賃貸併用住宅は相続税対策に有効?メリット・デメリットについて解説
所有している土地の有効活用として賃貸住宅経営が挙げられます。
家賃収入による安定収入や節税対策など、いくつかのメリットが見込めます。
しかし、自分たちの住まいも確保したいときには賃貸併用住宅がおすすめです。
この記事では、賃貸併用住宅経営による相続税対策の効果などについて詳しく解説しましょう。
賃貸併用住宅とはどのような建物?
まずは、賃貸併用住宅の特徴などについて詳しく解説します。
(1)賃貸併用住宅の概要
賃貸併用住宅とは、自分たちの自宅と賃貸として貸し出す部屋がひとつの建物にある建物のことを指します。
賃貸の部分は、居住用の部屋とは限らず、店舗や事務所といった商業系も含み、自宅としての仕様と賃貸経営の両方を可能とした物件です。
賃貸部分の部屋を、自宅として使用しているケースや、最上階などに自宅仕様の部屋をつくっているケースなど物件によって異なります。
所有している土地が広く、自宅だけでは固定資産税などの負担が大きい場合や、賃貸の需要が高いエリアなどで利用されているケースが多いといえるでしょう。
(2)住宅ローンを利用しての建築が可能
賃貸住宅を建築や購入などにより取得する場合、価格が高いので、金融機関からの融資を受けて取得するケースが多いといえるでしょう。
賃貸住宅の建築や購入では、住宅ローンを利用するのではなく、不動産投資ローンを利用して賃貸住宅を取得します。
賃貸併用住宅の場合、自宅部分が全体の50%以上で返済期間が10年以上だった場合、住宅ローンの利用が可能です。
一般的に、住宅ローンの方が不動産投資ローンより金利が低いので、総返済額は住宅ローンを利用した方が少なく済みます。
賃貸住宅だけを建てるよりも、結果的にコストが安く済ませられる点も賃貸併用住宅の特徴です。
(3)家賃が入り、自宅の返済ができる
賃貸住宅経営は、融資によって借り入れた金額を毎月の家賃収入から返済し、賃貸経営に必要なコストを支払った残りが収益となります。
賃貸併用住宅も同様で、家賃収入から自宅部分にかかった費用も返済可能です。
一般的な賃貸住宅よりも収益を生まない自宅部分まで返済しますので、収支はどうしても賃貸併用住宅の方が悪くなってしまいます。
しかしながら、給与所得などがない場合でも自宅の返済を不動産収入でできる点は賃貸住宅の経営にはない特徴といえるでしょう。
(4)住宅ローン控除の利用が可能
前述したように、賃貸併用住宅で不動産投資を行う場合は、住宅ローンを利用することが可能です。
住宅ローンが利用できるということは、住宅ローン控除の対象となります。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して物件を購入した場合、一定の要件を満たすと年末の住宅ローン残高から0.7%が所得税から控除される制度です。
賃貸併用住宅においては、前述したように賃貸部分よりも住宅部分の方が多いことが前提となります。
賃貸併用住宅で住宅ローンを利用し、住宅ローン控除の対象としたい場合は、住宅部分の割合に注意しておきましょう。
賃貸併用住宅の相続面におけるメリットとは
賃貸併用住宅は相続面においてもいくつかのメリットがあります。
ここからは、賃貸併用住宅の相続面におけるメリットについて詳しく解説しましょう。
(1)現金よりも価値を下げることができる
不動産を購入することにより、相続時には、相続税評価額で計算が可能です。
現金で保有していると相続時には、現金の価格で評価されます。
相続税評価額は一般的に時価の8割程度で算出されますので、遺産総額の減額が可能です。
賃貸住宅経営を行う方は相続税を目的としている方も多く、融資された金額は、債務として遺産総額から差し引くこともできます。
賃貸併用住宅も同様の効果をもたらすことから、相続税対策としてメリットを受けられる点が挙げられるでしょう。
(2)小規模宅地の特例で評価を大幅減
先ほど、賃貸併用住宅の取得によって現金で保有するよりも、遺産総額を減らせるメリットについて解説しました。
賃貸併用住宅の場合、更に評価を下げられるケースがあります。
小規模宅地の特例が適用できると、相続税評価額が最大8割まで減額が可能です。
一定の要件を満たす必要がありますが、最大で8割まで減税されますので、相続面において非常に大きな効果をもたらします。
330㎡までの広さであることなど要件を事前に把握しておくといいでしょう。
(3)相続時に収入が得られる不動産を取得できる
賃貸併用住宅ですので、自分たちの住まいとして利用できるうえに、家賃収入を得られます。
相続によって、収益を得続けることができる不動産を取得可能です。
賃貸の需要が高いエリアで、交通の便が良い場所にある建物だと、長期的な安定収入も見込め、資金に困ったら売却して現金化することも可能です。
注意する必要があるとすれば、家賃収入によって所得が増えますので、所得税や住民税の額が大幅に増えるケースが想定されます。
また、修繕費用などまとまった資金が必要になるケースもありますが、今後の収益確保が見込めるメリットは大きいといえるでしょう。
賃貸併用住宅のデメリットとは?
賃貸併用住宅には相続対策に対してメリットがありますが、デメリットもしっかりと理解しておく必要があります。
ここからは、賃貸併用住宅の経営などにおけるデメリットについて解説しましょう。
(1)空室のリスクが付きまとう
賃貸併用住宅だと、家賃収入により自分たちの住まい部分についても返済ができる点を挙げました。
しかし賃貸物件は、いつでも満室という訳ではなく、空室になってしまうケースもあり、想定の家賃収入を得られない可能性も考えられます。
場合によっては、空室が多く、家賃収入が得られないため赤字となってしまい、自己資金から返済しなければいけないかもしれません。
融資を受けている金額次第では、毎月の返済金が高額で、家賃収入以外では返済できないケースも想定されるでしょう。
賃貸経営には常に空室リスクが付きまといますが、賃貸併用住宅でも同じような空室リスクを抱えなければいけません。
(2)入居者のクレームが直接届くことがある
通常の賃貸経営の場合、管理会社に管理を依頼しておくとクレームなどが起こった場合、すべて管理会社が間に入り対処します。
オーナーと入居者が直接話すケースはありません。
しかし、賃貸併用住宅の場合、オーナーが住んでいることがわかっているケースが多いので、住まいのトラブルなどが起こった場合、入居者のクレームが直接届く場合があります。
基本的には、管理会社に連絡してもらうなどといった対応をお願いすることになりますので自らが直接動く必要はありません。
しかしクレームなどを直接受けるので、精神的にいい気分はしないでしょう。
管理会社がうまく対処できなければ、入居者との関係性が悪くなってしまう可能性も考えられます。
(3)建替えや売却がしにくくなる
建物の劣化などが起こり、家賃が下がるケースや空室が多くなるケースが考えられます。
想定した収益が得られなくなった場合、売却を検討しますが、賃貸併用住宅の需要は、あまり多くはありません。
賃貸併用住宅は、賃貸と住居の両面を持ちますが、住居部分が収益の低下要因となってしまいます。
そのため、純粋に不動産投資のみを検討する方には収益面で満足ができないケースが多く、売却できにくいのが現状です。
また、建て替えにおいても、自宅が無くなりますので、新たな住まい探しが必要になります。
賃貸収益と自宅という、両方のメリットがある反面、不動産投資物件としては物足りなさを感じるケースがある点がデメリットといえるでしょう。
(4)自宅建築よりも大きな資金が必要
自宅を建築するよりも大きな資金が必要な点もデメリットといえます。
一般的な自宅を建てるだけでも、まとまったお金が必要となり、多くのケースで住宅ローンを利用しています。
賃貸併用住宅となると、自宅だけではなく、賃貸部分の建築も含みますので高額な資金が必要です。
自宅建築のみ以上に融資を利用するケースが増加しますので、自己資金も大きな金額を準備しなければいけないでしょう。
賃貸併用住宅で失敗しないポイントとは
ここまでは、賃貸併用住宅の特徴やメリット、デメリットについて解説しました。
ここまでの開設を踏まえ、賃貸併用住宅で失敗しないポイントについて解説します。
(1)収益性の高いマンションでの建築を検討する
前述しましたが、賃貸併用住宅では、住宅部分の割合が50%以上だと住宅ローンの利用が可能です。
不動産投資ローンより金利が低い分有利になりますが、賃貸部分が少ないので収益面においてあまりメリットが生まれません。
そこで、思い切って収益性を重視したマンションタイプの物件を建築するのもおすすめです。
賃貸部分を増やすと、収益性は大幅に向上しますので、住宅部分の返済リスクを減少させられます。
設計も比較的自由度が増し、安定した入居率も見込めるでしょう。
賃貸部分を増やすと、将来的な売却などもやりやすくなり、出口の方法を増やせます。
収益性を重視したマンションタイプでの建設により、将来的な展望が見込めるでしょう。
(2)事前に収支を把握しておく
賃貸併用住宅も賃貸部分の収益が非常に重要なポイントです。
事前に収支を把握しなければ、自宅部分も賃貸部分の収益で返済しなければいけませんので、返済に苦しんでしまうかもしれません。
通常の賃貸物件よりも収支はよくありませんので、より収支を分析しておく必要があります。
空室率なども少し厳しめに設定し、築年数が経過した時の家賃の減少率なども含めた上で、現実的な収支計画書を作成しましょう。
収益はあまり上がらなくとも、最低でも返済できる金額だけは確保できるようにしておく必要があります。
(3)管理面のコストをなるべく抑える
何度か繰り返しになりますが、通常の賃貸物件よりは収支はよくありません。
近年の賃貸経営では、サブリース会社が物件自体を借り上げ、転貸して経営するサブリース契約が増えています。
サブリース契約は、空室があっても物件を借り上げていますので、空室に悩むことはありません。
しかし、通常の賃貸経営よりも収益性が低いので賃貸併用住宅だと、収益性が非常に悪くなってしまいます。
賃貸併用住宅の場合は、サブリースよりも一般管理を利用することで、管理料もかかるコストを抑えられるでしょう。
不動産経営に対し経験がある方ならば自主管理により、管理料のコストを抑えることも可能です。
(4)実績のある管理会社をパートナーにする
賃貸併用住宅は、数自体が少ないので、不動産管理会社も賃貸併用住宅の管理が未経験の場合があります。
賃貸併用住宅は、通常の管理では異なり、オーナーが同じ建物にいますので前述したように入居者のクレームが直接オーナーに届くといったデメリットが考えられます。
通常の管理とは少し異なるケースもありますので、実績のある管理会社をパートナーにすることで、余計な負担がかかりにくくなります。
まとめ
賃貸併用住宅は自宅だけではなく、賃貸経営も兼ねる不動産です。
特に相続対策にも効果的ですので、上手く活用できると大きなメリットを得ることも可能です。
しかし、本記事で解説したように、いくつかもデメリットもあります。メリットとデメリットをしっかりと理解し、不動産経営にはどの方法が一番いいのかをしっかりと理解しておきましょう。