違法建築物とは・既存不適格物件との違いや調べ方を解説

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違法建築物とは?

建物の中には、違法建築と呼ばれる物件があります。

よく理解しないまま違法物件を購入してしまうと、将来、売却するときなどに大きな制限がかかってしまう可能性があるため注意が必要です。

この記事では、違法物件の意味や違法物件になる原因、調べ方などについて詳しく解説します。

違法建築とは?再建築不可や既存不適格との違い

まずは違法建築の特徴と既存不適格との違いについて解説します。

(1)違法建築の概要

違法建築物件は、建築基準法や都市計画法、消防法、地域条例のいずれかに違反して建てられた物件のことです

例えば、土地の容積率制限が200%の場所で400%の建物が建てられている場合、違法建築に該当します。

また、防災設備の不備や接道義務違反なども違法建築に該当します。

違法建築物件は、高利回り物件として紹介されることも多いですが、違法建築は法律に反しているため、購入や投資の際には慎重な検討が必要です

(2)再建築不可物件との違い

違法建築と再建築不可物件は、混同されがちな特徴を持っていますが、大きく異なるといえるでしょう

前述したように違法建築とは、建築基準法や都市計画法などの法令に違反して建てられた建物を指します。

一方、再建築不可物件は建物ではなく土地に対しての事象です。接道幅が不足しているなどの理由で、新たに建物を建てる許可が得られない敷地を指します。

再建築不可の土地上にある建物が違法建築とされることもありますが、再建築不可自体は土地に対して課せられるものといえるでしょう。

(3)既存不適格との違い

違法建築と既存不適格物件は、内容的には似ていますが法的な位置づけが異なります

違法建築は、建築基準法や都市計画法に違反して建てられた物件です。

一方、既存不適格物件は、建築当時は法に適合していたものの、その後の法改正により不適法となった物件を指します。

既存不適格は、建築当初の法令に基づいて建てられているため、公的な補助金や融資の審査でも違法建築に比べて比較的緩やかな取り扱いといえるでしょう。

違法建築物件になる理由とは

違法建築になるケースとしてはいくつかのパターンが考えられます。違法建築物件になる理由について解説します。

(1)建ぺい率、容積率違反

違法建築物件になる理由として、建ぺい率や容積率に違反していることが挙げられます

建ぺい率とは「敷地面積に対する建物の建築面積の割合」のことです。この比率を守らないと周辺の防災や景観に悪影響を及ぼす可能性があります。

容積率は「敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合」を指し、これを超えると、居住や業務に適した建物とはいえません。

こうした比率を超過して建てられた物件は違法建築とされ、資産価値や売却が大きく制限されることが多くなってしまうでしょう。

(2)斜線制限違反

次に挙げられるのが、斜線制限違反です。

斜線制限とは、道路や隣地の境界線からの距離に応じて建物の高さを制限する規則で、隣地への日照や通風を確保し、住環境を快適に保つために設けられています

斜線制限を守るため、建物が隣地の日照権を侵害しないように、設計の際には指定された斜線に沿って高さを抑え、斜めに削る必要があります。

これを守らない建物は、違法建築となり、後々の資産価値にも影響を与えるといえるでしょう。

(3)採光違反

違法建築物件になる理由として採光違反も挙げられるでしょう。

建築基準法第28条により、住宅の各部屋には採光できる窓(開口部)を設けることが義務づけられています。

この採光面積の基準となる有効採光面積は、その部屋の床面積の7分の1以上でなければなりません

有効採光面積は、採光補正係数という窓の位置や隣地との距離による光の入りやすさを示す数値を用いて計算されます。

採光違反があると、違法建築となり、住環境にも大きな影響を及ぼすため注意が必要です。

(4)用途地域違反

用途地域違反も違法建築となる要因のひとつです。

用途地域とは、都市計画法第8条に基づき、市街地の住居、商業、工業などの土地利用を区分するもので、13種類の地域が指定されています

この規制に反する建物は、違法建築に該当します。

例えば、第一種低層住居専用地域に店舗や飲食店が建っているケースや、住居地域に工場が建てられた場合は用途地域違反です。

用途地域違反により、生活環境が悪化するリスクがあるため、用途地域の指定に従った建築が求められます。

(5)接道義務違反

接道義務違反は違法建築となる要因のひとつですが、建物が建った後に接道義務を満たさない場合があり、この場合は再建築不可物件になるかもしれません。

建築基準法では、建物を建てる敷地は幅員4m以上(地域によっては6m以上)の道路に、2m以上接している必要があると定めています

接道義務を満たしていない土地では、新築や増改築が認められません。

特に、1950年以前に建てられた物件の中には、接道義務を果たしていない再建築不可物件も多く存在します。

こうした物件は、利用や改築に制約が生じるため、投資や購入時には慎重な確認が必要です。

(6)高さ制限違反

違法建築物件となる理由には「高さ制限違反」があります。

都市計画による「絶対高さ制限」により、第1種低層住居専用地域では建物の高さが10mまで、第2種低層住居専用地域では12mまでと設定されています

この高さ制限は日照や通風など、地域住民の快適な生活環境を守るための規定です。

たとえば、第2種低層住居地域に12mの建物を建てた後に用途地域が第1種に変更されると、この建物は2mオーバーとなり、違法建築や既存不適格物件として扱われることになります。

(7)耐震基準が満たせない

違法建築物件となる理由として耐震基準も大きな要因です。

耐震基準は1981年6月に大幅に改正され、これ以降に建てられた建物は新耐震基準を満たす必要があります

新耐震基準は、震度6強〜7程度の揺れに耐えることを求めていますが、それ以前の旧耐震基準では震度5強程度にしか対応していません。

このため、1981年6月以降に建設された建物が新耐震基準を満たしていない場合、違法建築として扱われます。

旧耐震基準の物件は、現時点で既存不適格物件です

1995年の阪神・淡路大震災では、新耐震基準を満たした建物の多くが軽微な被害にとどまり、旧基準の建物に比べて大きな損傷は少なかったと報告されています。

このことから、耐震基準を満たすことの重要性は明らかといえるでしょう。

(8)違法の増改築

最後の要因として、最も起こりやすいとされるのが増改築時に建築基準法に則った建築確認申請を怠ることです

10㎡以上の増築を行う場合、建築確認申請が必要となります

確認申請の必要性を知らずに工事を進めてしまうケースも多いといえるでしょう。

また、建築業者がその必要性を認識していながら増築工事を黙認するケースも見受けられます。

特に注意が必要なのは、購入後に無許可で増改築を行った場合です。

この場合、違法建築になっている可能性が高く、法的なリスクを伴ってしまうでしょう。

違法増築は、10㎡以上の増築時に建築確認申請を行っていないことが原因です。

増改築を計画する際は、事前に確認申請を行うことが不可欠です。安全で合法的な建物を維持するためにも、正しい手続きを遵守しましょう。

違法建築の調べ方

違法建築となる理由について解説しましたが、どうすれば違法建築かどうかわかるのでしょうか。違法建築の調べ方について解説します。

(1)建築確認などで調べる

違法建築かどうかを調べるためには、建築確認証と検査済証の確認が重要です

これらの書類には建物が建築基準法に基づき確認され、検査を通過したことが明示されています。

書面には建築確認証と検査済証が記載されているため、目視で簡単に確認が可能です。

これらが揃っていれば違法建築の可能性は低く、安心材料になります。

ただし、建築確認証や検査済証が紛失している場合もあるため、購入前には売主や管理者に必ず確認しましょう。

また、既存不適格かどうかの判断には別途の調査が必要ですが、これらの書類は違法建築でないことの証明にも役立ちます。

(2)台帳記載事項証明で調べる

建築確認証や検査済証が紛失している場合は建築確認台帳記載事項証明の取得が有効です

この証明書は、建築当時の確認番号や検査番号、建築主、地番、規模・構造など基本情報を記載しており、建築確認および完了検査を受けた記録がわかります。

証明書に建築確認日付と検査済日付の記載があると、違法建築でない可能性が高まりますが、記載がない場合は違法建築のリスクも考えられるでしょう。

さらに、概要書も一緒に取得すると、より詳細な情報を確認できます。

(3)図面などで調べる

違法建築の確認方法として、物件の図面と現状を比較する方法があります

建築確認済証のある物件でも、後に違法な増改築が行われていれば違法建築の可能性があるため、設計図と現況を照らし合わせることが重要です

特に平成11年以前の建物は、違法な増床が行われたケースが少なくありません。

一戸建ての場合、この方法で違法増改築の有無が確認できますが、マンションでは難しい場合もあります。

特に元賃貸物件で分割販売されたようなマンションでは改装などにより、違法改造のリスクが残るため注意が必要です。

(4)登記簿で調べる

違法建築を調べる際、マンションなどでの違法な増床が疑われる場合には登記簿の確認が有効になるでしょう

登記簿には物件の階数や面積などの基本情報が記載されていますが、登記簿に存在しない階や部屋が現実の建物にある場合、それが違法建築である可能性が高まります。

登記情報と実際の構造が異なる点を注意深く確認することで、違法性の有無を判断する材料になるでしょう。

まとめ

違法建築物件になってしまうと、売却時などに大きな障害となりかねません。

そのため、特に築年数が古い物件などを購入する場合には注意が必要です。

実家などを相続で引き継いだ場合も違法物件かどうかの確認が必要な場合もあるので、心配な場合は専門家に相談するとよいでしょう。

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