二世帯住宅を減築する方法と費用相場・一世帯に減築するメリットと注意点も解説
二世帯住宅として建築されている住まいを、ライフスタイルの変化により、一世帯に減築したいと考えている場合、そもそも減築は可能なのかが気になります。
この記事では、二世帯住宅を一世帯住宅に減築する方法やメリット、費用相場といった点について詳しく解説しましょう。
二世帯住宅を一世帯住宅に減築することは可能?
ここからは二世帯住宅を一世帯への減築が可能なのかといった点について解説します。
(1)リフォームによる二世帯住宅の減築は可能
二世帯住宅を使用しなくなる要因として、親世帯と同居していたが、親が亡くなった場合やケアホームに転院することが考えられます。
子供世帯は、急な転勤などが挙げられるでしょう。
現状は二世帯住宅の仕様になっていたとしても、リフォームにより一世帯住宅への減築は可能です。
しかし、二世帯住宅といっても完全に分離したものや、共有スペースがある二世帯住宅、同居といった形式をとっている形式などさまざまです。
ここからは、3つの二世帯住宅のタイプから減築の方法について解説します。
(2)分離した二世帯住宅を減築する方法
入り口からそれぞれ別で完全に分離されている二世帯住宅は、一世帯に減築する場合、大幅なリフォームが必要になる場合があります。
キッチンもお風呂もそれぞれ設置されているため、間取りの変更も必要となるでしょう。
2ヶ所あるキッチンなど、それぞれの部屋を1ヶ所にまとめることができると、たくさんの部屋が確保できるとともに、有効活用できるスペースが広がります。
ただし費用面も大幅にかかり、場合によっては新築の建替え並みに費用が発生するかもしれません。
設備を残した状態になってしまうと、使わない部屋など無駄なスペースが増えてしまいます。
費用と活用方法のバランスを取る必要があるでしょう。
(3)共用するスペースがある二世帯住宅を減築する方法
部分的に共用スペースを設置している場合は、共用として使用している設備の数によって、リフォームの内容が異なります。
共有として使用している設備が多ければ、一世帯に減築するリフォームもそこまで費用がかかりません。
一般的に部分共用の二世帯住宅の場合、キッチンやお風呂などは共用されているケースが多く、分離しているのはトイレが考えられます。
トイレを撤去して、小さな書斎部屋にすることもできるでしょう。
完全にトイレを壊してしまい、廊下を広く取るといったリフォームも考えられます。
動線の流れなどをふまえた効率的なリフォームが必要です。
(4)同居している二世帯住宅を減築する方法
完全に同居しているタイプの二世帯住宅ならば、ほとんどリフォームをする必要がありません。
考えられるリフォームとしては、使わない部屋が多くなってしまうので、ひとつの部屋を広くする方法が挙げられます。
部屋を無くしてリビングなどを広くすると、ゆったりとしたリビングで生活できる環境とすることも可能です。
設備の追加や撤去などもやる必要がほとんどありませんので、安価なリフォームで一世帯に減築しやすいタイプであるといえるでしょう。
二世帯住宅の減築は現実的なのか?
減築といった言葉を聞く機会がここ数年増えてきています。
今までは、二世帯住宅の活用が無くなった場合は、建替えするのが一般的でした。
ここからは二世帯住宅減築の現実性について解説します。
(1)親子の二世帯住宅は減少し、合理的な生活ができる
今後、少子化における人口減少により、住まいの形がどんどんコンパクト化されています。
今までの住まいのスタイルとしては、「広く、大きく」といった考え方でしたが、近年は合理的な生活を好まれる方が増えたので、広い住まいの需要が減っています。
核家族化がどんどん増えており、親と同居するといった世帯が多くありません。
親子での二世帯住宅という生活スタイルは少なくなっていますので、もともと二世帯住宅であった住まいも減築して一世帯だけが住むスタイルに変わっています。
住む人が多くなればなるほど、快適な環境を求めるスタイルは変わります。
特に子供世帯と親世帯の同居となると、世代間のギャップによる求める快適さの違いにより、トラブルの原因にもなりえるでしょう。
一世帯がコンパクトな住まいで生活することで、合理的な生活が可能となり、また合理的な生活を求めているので減築の考え方が多くなっているといえます。
(2)高齢者だけの住まいが増えており、二世帯住宅は効率的ではない
少子高齢化における人口減少と、核家族化が進んだことにより、高齢者だけの住まいが増えています。
高齢者の現状として、平成25年に総務省が調査した状況によると、居住世帯の5,210万世帯のうち65歳以上の単身世帯は約550万世帯です。
そのうち75%にあたる360万世帯が持ち家で居住しています。
つまり、現状では、二世帯住宅を選択しているケースは非常に少なく、子供世帯と親世帯は完全に分離して生活しているケースが多いといえます。
配偶者が亡くなったとしても子供たちと同居するケースがあまり多くはないために、高齢者の単身世帯が増えているといえるでしょう。
二世帯住宅は、現在のライフスタイルでは効率的ではないことがわかる調査結果といえます。
(3)空き家対策の一環として減築が効果的
少子高齢化により、近年社会問題となっているのが空き家です。
空き家が年々増加しており、1998年に182万戸あった空き家が2018年には2倍近くの349万戸まで増加しています。
今後も空き家の数が増加し続けているといわれていますが、空き家となる理由として、ライフスタイルの変化が挙げられます。
今までは、「広く、大きく」といった考え方の住まいが求められてきましたが、近年ではコンパクトで効率的な住まいが増えています。
昔ながらの住居は、今のニーズに合っていないため、あまり流通されず空き家のまま残っているのも空き家が増えている理由のひとつです。
減築などにより、一世帯だけが効率的に生活できる住まいが増えると、昔ながらの住居も流通しやすくなり空き家対策につながります。
(4)減築は、今後の選択肢として増えていく傾向
減築は住居に限らず、商業施設など、さまざまな建物で検討材料となっています。
今後は人口の減少により、住居だけではなく商業などビジネスに関する需要も減少していく傾向です。
築年数が経過した物件が増えてくることもあり、リノベーション時に減築される建物が増えてくると想定されています。
築年数の経過した建物は、旧耐震基準で建築されているケースもあり、耐震補強よりも減築が効果的な手法となるケースもあります。
都市全体がコンパクト化していく方向性の中、減築も今後の方向性に適した手法といえるでしょう。
二世帯住宅を一世帯住宅に減築するメリットとは?
ここからは、二世帯住宅を一世帯住宅に減築するメリットについて解説します。
(1)平屋式に減築すると、動線の改善につながる
2階建ての二世帯住宅を平屋式の一世帯住居として1階のみで生活することになります。
そのため、2階建てのときと比較すると動線の流れが良くなり、生活環境が改善する場合があります。
2階へ上がる必要性もなくなりますので、まさにコンパクト化された住まいで、機能的な生活が得られるでしょう。
平屋式で一世帯に減築する大きなメリットのひとつです。
(2)耐震性が強化される
平屋式に減築すると2階建ての二世帯住宅よりも、耐震性が強化されます。
2階建ての二世帯住宅となると、大地震が起こってしまうと、2階の重みで家自体がつぶれてしまう可能性があります。
平屋に減築することで、耐震補強することなく耐震性が強化されるといえるでしょう。
特に、昭和56年以前に建築された建物は旧耐震基準に沿って建てられています。
震度5強の地震に耐えられる程度の強度です。
近年、震度7レベルの地震も複数回起こっていることから、旧耐震基準の建物だと不安感が高まってしまいます。
減築により平屋式になると、自然と耐震性の補強につながる点もメリットのひとつです。
(3)固定資産税が抑えられる
建物や土地などの不動産を所有している場合、必要になる維持管理のひとつとして挙げられるのが固定資産税です。
不動産の所有者に対して課せられる地方税のひとつで、固定資産税評価額の1.4%が課税されます。
固定資産税評価額を算出するにあたり、建物の場合は延べ床面積も評価額を決定する要素のひとつです。
延床面積が広ければ広い程、固定資産税評価額は高くなりますので、減築すると延べ床面積が少なくなり、固定資産税を抑える効果をもたらします。
維持管理費が抑えられる点も大きなメリットといえるでしょう。
(4)維持管理費用の抑制につながる
費用を抑えられるのは固定資産税だけではありません。
減築によって2階部分を無くしてしまうと、改修工事などにおいて足場をかける必要が無くなりますので、修繕コストが大幅に下げられます。
そもそも2階部分が無くなりますので、修繕が発生する頻度が少なくなり、維持管理における修繕費の支出が大幅に抑えられるでしょう。
この点も大きなメリットです。
減築にかかる費用相場と注意点
ここからは、減築した場合の費用相場や注意点について詳しく解説します。
(1)二世帯住宅から平屋一世帯住宅に変更する際の費用相場
2階建てからの二世帯住宅から、平屋の一世帯住宅に変更する場合の費用相場は減築を検討する方にとっても非常に気になるポイントではないでしょうか。
2階建てを平屋に減築する場合、一般的なリフォーム費用として1,000万円~1,200万円程度が費用相場です。
建物の状況によってはさらに費用がかかる可能性もあります。
場合によっては建て替えとほとんど費用が変わらないケースも考えられますので、建て替えも含めての検討がオススメです。
(2)減築する際の注意点
減築する際の注意点として、平屋の間取りや前述した動線に対する配慮も必要です。
高額な費用をかけてリフォームしますので、単純に減築して部屋数を少なくするのではなく、快適な空間をつくりだせる間取りにしなければいけません。
天井だけを繋げ、開放感を演出してもいいでしょうし、吹き抜けを設けてもいいでしょう。
また、リビングを広めに間取りを変更するのも快適さがアップします。
一世帯だけのコンパクトな減築になりますので、動線も効率よい配置などをしっかりと検討しましょう。
(3)減築の実績がある工務店への依頼がポイント
前述しましたが、近年注目されているとはいえ、減築はまだ完全に浸透しているわけではありませんので、まだ減築をしたことがない工務店が多いのが現状です。
減築を検討する場合は、いくつかの工務店の中でも、減築の経験がある工務店に依頼するのがオススメです。
減築が初めての工務店に依頼すると、工事がスムーズに進まず、工期が延びてしまう可能性も考えられます。
いくつかの工務店に見積もりを依頼して、実績などで比較するのもいいでしょう。
まとめ
今後の人口減少を受け、減築といった手法が多く取り入れられる可能性が高くなります。
特に二世帯住宅を一世帯住宅に減築することで、コンパクトな住まいとなり、単身世帯でも快適な生活ができるでしょう。
二世帯住宅を減築すると、さまざまなメリットがありますが費用もかかります。
また、減築を手掛けたことがない工務店なども現時点では多いので、いくつかの工務店から比較するとよいでしょう。