親が施設に入る際に実家の片付けをスムーズにする方法と注意点
自分の親が高齢になり、介護施設などに入所することになった場合、実家の片付けをどうしたらいいのだろうかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実家の片付けは、非常に大変な作業になることもあります。
また、親が施設に入所した後、実家が空き家になる場合、実家をどのように扱うべきなのかという問題もあります。
この記事では、親が施設に入所する際の実家の片付けについて詳しく解説します。
親が施設に入るとき実家の片付けが大変な理由
まずは、親が施設に入るとき実家の片付けが大変な理由について解説します。
(1)片づけるものが多い
親が施設に入る際、実家の片付けが大変な理由のひとつとして、片付ける物が多いことが挙げられます。
引越しをせず長期間住み続けている場合は、長い年月の中で不要になった物が自然に増えているでしょう。
家族の成長やライフスタイルの変化に伴い、家具や家電などが増え、古い物は処分されずに放置されがちです。
お中元やお歳暮、結婚式の引き出物などが奥にしまい込まれていることも多く、片付けには時間と労力がかかるケースが多いといえるでしょう。
(2)スケジュール調整が大変
スケジュール調整の難しさも、実家の片付けが大変な理由として挙げられます。
不要な物を処分するには、自治体の分別ルールに従う必要がありますが、物が多ければ、その分別に手間と時間がかかるでしょう。
例えば、賞味期限切れの瓶詰や缶詰は中身を取り出さなければならず、さらにバッグや靴など、分解が必要な物もあります。
これらの作業を進めるためには、多くの時間を確保して計画的に取り組む必要があり、その調整が大変です。
(3)話がまとまらない
親が施設に入る際、実家を片付けようとしても、親子の間で、何を処分するか、家をどうするかについて意見が食い違うこともあります。
「家を売却する」「貸して家賃収入を得る」「子供に譲る」などの選択肢がある中で、子供の仕事や孫の教育の関係で実現が難しいこともあります。
また、世代間で物に対する考え方の違いもあり、これらの問題を解決するためには早期の話し合いが必要です。
(4)子供世代も高齢な場合がある
子供世代も高齢である場合、実家の片付けが体力的な負担となることもあります。
片付け作業には体力が必要ですが、高齢だと腰を痛める、疲れが翌日に残るなどということも考えられるでしょう。
さらに、遠方に住んでいる場合は移動費用の負担も大きくなります。
兄弟間で負担が偏ると不公平感が生じ、関係が悪化することもあるので注意が必要です。
親が施設に入るときに実家をどうするべきか
親が施設に入る場合、実家の片付けも大切ですが、実家自体を今後どのようにするかを考えることも大切なポイントです。
ここからは、親が施設に入るときの選択肢について解説します。
(1)売却
親が施設に入所した後、実家に住む人がいなくなった場合、家屋を売却することを検討するのは選択肢のひとつです。
実家を売却すれば、その資金を施設の入居費や老後の生活費に充てることができます。
売却時には「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を活用すると、譲渡所得から最高3,000万円まで控除が可能です。
ただし、住まなくなってから3年以内に売却することや、買い手が親族でないことなどの条件があります。
事前に条件を確認し、手続きを進めましょう。
(2)配偶者が一人で住む
親が施設に入る際、配偶者がそのまま実家に一人で住み続けるケースがあります。
たとえば、夫が介護施設に入所し、妻が夫名義の家に住む場合です。
この状況では、夫の入所から3年経過すると、居住用財産の3,000万円の特別控除が使えなくなります。
そこで、将来に備えて家の名義を妻に贈与しておくと、特例を利用することが可能です。
また、夫が先に亡くなる場合に備え、遺言書の作成や家族信託を活用することで、妻が自宅に住み続けられる準備を整えておくことが重要なポイントとなるでしょう。
(3)賃貸に出す
親が施設に入る際、実家を賃貸に出すことで家賃収入を老後資金に充てる方法があります。
しかし、賃貸に出す前には、管理や相続について十分に話し合うことが重要です。
賃貸住宅の管理には手間がかかるため、管理業務を誰が担当するかを決めておく必要もあります。
また、賃貸物件の名義人が亡くなった際の相続問題についても、事前に対策を講じておくことが大切です。
これにより、スムーズに収入を得るとともに、将来のトラブルを防ぐことができます。
(4)解体する
親が施設に入る際、実家を解体するという選択肢もあります。
解体を決定することで、土地を売却して得た資金を老後の生活費に充てることが可能です。
しかし、解体には多くの手続きや費用がかかります。
まず、解体業者の選定や見積もりを取り、法的な手続きや近隣への通知も必要です。
また、解体後の土地利用方法についても考慮し、計画を立てておくことが重要です。
解体を行う前に、全ての条件を整え、スムーズに進めるための準備を十分に行いましょう。
親が施設に入る際の実家の片付けにおける注意点
親が施設に入る場合、実家の片付けにはいくつか注意しなければいけないポイントがあります。
ここからは、実家の片付けにおける注意点について詳しく解説します。
(1)貴重品の所在を確認しておく
実家の片付けを行う際は、まず親が入所する施設に持っていく物と、それ以外の物に分けましょう。
介護施設には最低限の物しか持ち込めないのが一般的です。そのため、持っていく物以外はほとんど不要になります。
しかし、家族が不要と思っても、アルバムなど親にとって大切な物があるかもしれません。
また、貴重品や個人情報に関わる物の所在も確認しておく必要があります。
親と一緒に仕分けを行うことが望ましいですが、困難な場合は遺品整理士や専門業者に依頼してもよいでしょう。
(2)業者に依頼する場合は同意をあらかじめ得ておく
親が施設に入る際、実家の片付けを業者に依頼する場合は、関係者の同意をあらかじめ得ておくことが重要です。
生前整理や遺品整理を専門とする業者が存在し、貴重品や大切な物の整理を行ってくれますが、見知らぬ他人との作業に抵抗感を持つのは自然なことかもしれません。
業者に依頼する前に、親や関係者からの了承を得ることが大切です。
(3)家電の処分方法に注意する
家電の処分方法にも注意が必要です。
要るものと要らないものを仕分けた後、要らない家電の処分方法を考える必要があります。
冷蔵庫やエアコンなどの大型家電は、処分が非常に大変です。
リサイクル法により、冷蔵庫などの家電の処分には費用がかかるほか、不用品回収業者に依頼する際にも費用が発生します。
ただし、一部の不用品回収業者では無料引き取りや買い取りサービスを提供しており、これを利用すると費用を抑えられる場合があるので、業者に確認してみましょう。
(4)親が賃貸の部屋に住んでいる場合
賃貸の部屋は通常、施設入所と同時に退去する必要があるので、賃貸契約書の退去についての条項を確認しておきましょう。
部屋が汚れたままだと、多額のクリーニング料金が発生する可能性があるので注意が必要です。
片付け後のクリーニングを業者に依頼する際には、どの程度のクリーニングが可能かを確認しましょう。
賃貸マンションでは、退去に期限が設けられていることも多いため、早めに業者に見積もりや依頼を行いましょう。
親が施設に入るとき、実家の片付けをスムーズにするコツ
ここからは、親が施設に入るとき、実家の片付けをスムーズに実施するコツについて詳しく解説します。
(1)片付けるものと残しておくものをリスト化する
親が施設に入る際、実家の片付けをスムーズに進めるためには、持参する物と残す物をリストアップするとよいでしょう。
介護施設によって持ち込み可能な物が異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
設備が整っている施設では、衣類以外は不要な場合もあります。
このように必要な物を除外することで、片付ける物が減り、作業が効率化されます。
また、季節ごとに衣類の入れ替えが必要なので、実家を処分した場合や貸し出した際には、子供の家で保管することやレンタルルームを借りることも検討しましょう。
(2)貴重品は保管場所を決めておく
親が施設に入る際、実家の片付けをスムーズにするためには、貴重品の保管が重要です。
権利書や生命保険の証券、実印などの重要書類は、紛失すると困るため、しっかりと整理し、保管場所を決めておきましょう。
使用していない銀行口座の確認も忘れずに行い、休眠口座がないかをチェックしておくことが大切になります。
また、意外に見落としがちなのが、親が契約しているサブスクリプションサービスです。
PCやスマホを利用している場合、サブスク契約があるかを確認し、契約者が亡くなった際の対応を把握しておくとよいでしょう。
契約者の銀行口座が凍結されると支払いが止まり、クラウドサービスに保存されているデータが消失する可能性もあります。
大切な写真やデータが失われるリスクを避けるためにも、事前に整理しておきましょう。
(3)売却できるものは早めに実行する
親が施設に入る際、実家の片付けをスムーズに進めるためには、売却できるものを早めに売却することが重要です。
まず、骨董品や美術品など、資産となる物がないかを確認しましょう。
親が譲る約束をしている場合や、本人が不要と考えている物の中にも価値がある可能性があるため、漏れがないようにチェックすることが大切です。
資産価値がある可能性のある物については、専門家による鑑定を依頼するとよいでしょう。
なお、高額な骨董品や美術品を売却する際には、譲渡所得税が発生することがあります。
一般的に、1個または1組の価値が30万円を超えると課税対象となります。
さらに、金品の相続時には相続税がかかりますが、亡くなる前3年以内に相続した場合でも、年間110万円以下の贈与には贈与税がかからない制度があります。
税金の申告には書類の準備が必要なため、早めの対応を心がけましょう。
まとめ
親が施設に入る場合、実家の片付けに関して、非常に面倒になるケースや、親族間のトラブルに発展してしまうことも考えられます。
親が施設に入所する際の実家の片付けにはデリケートな問題が伴うため、事前の準備や、親の同意などが欠かせません。
また、親が施設に入る場合、実家の取り扱いについてもしっかりと検討しましょう。
売却、賃貸、解体などさまざまな方法があるので、専門家に相談しながら、親族間でしっかりと協議することが大切です。