空き家税とは?概要、税率、対策について解説
空き家に対する対応が求められる中、新たに空き家税の導入が発表されました。
この空き家税とはどのようなものなのか気になっている方は多いのではないでしょうか。
この記事では空き家税について詳しく解説します。
空き家税とは?
空き家税の正式名称は、「非居住住宅利活用促進税」です。
空き家や別荘などに、固定資産税とは別に課せられる新しい地方税です。
全国に先がけて空き家税の導入を決定した自治体は京都市です。
京都市では2026年以降、この空き家税が施行される計画です。
空き家税が導入される目的とその概要を見ていきましょう。
(1)空き家税を導入する自治体とその目的
全国に先駆けて空き家税の導入を決めた京都市は、どのようなことを目的としているでしょうか。
京都市が空き家税の導入を決めた主な目的は、空き家のまま放置されている不動産の流通を促すことです。
売却や建て替えによって流通を促し、居住できる場所を増やすことができれば、若い世代や子育て世代の人口流入を図ることができるでしょう。
京都市では近年、空き家がどんどん増加しているにも関わらず、空き家自体が有効活用されていないために、若い世代が家の購入に苦慮するといった事態が起きています。
空き家は増えている一方、人口は増えないといった悪循環を打開するために施策の一つとして導入されたのが空き家税です。
確保した税収を、空き家の活用を支援していくための将来的な費用に充てることで、住宅供給の促進、安全な生活環境の確保、地域コミュニティの活性化を図ることが可能になります。
京都市と同様に、増え続ける空き家、住宅供給不足、若い世代を中心とした人口の減少という状況に苦しんでいる自治体は全国的に多いので、京都での施行は全国的に注目を集めるものと思われます。
京都市が導入した効果を見て、今後空き家税の導入を検討する自治体が増える可能性も高いでしょう。
(2)空き家税、課税対象と税率
京都市が導入する空き家税の課税の対象となるのは、京都市内にある非居住住宅の所有者です。
住民票の有無ではなく、実際に居住しているかどうか、生活の拠点となっているかにより、課税対象となるか判断されます。
一部課税が免除されるケースなどもあるので、詳細については京都市の公式サイトなどで確認してください。
実際に空き家税とも呼ばれる非居住住宅利活用促進税が、どの程度の税率なのかも気になるところです。
空き家税には家屋価値割と立地床面積割のふたつをそれぞれ計算し、足したものが課税額です。
家屋価値割が固定資産税評価額の0.7%となります。
立地床面積割は土地の固定資産税評価額によって税率が異なります。
評価額による税率の違いを下の表にまとめました。
土地の固定資産税評価額 | 税率 |
700万円未満 | 0.15% |
700万円以上900万円未満 | 0.3% |
900万円以上 | 0.6% |
家屋価値割と立地床面積割を足したものが空き家税となります。
ただし、家屋価値割が20万円未満の場合は免税となるので、この場合は立地床面積割の税額のみです。
空き家を放置してしまうリスク
ここからは、空き家を放置してしまうリスクについて解説します。
(1)倒壊リスク
空き家を放置すると、倒壊のリスクが生じます。
放置された建物は経年劣化や自然災害により損傷し、構造や基礎に問題が生じる可能性が高まるでしょう。
特に適切な管理や定期的なメンテナンスがないまま時間が経過すると、建物の耐久性が低下し、崩壊や倒壊の危険性が増します。
すぐに倒壊しなくても、普通なら倒壊することのない程度の地震や、自然災害などにより倒壊してしまう危険性を抱えることになってしまいます。
そうなると、周囲の安全を脅かすだけでなく、所有者にも法的な責任が生じる可能性も考えられるため、非常に大きなリスクだといえます。
(2)火災リスク
空き家を放置すると、火災のリスクが増加します。
電気の不具合や不慮の出火、不法侵入者の放火などが起きやすくなるでしょう。
定期的な点検や保守がないまま時間が経過すると、老朽化や劣化が進み、電気設備やガスラインの問題が生じやすくなります。
また、放置された建物内での不法占拠や不審者の滞在が火災の原因となることも考えられます。
火災が発生した場合、周囲の住民や他の建物への延焼リスクが高まり、火災対策が不十分な空き家が被害を拡大させる可能性があります。
そのため、空き家所有者は定期的な点検や安全対策を行い、火災リスクを最小限に抑える努力が求められます。
(3)犯罪リスク
空き家を放置すると犯罪リスクが高まります。
放置された建物は不法侵入者や犯罪者の潜伏場所となり、窃盗や不法占拠、麻薬の取引などの犯罪行為が発生しやすくなるでしょう。
周辺地域にも悪影響を与え、地域の治安を損ねるかもしれません。
また、空き家が犯罪行為の舞台となれば、所有者にとっては法的な問題や責任が生じる可能性もあります。
空き家を定期的に点検し、セキュリティ対策を講じることが重要です。
地域の防犯活動に参加することも、空き家の犯罪リスクを軽減する手段となります。
(4)悪臭など近隣に対するリスク
空き家を放置すると、悪臭や不衛生な状態が生じ、近隣への迷惑となるリスクが高まります。
廃棄物の不法投棄やゴミの積み重ね、湿気によるカビの発生などが原因で、悪臭が発生しやすくなるでしょう。
これは周辺住民の生活環境を悪化させ、健康に対する懸念を引き起こしかねません。
さらに、空き家が不法占拠や不法投棄の場となりやすいため、害虫や動物の侵入、環境汚染なども懸念されます。
近隣住民とのトラブルや地域社会への悪影響を防ぐためには、所有者は空き家の適切な管理や清掃を行うことが求められるといえるでしょう。
空き家が今後増えていく可能性について
今後空き家は増えていくのかという点も気になる点です。
ここからは、空き家の今後について詳しく解説しましょう。
(1)空き家の数は年々増加している
空き家の数は年々増加しています。特にここ数年は急激に増加しているのが現状です。
人口減少や都市部の過疎化、高齢者の増加などが要因として挙げられ、これにより多くの建物が利用されずに空き家となっています。
空き家の増加は地域経済や不動産市場に影響を与え、地域社会においても大きな課題です。
行政や地元自治体は、空き家問題への対策や再生プロジェクトを進める一方で、所有者に対して適切な管理と利活用の促進が求められています。
(2)管理されていない空き家も増加している
近年、管理が不十分な空き家も増えています。
人口減少や都市部の過疎化により、相続などで引き継いだ空き家に対し、相続人が遠方で適切な管理ができないケースが多いからです。
これにより、地域の景観や安全性への悪影響が拡大し、犯罪や火災のリスクが高まっています。
また田舎の家は、賃貸などの活用法もうまく見いだせず、固定資産税の宅地並み課税が適用されるために、空き家のまま放置しているといった事例もあります。
地元自治体や関係機関は、適切な対策を講じて空き家の再生や地域振興を進める一方で、所有者への啓発や適切な管理の重要性を訴えていかなければいけません。
(3)空き家対策特別措置法の施行
今後空き家が増加することにより生じるさまざまな問題に対処するために、2014年に施行されたのが空き家対策特別措置法です。
これにより、居住されていないことが明らかで管理がされていないとされる空き家に対し、行政が介入できるようになりました。
管理されていない空き家を特定空き家として認定し、管理に関する助言や指導ができるようになり、罰金や行政代執行なども可能となったのはこの法律が施行されてからです。
これまで、いくらボロボロでも解体しなかったのは固定資産税の宅地並み課税により通常の固定資産税よりも1/3もしくは1/6まで減額されていたことも大きな要因といえます。
しかし、特定空き家に認定され、助言や指導に従わなければ、この特定からも除外されるため、空き家のまま所有しておくメリットはほとんどなくなります。
空き家の有効活用か、売却などの対処が求められるでしょう。
空き家税を回避するための対策は?
ここからは空き家税を回避するための対策について詳しく解説します。
(1)売却する
空き家税を回避するための方法の一つは売却です。
空き家を売却することで、新たな所有者が入居または有効利用することが期待され、その結果、地域社会の活性化につながります。
売却により所有者が手に入れる資金は、新たな不動産への投資や他の用途に充てることができるでしょう。
また、建物や土地の管理責任が新しい所有者に移ることで、放置された状態から脱し、建物の老朽化や犯罪のリスクを軽減できます。
(2)解体する
建物の解体も空き家税を回避するための方法の一つです。
解体により土地だけが残り、建物がない状態となるため、建物の管理や維持も不要になります。
ただし、前述したように固定資産税の宅地並み課税の適用から除外されるので、土地の固定資産税が増額される点に注意が必要です。
また、解体には費用がかかるので、経済的な面での検討も必要でしょう。
解体を検討する場合は、専門家の助言や地元自治体の相談を受けながら、適切な対策を検討しなければいけません。
(3)賃貸に出す
賃貸に出すことにも、空き家税を回避するための有効な対策の一つです。
賃貸に出せば、空き家ではなくなりますので、空き家税の対象からも除外されるでしょう。
空き家を賃貸に出すことで、建物が有効に活用され、家賃収入も得られるといったメリットもあります。
賃貸により建物が利用されることで、空き家が住居として機能し、地域の住民や景観にも寄与します。
ただし、賃貸には物件の管理や契約手続きが必要です。
また、借主から修繕などの要望が出た場合は速やかに対処しなければいけません。
これらの面も考慮し、地元の賃貸市場や需要に合う適切な家賃を設定することが重要です。
(4)自分たちや親族が居住する
所有者や親族が空き家に住むことにも、空き家税を回避するための有効な対策といえます。
空き家を住宅として機能させることで空き家税の対象から外れることが可能です。
ただし、親族を住ませる場合でもしっかりと契約を交わし、事前に決まり事を明確にしておく必要があるでしょう。
親族が住む場合は、不動産管理会社などに管理を依頼し、万一のトラブルや滞納などに備えておくことも重要なポイントです。
まとめ
この記事では空き家税について解説しました。
京都市が初めて導入するこの課税制度は、今後空き家の増加に伴い、多くの自治体で導入される可能性があります。
空き家対策特別措置法と並び、今後空き家を所有し続けるには経済的な負担も大きくなるので、早めに活用方法を検討しましょう。