劣化対策等級の確認方法・証明するための書類も解説
住まいの性能などを評価する上で近年よく用いられるのが劣化対策等級です。
しかし、実際にマイホームの購入を検討している中で、劣化対策等級がどのような評価なのか分からないといった方も多いのではないでしょうか。
この記事では劣化対策等級の特徴、評価方法、劣化対策等級を取得した住まいの利点などについて詳しく解説します。
劣化対策等級とは?
まだ認知度が高くはない劣化対策等級は、どのような基準で設定されているのかがよくわからない方も多いでしょう。
最初に劣化対策等級の概要や評価方法などについて詳しく解説します。
(1)劣化対策等級の概要
劣化対策等級とは、建物自体を評価する方法のひとつで、住宅性能表示制度によって定められています。
3つの等級に分類されており、建物の耐久性などを図る物差しとして評価される等級です。
劣化対策等級1程度だと建築基準法に定める対策ができている程度の対策が施された住まいとなります。
劣化対策等級2を取得した住まいは、50年から60年と2世代に渡る耐久性があると認定された住まいです。
劣化対策等級3を取得した住まいはさらに耐久性が高く75年から90年と3世代が住んでも大丈夫と認定された住まいとなります。
劣化等級3を取得した住まいは、長期優良住宅の認定を受けるために必要な要件となりますので、長期優良住宅といわれる家に関してはすべて劣化対策等級3を取得しています。
住宅性能評価制度は、品確法と呼ばれる住宅の品質確保の促進等に関する法律を基に運用されている制度です。
近年は、地震や台風といった自然災害による被害が増えており、阪神淡路大震災や東日本大震災、数々の台風やゲリラ豪雨が原因で住まいに甚大な被害を及ぼしています。
またコロナ禍の影響により住まいに求めるものが大きくなっており、快適性や安全性、耐久性に関して消費者の求めるレベルが上がっているといえるでしょう。
このような状況の中、より長持ちする住まいを求める人が多くなっている中、劣化対策等級により住まいの耐久性が把握できる評価項目です。
(2)劣化対策等級の取得や申請費用
劣化対策等級を取得するためには、前述した住宅性能評価を所得しなければいけません。
住宅性能評価は10個の分野で分けられており、それぞれの分野で最低ひとつ以上の評価を受けなければいけません。
劣化対策等級は住宅性能評価の中で劣化の軽減といった分野で評価を取得する必要があります。
劣化対策等級は主に構造躯体の部分において評価され、構造によっても評価の仕方が変わるのが特徴です。
さらに前述した劣化対策等級の種類によって基準が異なります。
劣化等級を取得するためには、住宅性能評価書や建設住宅性能評価書などの作成で取得可能です。
これらの書類に関しては後ほど詳しく解説します。
費用は、両方とも10万円~20万円程度の費用を見ておくといいでしょう。
(3)劣化対策等級の評価方法
劣化等級の評価方法は構造別に異なると前述しました。
家の建築に関して、考えられる構造として
- 木造
- 鉄骨造
- 鉄筋コンクリート造
などが挙げられます。
構造別の評価方法を解説しましょう。
木造の劣化対策等級を評価する場合、劣化対策等級別の基準を下の表にまとめました。
木造 | 劣化対策等級1 | 劣化対策等級2 | 劣化対策等級3 |
基準となる項目 | ・構造部材などの基準が適合している |
・外壁の軸組における防腐や防蟻処理 ・土台、浴室と脱衣所、地盤や基礎、床下、小屋裏などの基準が適合している |
・外壁の軸組における防腐・防蟻措置ができている ・土台の防腐・防蟻措置ができている ・浴室と脱衣室の防水措置ができている ・地盤の防蟻措置ができている ・基礎の高さの確保されている ・床下の防湿・換気措置ができている ・小屋裏の換気措置ができている ・構造部材等の基準法施行令規定に適合している |
等級が高くなればなるほど要件も多く厳しくなることがわかります。
防腐や防蟻措置、換気措置などに重点をおくことで劣化対策等級3が取得しやすいといえるでしょう。
次に鉄骨造の劣化等級対策を表にまとめました。
鉄骨造 | 劣化対策等級1 | 劣化対策等級2 | 劣化対策等級3 |
基準となる項目 | ・構造部材などの基準が適合している |
・鋼材の防錆措置ができている ・土台、浴室と脱衣所、地盤や基礎、床下、小屋裏などの基準が適合している |
・構造躯体の防錆措置ができている ・床下の防湿・換気措置ができている ・小屋裏の換気措置ができている ・構造部材等の基準法施行令規定へ適合している |
鉄骨造は、木造とは異なり防錆措置の程度が劣化対策等級に影響することがわかります。
鉄骨造も木造同様、高い等級を取得するためには、複数の要件を満たさなければいけません。
最後に鉄筋コンクリート造の劣化対策等級を表にまとめました。
鉄筋コンクリート造 | 劣化対策等級1 | 劣化対策等級2 | 劣化対策等級3 |
基準となる項目 | ・構造部材などの基準が適合している |
・部位の区分に応じ 最小かぶり厚さが一定値以上 ・水セメント比55%以下 |
・部位の区分に応じ 最小かぶり厚さが一定値以上 ・水セメント比55%以下 ・中性化深さが築年数に応じた一定数値以下 ・塩化物イオン量 0.3kg/㎥未満 ・劣化リスク小以下 |
鉄筋コンクリート造に関しては、セメントの厚みや水との比率などが重視されています。
詳しくは国土交通省が発表している「評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方」で確認するといいでしょう。
劣化対策等級を証明する書類とは?
劣化対策等級を証明する書類として前述した設計住宅性能評価書や建設住宅性能評価書などにより証明が可能です。
これらの書面について詳しく解説します。
(1)設計住宅性能評価書により証明
住宅を数値で評価できるように第3者機関で審査する制度で、設計段階で住宅性能をチェックするのが設計住宅性能評価書です。
10分野33項目において明確に数値基準を設けています。
劣化対策等級も10分野33項目の中のひとつです。
設計段階で図面や計算書などを審査し、審査が通ると設計住宅性能評価書が所得できます。
(2)建設住宅性能評価書により証明
建設住宅性能評価書も先ほど解説した設計住宅性能評価書と大きな変化はありませんが、設計図面通りに施工されているかを現場検査により確認します。
設計住宅性能評価書で認定されたとしても、図面通りに施工されているかどうかまではわかりません。
そこで、設計通りにきちんと施工されているかどうかをチェックするために設けられた制度です。
劣化対策等級を取得した住まいの利点
ここからは、劣化対策等級を取得した住まいの利点について詳しく解説します。
(1)住宅ローンや保険などの優遇
劣化対策等級を取得することは建築住宅性能評価書の認定を受けることにつながります。
また、劣化対策等級3の取得は、長期優良住宅の認定に欠かせません。
劣化対策等級を取得し、建築住宅性能評価書の認定を受けると住宅ローン金利の引き下げ対象となります。
保険なども優遇され、地震保険料の割引対象です。
住宅を消費税10%で取得している場合は住まい給付金の申請対象としても利用可能など、住宅ローンや保険などの優遇措置が受けられます。
その他にも贈与税の非課税枠が拡大される点なども挙げられるでしょう。
劣化対策等級を取得し、建築住宅性能評価書の申請を受けるためには費用がかかりますが、経済的にさまざまな恩恵を受けられる点がメリットのひとつです。
(2)耐久性が高く快適な住まいに居住できる
耐久性に優れている家といわれても、どのようなかたちでの耐久性なのか目には見えません。
住宅の耐久性や断熱性など実際に目で見えないものに関しては、数字や等級などにより耐久性などを判断します。
劣化対策等級を取得し、建築住宅性能評価書の認定を受けるためには一定の要件を満たさなければいけません。
要件を数字や等級で表す必要がありますので、さまざまな項目が数値でわかりますので、安心して居住できます。
特に劣化対策等級3が取得できている家は長期優良住宅の要件も見たすことになり、75年から90年も居住できるとの基準を持つ住まいです。
3世代まで引き継がれ、耐久性が高く、快適な生活を長く続けられる家を手に入れられます。
(3)メンテナンス費用があまりかからなくなる
メンテナンス費用の軽減も大きなメリットです。
築年数が経過してくると、さまざまなメンテナンスが必要になります。
特に主要構造部分のメンテナンスが必要になると高額になってしまうケースも多く、大きな負担になってしまうかもしれません。
しかし、劣化対策等級を取得している住まいは、耐久性が高い仕様となっています。
通常の住まいと比較するとメンテナンスに手がかかりにくく、長期的な居住に耐えられる構造や材質を使用した住まいです。
住まいに関してメンテナンス費用がかかりにくくなるでしょう。
(4)高値での売却が期待できる
劣化対策等級を取得していて建築住宅性能評価書の認定を受けていますので、誰の目から見ても耐久性が高く長期的なスパンで居住ができる住まいであることがわかります。
将来的に売却を検討する場合も一般的な住まいよりも耐久性が高いので、中古住宅でも長期的な居住に期待できるでしょう。
このような点から売却した場合も、購入希望者が多くなる可能性が非常に高いといえます。
購入希望者が多くなると高値での売却にも期待が持てるでしょう。
住まいを手放すときにも、劣化対策等級を取得したことが大きなメリットとなります。
(5)トラブルが防ぎやすい
家を建てる際、納得できるような家を提供されなかった場合、施行した建築会社とのトラブルになってしまうケースも考えられます。
特に劣化対策等級を取得し、設計住宅性能評価書や建設住宅性能評価書の認定を受けるような家だと、一般的な家よりも金額的に高額です。
施工主にとっては大きな損害を受けることになってしまいます。
劣化対策等級を取得し、設計住宅性能評価書や建設住宅性能評価書の認定を受けている家は建築会社とのトラブルに関する対策が整っています。
建築会社とトラブルが発生した場合、指定住宅紛争処理機関への紛争処理が可能です。
全国の弁護士会が請け負っている機関で、無料相談が受けられ紛争処理の依頼もできます。
1件あたりの紛争処理費用も1万円と安価で依頼ができますので、こちらも大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
劣化対策等級の取得は、耐久性が高く快適な住まいを求める場合は、是非とも検討したい項目のひとつです。
特に劣化対策等級3が取得できると、3世代にわたって住むことができる耐久性が高い家が建てられます。
劣化対策等級を取得するにはいくつかの要件をクリアする必要がありますので、施工する建築会社との綿密な打ち合わせが必要です。
劣化対策等級を取得すると、さまざまなメリットが得られます。
工事金額や申請費用など一般的な家よりも高額になりますが、住宅ローンや保険などさまざまな面での優遇措置が利用できるかもしれません。
長く快適な家に住みたい方は是非検討してみてはいかがでしょうか。