資産価値がない家を相続した場合の注意点・相続放棄の判断基準も解説
親が亡くなってしまい、空き家となってしまった実家を相続するケースが増えています。
相続した実家などは、築年数がかなり経過していることも多く、建物自体が資産価値のない家となっているケースが非常に多いのが現状です。
この記事では、資産価値のない家を相続した場合の活用方法や相続した場合のデメリット、相続放棄の注意点といった点について詳しく解説します。
資産価値のない家を相続した場合の活用方法とは?
資産価値のない家を相続した場合、管理もせずにほったらかしにするのが最もやってはいけないことです。
ここからは、資産価値がない家を相続した場合の活用方法について詳しく解説します。
(1)資産価値がないからといって住めないわけではない
ここでいう資産価値がない家とは、耐用年数を過ぎてしまい、売却することになっても建物自体の価格がゼロと査定される物件のことを指します。
耐用年数とは、国が定めている資産を使える期間のことです。
主に減価償却を計算するために使われますので、耐用年数を過ぎていたとしても住めなくなるわけではありません。
古い木造住宅でも基礎がしっかりして定期的なメンテナンスを怠っていなければ、耐用年数を過ぎても何の問題もなく住み続けることができます。
築22年以上の木造住宅など珍しくはありませんし、自分たちが居住する以外の方法でも十分活用が可能です。
(2)リノベーションして賃貸として貸し出す
資産価値のない家でも居住することに関して問題はありませんので、賃貸として貸し出すことも可能です。
しかし、築年数が経過している家なので、リノベーション工事を行う必要があります。
近年では、古民家風の家に居住することを希望する方も増えてきていますので、あえて手を加えず、古さを前面に押し出したリノベーションで費用を抑えることも可能です。
古民家風にしてもまったく費用をかけないで貸し出すことは難しいでしょう。
賃貸として貸し出す場合には当初にリノベーションのコストが一定額かかることを認識しておきましょう。
賃貸として貸し出すことにより、家賃収入を得られます。
賃貸収入によって、維持管理にかかるコストをまかなえるといったメリットも得ることが可能です。
(3)解体、更地にして駐車場などとして活用する
賃貸需要がないエリアにある資産価値のない家で、土地だけでも所有しておきたい場合は、建物を解体し、更地として活用する方法も挙げられます。
更地としての活用方法として挙げられるのが駐車場経営です。
維持管理のコストがあまりかからずに、収入を上げることができます。
また、すぐに別の方法に切り替えがしやすい点も駐車場にしておくメリットです。
建物を維持していると、固定資産税や維持管理にかかる修繕費用などのコストがかかってきます。
コストがかかり、収入を生まない建物を処分することで定期的な支出を抑え、土地を活用して収入を得るといった活用方法も効果的です。
(4)売却して現金化する
特に思い入れもなく活用方法が限定されてしまう場合は、売却して現金化しましょう。
資産価値がない家なので建物自体に価格が付くことはほとんどありません。
しかし、築年数が経過しても土地の価格は変化しませんので、土地代として売却することが可能です。
建物や土地を活用するにあたり、土地だけになっても固定資産税の支払いは毎年必要になります。
特に、建物が建っていない土地の場合、宅地並み課税の適用から外れてしまいますので、固定資産税が高くなってしまいます。
リノベーションして賃貸に出す場合や、解体、更地にして土地活用する場合、最初の工事代が必要です。
売却ならばコストをかけずに売却し、現金化することができます。
効果的な活用方法のひとつといえるでしょう。
資産価値のない家を相続した場合のデメリットは?
資産価値のない家を相続した場合、前述したように最もやってはいけないことがほったらかしにすることです。
ここからは資産価値のない家を、相続してしまい活用方法が見つからず、ほったらかしにするデメリットについて解説します。
(1)維持管理費や税金がかかる
資産価値のない家で活用方法が見つからなくても固定資産税などの税金が発生します。
固定資産税とは、毎年1月1日時点の所有者に対して課税される地方税のひとつです。
誰も活用していないのに納税のコストだけはかかってきますので、場合によっては大きな負担となるでしょう。
また、資産価値がない家で誰も住んでいなくとも維持管理のコストが発生します。
庭木の除草や破損個所の修理、光熱費の基本料金などさまざまな維持管理費を負担しなければいけません。
これらのコスト負担が大きなデメリットのひとつです。
(2)老朽化による倒壊リスク
資産価値のない家をほったらかしにしておくことで急速に劣化度合いが進行します。
あちこちにダメージを負ってしまい、一気に老朽化してしまうでしょう。
建物が老朽化することで倒壊に関する大きなリスクを負ってしまいます。
廃墟化するまでほったらかしにしておくケースはそう多くはないでしょう。
自然に建物が崩壊することはほとんどありません。
しかし、老朽化が進むと、ちょっとした風災害や地震などで倒壊してしまう可能性が考えられます。
倒壊してしまうと、近隣建物や、通行人などに被害を与えてしまい、大きな損害となることもありますので、倒壊リスクの危険性が増す点も大きなデメリットといえるでしょう。
(3)不動産価格の下落
資産価値がない家ですので、基本的に建物としての市場価値はほとんどありません。
しかし、住み続けることはできますので、建物価格はゼロとして売却することが可能です。
ほったらかしにしていると、新たな購入者が現れたとしても居住することもできなくなるでしょう。
住むことができない状態になっている場合、売却したとしても解体費用などを見越しての売買となるため、売却価格の下落につながります。
つまり、建物の価値がゼロではなくマイナス評価されてしまうのです。
維持管理がきちんとできていない資産価値のない家は、不動産価格をマイナス評価させる可能性がある点もデメリットです。
(4)近隣との関係性悪化
隣の建物がほったらかしにされている空き家だったらどのような感覚を持つのでしょうか。
不審火が起こる可能性や、不審者が入り込む不安、前述した老朽化した家の倒壊リスクなど決していいイメージを持つものではないでしょう。
特にほったらかしの状態となっている家だと、所有者に対して悪い感情を持つのは仕方のないことかもしれません。
ほったらかしにしている資産価値のない家がある近隣住人との関係性悪化もデメリットのひとつです。
資産価値のない家を相続放棄する際の注意点
資産価値のない家を相続してもうまく活用する自信がない場合などに考えられる対策として相続放棄が挙げられます。
しかし、相続放棄を安易に選択してしまうと、のちのち後悔してしまうかもしれません。
ここからは、資産価値のない家を相続放棄する際の注意点について詳しく解説します。
(1)相続放棄の期間は決まっている
相続放棄はいつでもできるわけではなく、期限が設定されています。
相続放棄の期限は自分に対して相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に相続の種類を決めなければいけません。
相続の種類には単純相続、限定承認と相続放棄の3種類があります。
しかし、場合によっては3ヶ月では決めることができない場合も考えられますが、裁判所に対し、相続放棄の期間延長の申し立てを行うことで相続の判断を延長することも可能です。
3ケ月あるから時間的に余裕がありそうですが、相続財産の決定や相続人同士の遺産分割協議などやるべきことも多く、あっという間に過ぎてしまいます。
あまりじっくりと検討できる時間はない点を認識しておきましょう。
(2)すべての財産を放棄しなければいけない
相続放棄を行う場合は、資産価値のない家だけを相続放棄することはできません。
自らに相続される財産はすべて放棄しなければいけない点に注意が必要です。
資産価値がない家でもマイナスの財産ではありませんが、現金やそのほか価値がある財産も一緒に相続する権利を放棄しなければいけません。
(3)管理義務の放棄は別の手続きが必要
資産価値のない家を相続放棄すると、その他の相続人で分割することになりますが、あなた一人だけしか相続人がいない場合、相続放棄された財産は国庫に帰属されます。
相続財産が国庫に帰属した場合、管理義務だけあなたに残ってしまう場合があります。
しかも、長期間にわたり管理義務だけは残ってしまうことも多く、せっかく相続放棄したのに意味がなくなってしまうでしょう。
管理義務まで放棄したい場合は、別途裁判所に相続財産管理人の専任手続きを行わなければいけません。
管轄の家庭裁判所へ選任の申し立てを行い、弁護士などに依頼する必要があります。
集める書類も多く、費用もかかりますが、相続放棄しただけでは本来の目的が果たせない場合がある点を理解しておきましょう。
(4)相続関係をクリアにしておくこと
資産価値のない家を相続放棄する場合、他の法定相続人がいる場合は、その他の方々が相続することになります。
資産価値がない家を相続してしまうとなると、他の法定相続人も迷惑と感じるかもしれません。
相続人同士で事前に集まって、相続放棄する旨を話しておきましょう。
相続放棄したために家族や身内と不仲になってしまうことにもなりかねません。
資産価値のない家を相続放棄する判断基準は?
相続放棄する場合は、全ての相続する財産を放棄しますので慎重な判断が必要です。
ここからは、相続放棄する際の判断基準について解説します。
(1)相続する財産とのバランスを検討する
相続する財産とのバランスを考慮しましょう。
相続する財産が大きければ、資産のない家の維持管理費用に多少費用がかかっても所有しておく方がメリットは大きくなります。
資産価値がない家だけを相続する場合は、相続しても費用だけ負担し続けることになりかねませんので相続放棄の選択も十分考えられることです。
資産価値のない家だけを相続するか、他にも財産があるのか、全体的な相続財産とのバランスを考慮しましょう。
(2)現金化できるかどうかを検討する
売却して現金化できるかどうかもポイントです。
資産価値のない家でもマイナスの財産ではなく、売却することで現金化することができます。
しかし、実際に売りに出した際、にいつまでたっても売れないケースも考えられますので相続前に現金化できるかどうかをしっかりと検討しましょう。
(3)所有することが経済的にプラスになるかを把握する
資産価値のない家を相続したとしても前述したように経済的なコストを負担しなければいけません。
しかし、いずれ自分たちが住む予定があれば、のちのち大きなメリットとなります。
所有することで経済的にプラスとなるかどうかをしっかりと検討しましょう。
ただ維持管理費と税金を支出するだけの財産であれば、所有していてもあまり意味がありません。
近い将来に活用する予定があるかどうかなどを一度、相続人間で話し合うのもおすすめです。
まとめ
資産価値のない家を相続してしまうと、支出ばかりが重なってマイナスとなるばかりではありません。
活用方法次第では、収益につながる可能性もあります。
しかし、所有していても経済的な負担になる場合は、相続放棄なども事前に検討しておきましょう。