底地権を売却する際の計算方法・売却時の注意点も解説
地代をもらっているが、固定資産税代にもならないので底地を売却して現金化したい」
「地代をもらっているとはいえ、使えない土地を残しておきたくないから売却したい」
底地を手放したいけどなかなかできなくて困っているといった方も多いのではないでしょうか。
この記事では、底地権の特徴や売却しにくい理由、底地権の計算方法などについて詳しく解説します。
底地権の特徴と売却しにくい理由
そもそも底地とはどのようなものかを知らないといった方も多いのではないでしょうか。
ここからは底地権の特徴や、売却しにくい理由などについて解説します。
(1)底地とは
底地とは土地の所有者が借主に貸している土地を指します。
底地となるのは借主が借りている土地に建物を建てる場合です。
特に建物などを建築していなければ、その土地は更地となります。
借主が建物を建築可能な状態で土地を貸した場合に底地となりますので、ただ土地を貸しただけでは底地とはなりません。
また土地所有者から見ると底地となる土地は借主から見ると借地と呼称が変わる点も特徴のひとつです。
底地は、通常の土地とは異なり売却しにくいといわれています。
売却しにくい理由について、次の項目から4点を解説しましょう。
(2)自分の土地が自由に活用しにくい
所有している土地に建物を建てることを認めた上で貸し出すのが底地の特徴ですので、一旦賃貸してしまうと所有者の自由に活用ができません。
借地人がすでに建物を建てて活用していますので、自分自身での土地活用は不可能です。
さらに、底地となっている土地を自分たちが活用したいと思っても借地人に契約解除を一方的に申し渡せません。
土地の借地人は借地借家法によって保護されており、借地人の権利が強いので、土地の所有者である底地人からの解除が非常に難しくなっています。
底地となっている土地を売却したとしても購入者は自由に土地を活用することができませんので買い手がほとんどいないというのが現状です。
(3)収益性が低い
土地の所有者である底地人は地代を得ることを条件に土地を貸出します。
しかし、借地契約を締結する際の地代は、あまり高くはないのが一般的です。
さらに底地人は、固定資産税や都市計画税を納税しなければいけません。
固定資産税や都市計画税が高額になってしまうと、地代収入より高額になるケースもあり、底地が赤字となるかもしれません。
さらに地代は簡単に上げられませんので、赤字の状態が長く続くことになってしまいます。
赤字になっている土地を購入しようとする方はほとんどいません。
赤字ではなくてもあまり収益が上がらない底地を購入しようとする方は極端に限られてしまうでしょう。
これも底地が売却しにくい理由として挙げられます。
(4)借地人とのトラブルが起こりやすい
底地権の所有者である土地所有者と借地人は、長期間の契約により、貸主と借主の関係が長く続きます。
長い契約の間に、地代の交渉や更新料、契約内容などでのトラブルが発生するかもしれません。
事例を挙げると、固定資産税や都市計画税が上がってしまい赤字となった場合、地代の値上げ交渉時などはトラブルになりやすくなります。
借地人がすぐに了解してくれれば問題ありませんが、更新の拒否や、条件の追加などさまざまな交渉が必要になるかもしれません。
双方が意見を主張しますのでトラブルの原因になりやすく、最終的には裁判になるといったケースも考えられます。
借地人との関係性構築の面からも購入希望者が少なく売却しにくい理由となるでしょう。
(5)底地は担保にしにくい
底地の購入希望者は多くはないというのは、ここまでの事例でもわかるのではないでしょうか。
さらに売却しにくい理由として挙げられるのが、せっかくの購入希望者が現れたとしても融資が付きにくい点です。
不動産の売買は高額になりやすいので、自己資金だけではなく融資を利用した売買が多いのが特徴です。
しかし、底地となる土地の担保評価はほとんど担保価値がないと査定されるケースが多いので審査が通らず購入ができません。
底地が担保価値として評価されない点も底地が売却しにくい大きな理由といえるでしょう。
底地権を売却するときの売却先とは
底地の購入者は非常に少ないのですが、少しでも高い条件で売却するには誰に売却したらいいのでしょうか。
ここからは、底地権の売却先は誰にすればいいのかといった点について解説します。
(1)借地人へ売却
底地の売却は当然ながら需要が高い方に売却する方が高値での売却に期待できます。
底地の需要が高い方として挙げられるのが借地人です。
借地人は土地を利用する代わりに、毎月地代を支払っています。
建物を建てている借地を購入することにより、地代の支払いが無くなります。
土地と建物を所有していた方が、のちのち建物を売却する際などに非常に有利となるため、底地の売却を検討する際には借地人に声をかけてみるといいでしょう。
しかし、地代の支払いが安いと土地の購入に対しメリットを感じられず売却に応じてくれない可能性も考えられます。
地代とのバランス次第となるでしょう。
(2)第三者に売却
底地の売却はあまり魅力的な地代でもない上に土地活用も制限され、融資も付きにくいことから、有望な売却先が見つかりにくいと前述しました。
しかし、借地契約が長期にわたることから、安定した地代収入が得られることや、評価が低いため、相続対策などにも利用ができるといったメリットもあります。
安定した地代収入を魅力と感じる方や相続対策などを検討している方などには、底地の購入を前向きに検討している方がいらっしゃる可能性もあるでしょう。
地代次第の面はありますが、固定資産税などの負担をしても、収益が上がるような底地である場合は、不動産投資家などが購入してくれる場合もあります。
(3)買取業者に売却
どうしても底地を手放したい場合などは、買取業者などへの売却も検討可能です。
買取業者とは、不動産会社自身が買主となって、不動産を購入する業者を指します。
買取業者に底地が売却できると、価格は相場より低くなりやすいのですが、現金化のスピードが非常に速いことや仲介手数料がかからないといったメリットが挙げられます。
高値での売却はほとんど期待できません。
しかし、地代収入が高い場合や、契約期間の満了が近づいている場合などに関しては、思った以上の高値で買い取るケースもありますので検討材料のひとつとなります。
底地権の計算方法とは
底地の価格は、更地と比較するとどうしても低い価格設定となってしまいます。
ではどのように底地価格を算出するのでしょうか。
ここからは底地権の計算方法について詳しく解説します。
(1)相続税路線価から計算する
相続税などを算出する際、不動産の算出に用いられるのが相続税路線価です。
底地の価格を算出する際に用いられるのは以下の計算式です。
更地状態での相続税評価額×(1−借地権割合)
例えば、相続税評価額が1億円、借地権割合が70%の土地で底地の計算をすると、1億円×(1-70%)=3,000万円となります。
借地権割合はエリアによって異なりますので、国税庁の公式サイトなどで確認するといいでしょう。
(2)取引事例から比較して計算する
近隣の取引事例を比較しながら算出する方法が挙げられます。
一般的な土地の売買において価格を算定する場合も近隣の取引事例などを参考に価格を算出するケースが多いといえるでしょう。
しかし、底地の取引事例において、ほとんど数はありません。
更地の状態で売却されている近隣の土地をいくつか比較した上で底地にした場合の価格を算出するといいでしょう。
(3)公示価格から計算する
公示価格とは、国土交通省が公示する土地の基準となる価格です。
毎年3月に国土交通省土地鑑定委員会が公示する標準値価格となります。
不動産鑑定などにおいても基準となる価格ですが、実際の土地価格とは若干異なるケースも多いのであくまでも参考のひとつとして見ておくといいでしょう。
売買価格の8割程度で取引されているのが一般的な事例です。
公示価格は一般的な基準となりますので、底地価格よりは高い金額となります。
これらの算出方法を複数用いた上で底地価格を査定するのがオススメです。
底地権を売却する場合の注意点とは
ここからは底地権を売却する場合の注意点について詳しく解説します。
(1)借地人への通知トラブルを防ぐ
底地を売却した場合、原則として借地人の同意は必要ではなく、通知などをする必要もありません。
しかし、通知を怠ってしまったことで借地人の気分を害してしまい、新たな所有者と契約を締結する際に感情的なしこりからトラブルになる可能性もあります。
原則として借地人への通知は必要ないとしても、売却時に契約者が変わるのは借地人にとっても大きな問題です。
事前に通知しておくことで今後起こりうるトラブルを未然に予防することができるでしょう。
(2)底地権の売却は経験豊富な不動産会社へ依頼する
底地権の売却は、事例があまり多くはないことから今まで底地の売買経験がない不動産階会社も多く、依頼しても不動産会社から断られる場合もあるでしょう。
さらに、底地の売買は借地人も絡むことから、慎重にしなければ余計なトラブルを引き起こしてしまうかもしれません。
底地の売却を不動産会社に依頼する場合は、底地の売却経験があり、実績が豊富な不動産会社に依頼するのがオススメです。
さらに買主として不動産会社が購入する場合などは、実績や経験に基づき、スムーズな取引を勧めますので安心感が高まります。
どの不動産会社に依頼するかをしっかりと比較して判断しましょう。
(3)底地権を共有している場合は、全員の同意が必要
相続などにより底地を共同で所有しているケースもあります。
土地が共有名義の場合は底地に限らずトラブルになりやすく、できる限り共有名義は避けたいところです。
もし共有名義の土地を売却したい場合、底地に限らず共有者全員の同意が必要になります。
できれば、底地の共有名義者から権利を買い取りひとりの名義にすると、通常の底地売却と変わりありませんので、まだ売却しやすくなります。
ただでさえ購入希望者が少ない底地売却ですので、なるべく共有名義は避けるのがオススメです。
どうしても共有名義での売却になった場合は全員の同意が必要な点に注意しましょう。
(4)譲渡所得税に注意する
不動産を売却する場合には、譲渡税の発生に注意しましょう。
譲渡税とは、売却により収益が出た場合、収益部分に対し税金が発生します。
譲渡所得に対し、所得税と住民税が課税対象です。
譲渡所得税は、所有している期間によって税率が異なり、所有期間5年未満で底地を売却すると、譲渡所得の39.63%が課税対象となりますので非常に大きな税負担となります。
底地ですので、そこまで高額な売却は期待できませんが、売却益が出た場合の税金についてもしっかりと把握しておきましょう。
まとめ
底地権の売却について解説しました。
底地という言葉自体、あまり聞きなじみがないので非常にわかりにくいかもしれません。
土地の所有者は、底地としてしまうとかんたんに売却などができず、売却できたとしてもあまり高値での売却が期待できませんので慎重に検討しましょう。