再建築不可物件とはどのような物件?活用方法も解説
一戸建ての売買情報などを見ていると、「再建築不可」と記載されている物件があります。
このような物件は、近隣相場よりもお得な金額で売却されているケースが多いので気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、再建築不可物件の特徴、取得するメリットやデメリット、活用方法などについて詳しく解説します。
再建築不可物件の特徴
まずは、再建築不可物件の特徴について説明します。
(1) 再建築不可物件とは?
再建築不可物件は、現在の建物を取り壊した後に新たな建物を建てることができない土地を指します。
その主な理由は、建築基準法第43条の接道義務を果たしていないことにあります。
接道義務とは、建物を建てる際に、幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないという規定です。
この規定により、建築基準法上の道路に接していない、または接している道路の幅員が4m未満、接する幅が2m未満の場合、再建築不可物件となります。
再建築不可物件を購入する際は、リスクを十分に理解した上で検討することが重要です。
(2) 再建築不可物件が存在する理由
このような物件が生まれる理由には、法律の施行時期が関係しています。
1950年に建築基準法が制定され、接道義務が定められました。しかし、それ以前に建てられた建物の中には、この義務を果たしていないものが多く存在します。
また、1968年に制定された都市計画法以前に建物が建てられていた土地も、再建築不可物件となる可能性が高いものが複数存在するといえるでしょう。
これらの物件は、法改正によって現行の基準を満たしていないため、再建築ができない状況となっています。
(3) 再建築不可物件の件数
政府統計局の調査によると、平成30年に、道路に接していない住宅数は約130万戸で全体の約2%程度となっています。
また、幅員2m未満の道路に接しており、再建築不可物件になる可能性がある物件が約290万戸で全体の約4.6%です。
このような物件は、再建築ができない可能性が高く、特に都市部や三大都市圏、地方中枢都市などで見かけることがあります。
約130万戸の物件があり、一定の割合で市場に流通しているケースが多いので、物件探しの際には注意が必要です。
再建築不可物件を取得するメリット
ここからは、再建築不可物件を取得するメリットについて解説します。
(1)固定資産税などが安い
再建築不可物件を取得するメリットのひとつとして、固定資産税や都市計画税が安い点があります。
これらの物件は、税金の算出基準となる課税評価額が低いのが一般的です。多くの自治体で1.4%の固定資産税と、0.3%の都市計画税が課税割合となっています。
評価額が低いために、これらの税額が抑えられるでしょう。
固定資産税と都市計画税は年に一度課税されるため、再建築不可物件を保有していると一般の不動産と比較して不動産の維持費を抑えることができます。
税金のコストがあまりかからない点は、居住コストを考える上で重要なポイントです。
(2)安い価格で購入できる
再建築不可物件を取得するメリットとして非常に大きなものは、安い価格で購入できる点です。
同じ条件の中古住宅と比較すると、最大で5割ほど安く購入できるケースもあります。
再建築不可物件は、さまざまな欠点があり、買い手が付きにくい物件です。
そのため、需要が低く、価格でカバーするために相場よりも安い金額が設定されることが多いといえるでしょう。
費用を抑えて不動産を取得したい方にとって、魅力的な選択肢となります。
(3)相続税対策に効果的
再建築不可物件を取得することは、相続税対策としても効果的です。
一般的に、不動産を相続する場合、その評価額が購入価格より低くなるため、現金を相続するよりも相続税を抑えられます。
再建築不可物件の評価額は通常の物件よりも低いため、相続税の負担をさらに軽減することが可能です。
そのため、相続税対策としても利用できます。
(4)投資利回りが高い
相続税対策に加え、投資用物件としての高い収益性も挙げられます。
一般的に、再建築不可物件は購入費用が安いため、初期投資額を抑えられますが、家賃相場まで大幅に低くなるというわけではありません。
そのため、購入費用が安い物件を市場相場の家賃で運用できれば、投資に対する収益の割合が大きくなりやすく、投資額を早期に回収することが可能です。
もちろん、立地や物件の状態にもよりますが、リフォーム費用が安く抑えられる場合、さらに収益性は高まります。
再建築不可物件を取得するデメリット
ここからは、再建築不可物件を取得する場合のデメリットについて解説します。
(1)建て替えられない
再建築不可物件を取得する大きなデメリットは、建て替えや増改築ができない点です。
この物件は、建築許可申請が通らないため、更地にして新しい建物を建てることや、大規模な増築ができません。
一部のリフォームなど、建築許可が不要な工事は可能ですが、土地や建物の自由な活用が制限されるため、将来的に改築や増築が難しい場合があります。
特に、長期的な視点で物件の価値を維持・向上させたい場合、増築、改築にまで制限がかかるのは大きな支障になるでしょう。
購入前には、こうした制約を十分に理解することが重要です。
(2)リフォームのコスト負担が大きい
リフォームのコスト負担が大きい点も、デメリットのひとつです。
再建築不可物件は、1950年に制定された建築基準法以前の法令基準に基づいて建てられたため、一般的に古い建物が多く、経年劣化が進んでいる可能性があります。
その結果、大規模な改修が必要となり、リフォーム費用が高額になることが少なくありません。
特に、定期的な修繕が行われていない物件については、購入後に発生する修繕費用を事前に見込んでおくことが重要です。
物件の代金だけでなく、リフォームにかかるコストも含めて検討する必要があります。
(3)住宅ローンを利用できない
住宅ローンを利用できない点も大きなデメリットとなるでしょう。
これらの物件は資産としての価値が低いため、多くの場合、金融機関が住宅ローンの融資を行わない傾向があります。
金融機関はローンを貸し付ける際に物件を担保とします。
しかし一般的に再建築不可物件は売却が難しく、資産としての価値が低いため、売却しても残債を回収できない可能性が高いと判断されることが多いのです。
その結果、再建築不可物件の購入には現金一括での支払いが求められることが多く、資金調達の面で大きな障壁となります。
(4)道路が狭いため緊急の対応がしにくい
再建築不可物件を取得するデメリットのひとつは、道路が狭いため緊急対応がしにくい点です。
これらの物件は、建築基準法に定められた「幅員4m以上の道路に2m以上接道する」という接道義務を満たしていないため、増改築が制限されています。
そのため、多くの再建築不可物件では、接道面積が非常に狭く、接している道路の幅も4m未満であることが多いです。
このような状態では、救急車や消防車が進入できない、または到着が遅れる可能性があります。
再建築不可物件を活用する方法
ここからは、再建築不可物件を活用する方法について解説します。
(1)解体・更地にする
再建築不可物件を活用する方法のひとつとして、解体して更地にすることが挙げられます。
これらの物件は、敷地周辺に十分な幅のある道路がないため、更地にしても駐車場を作ることは難しいですが、自転車や原付バイクの駐輪場を設置することは可能です。
特に、近隣に駅や大型商業施設、集合住宅などがある環境では、高い収益性を見込むことができるでしょう。
駐輪場として利用することで、土地の有効活用ができ、収益を上げることができるため、価値を最大限に引き出す方法となります。
(2)自分たちで住む
自分たちで住むことも活用する方法のひとつです。
これらの物件は新築や増築、改築ができませんが、一部の物件ではリフォームやリノベーションが可能です。
具体的には、「4号建築物」に該当する場合、リフォームが許可されます。
- 2階建て以下
- 延床面積500平方メートル以下
- 高さ13メートル以下
- 軒の高さ9メートル以下
の木造建築物、または平屋建てで延床面積200㎡以下の非木造建築物がこれに該当します。
再建築不可物件の多くはこの条件に当てはまるため、リフォームやリノベーションを行い、自分たちの住まいとして利用することが可能です。
(3)売却
最も大きな活用方法のひとつは、売却することです。
これらの物件は、再建築や大規模な改築ができないため、一般的な不動産市場では扱いにくい場合がありますが、特定のニーズを持つ購入者層にとっては価値があることがあります。
例えば、土地の利用方法を工夫することに興味がある投資家や、駐輪場として活用する計画を持つ購入者が考えられるでしょう。
また、周辺に駅や商業施設がある場合、需要が見込まれるため、適切なマーケティング戦略を立てれば、再建築不可物件でも売却可能です。
物件の特性を理解し、ターゲットとなる購入者層を意識したアプローチが成功の鍵となります。
(4)賃貸に出す
賃貸に出すという選択肢も考えられるでしょう。
再建築不可物件は、建物の新築や大規模な改築が制限されていますが、現行の状態で賃貸物件として利用することは可能です。
特に、物件がリフォームやリノベーション可能な条件を満たしている場合、居住空間を改善することで賃貸市場での需要を高めることができます。
周辺に駅や商業施設があるエリアでは、賃貸需要が見込まれるため、適切なリフォームやマーケティング戦略を立てることで、安定した収益を上げることもできるでしょう。
再建築不可物件の特性を活かし、賃貸経営を行うことで、土地の価値を最大限に引き出すことが可能です。
まとめ
再建築不可物件の特徴や活用法などについて解説しました。
再建築不可物件は、道路に接道していないといった事情により、建て替えや増改築はできませんが、メリットとデメリットがあり、活用することも可能です。
所有している場合は、特徴を理解して売却も含めた効果的な活用方法を検討するとよいでしょう。