし、国産の無垢材を住まいに使用するとなるとコストが高くなる傾向にあります。
そこで、近年の木造住宅に良く利用されているのが集成材です。
引き板を組み合わせて、必要な強度の木材とし、木造住宅の梁や土台などに使用します。
費用が国産の木材と比較すると安価に利用が可能です。
注意しなければいけないのが、実際の強度がまだはっきりしていないという点が挙げられます。
まだ使用して長い年数が経っていないので、どの程度の強度があるのかが実証できていません。
材質によって木造住宅の寿命は大きく異なりますので、建築当初の材質が大きく影響するといえるでしょう。
(4)部位による使用木材によっても寿命に違いがある
全体的な木材をすべて国産の強度が高い木材を使用するとなると、高額なコストが発生します。
そのため、部位によって使用木材を変えることにより強度の維持やコストの削減に繋がるといえるでしょう。
梁や土台などに適している木材としては、水分などにも強く抗菌性も高いヒノキやヒバの木などを木材とすれば強度の高い住まいになります。
また、内装の木材には、木目が美しいケヤキやウォールナットの使用が適しています。
コストを抑えることが目的ならば、前述した集成材などを使用するといいでしょう。
集成材は、表示通りの強度を保つことに優れていますが接着剤が切れてしまうと強度が弱くなってしまうことが挙げられます。
コストを抑えつつ強度を保つ方法としては部位ごとに木材を変える方法も効果的です。
木造住宅に少しでも長く住み続けるコツとは?
木造住宅の寿命を長持ちさせるには、元々の材質が大きく影響しますが、材質以外の方法としては、やはりしっかりとした管理ではないでしょうか。
木造住宅に少しでも長く住み続けるコツといった点について詳しく解説していきましょう。
(1)中古住宅購入時に劣化部分を把握しておく
中古物件を居住目的で購入する場合、購入時の状態によって、木造住宅の寿命は大きく異なります。
すぐに売却する目的や、建て替えなどを検討しているのであれば大きな問題にはなりませんが、前述したように国内の中古不動産流通は非常に低いのが特徴です。
つまり、一旦木造住宅を建築や購入する方は、終の棲家として利用される方が多いので、木造住宅の寿命は非常に大切といえます。
木造中古住宅の購入にあたり、劣化部分を把握する場合、ホームインスペクションの利用が効果的です。
ホームインスペクションとは、専門の住宅診断士が建物の状況を詳しく調査し、結果を書面にして報告します。
中古住宅を購入後、自分たちでホームインスペクションの依頼をするか、購入前に売主に対しホームインスペクションを使うことを購入条件としてもいいでしょう。
劣化部分の把握としておすすめの方法です。
(2)こまめに掃除して悪い箇所をチェックする
こまめな掃除を行うことで自然に悪い箇所のチェックに繋がります。
不良個所をすぐに見つけることは一般の方には難しいといえるでしょう。
こまめに不良個所をチェックしていく姿勢を持っていると、今までとの違いが分かりやすく不良個所のチェックに繋がります。
不良個所は、早く見つければ見つけるほど、修繕のコストも安くなり、寿命を延ばす方法として効果的です。
また、こまめに掃除することも自然と維持管理に繋がります。
サビや腐食の低下や、建具などの調整に気づきやすく、木材に余計なダメージを防ぐことが可能です。
自分たちでできる最も安価な方法といえるでしょう。
(3)定期的にメンテナンスに入る
前述しましたが、一般の方が不具合個所にすぐ気づくことは非常に難しいといえます。
こまめな掃除では不具合をチェックできる箇所も限られてしまう点が、一般の人ができる限界です。
専門業者の定期的なメンテナンスで不良個所を早めに見つけることができます。
例えば、屋根のチェックなどは掃除では気づくことができません。
屋根のチェックや配水管のチェックなどを専門業者に専門業者に依頼することで、適切な修繕時期の提案なども行います。
これらの方法も木造住宅の適切な維持管理に繋がり、寿命を長持ちさせる効果的な方法といえるでしょう。
(4)弱い部分を補強しておく
あらかじめ木造住宅の弱いといわれる部分などに前もって補強などを入れておくといいでしょう。
地震に対する補強なども、災害による被害を最小限に抑えることに役立ち、木造住宅の長寿化に役立ちます。
木造住宅はどうしても構造上の強度は鉄筋コンクリート造の住まいに比べると耐久性が劣ります。
一般的に弱いと思われる部分に前もって補強材を入れておく方法も効果的です。
まとめ
木造住宅は、法定耐用年数は22年程度となっていますが、実際の寿命とは異なります。
一般的には35年程度の耐久性はあるといわれていますが、管理を適切に行い、木材なども国産の無垢材を多く入れることにより35年以上使用し続けることも可能です。
自分でできる建物を長持ちさせる方法としては、中古住宅購入時のホームインスペクション導入や、こまめな清掃などにより所有されている木造住宅を長持ちさせましょう。