空き家の売却時には税金に注意!売却にかかる諸費用は?
相続で受け継いだ実家に誰も住まなくなった場合、空き家にしたままの状態で長期間放置するよりも、早めに売却して現金に換える方が良いと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、売却時にかかる費用を把握していないと、想定していた以上の出費があり、期待していた売却利益が得られない場合もあります。また、特に理由もなく空き家を放置して売却時期を延ばすことにより、税金が割高になる可能性もあります。
この記事では売却時にかかる費用や税金、早めに売却することで得られるメリットなどについて解説します。
空き家を売却する際にかかる税金と費用
最初に、空き家に限らず戸建てなどの不動産を売却する際に支払う必要がある税金や費用について説明します。
(1)印紙税
印紙税は、売買契約書に貼る印紙にかかる費用です。
売買契約書は印紙税法に定められている課税文書に該当するので、規定された金額の印紙を貼らなければいけません。一般的に売買契約書は買主用と売主用の2部が用意され、各契約書に印紙を貼ります。
印紙税の金額は、売買価格によって変動します。売買契約書の印紙税額は以下の表のとおりです。
売買契約書記載金額 | 印紙税 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
※平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成された売買契約書に貼る印紙については、軽減措置がとられているため、印紙税が安くなっています。
(2)仲介手数料
一般的に、戸建てや土地などの不動産を処分する際、不動産会社に売却を依頼し、金額を査定してもらいます。
売主が査定金額に納得した場合、依頼した不動産会社が売買の募集を行うために媒介契約を締結し、募集、客付けを行い、買主を見つけて売買契約を締結するという流れになります。不動産会社は、売買契約を締結して、引き渡しが完了すると成功報酬として、買主、売主双方から仲介手数料を受け取ります。手数料の上限額は以下の表のとおりです。
売買金額 | 仲介手数料額 |
200万円以下 | 売買価格の5% |
200万円超400万円以下 | 売買価格の4%+2万円 |
400万円超 | 売買価格の3%+6万円 |
仲介手数料の上限は宅建業法で定められているため、上記の表の金額以上を請求されることはありません。
しかし、売却対象の不動産が空き家だった場合、普通の不動産と異なり、劣化具合や修繕箇所など、様々な調査が必要となります。そのため、規定の仲介手数料だけでは、調査費用が余分にかかり、利益が薄くなることが推測されます。
そこで、売主からのみ調査費用を請求できるよう宅建業法が改正されました。調査費用を含めた仲介手数料の上限額は以下の表のとおりです。
売買金額 | 仲介手数料額 |
200万円以下 | 18万円 |
200万円超400万円以下 | 18万円 |
400万円超 | 売買価格の3%+6万円 |
仲介手数料も売却時にかかる費用の中で大きなウエイトを占めるので、売却の際にはしっかり確認しておきましょう。
(3)抵当権抹消費用
ローン支払い中の空き家の場合、金融機関から抵当権が設定されています。抵当権とは、金融機関から借入れしている間の担保の一種です。
売却する際は、抵当権の設定を外す必要があるので、抵当権抹消費用がかかります。
抵当権は自分で抹消することも可能ですが、手続きに非常に手間がかかるため、司法書士に依頼して抹消の手続きを行うのが一般的です。司法書士に依頼した場合にかかる費用の相場は20,000円~30,000円程度です。
それほど大きな費用がかかるわけではないですが、把握しておきたい費用の一つです。
(4)譲渡所得に対する所得税と住民税
個人が不動産を売却して売却益が出た場合、その利益は譲渡所得となり、譲渡所得に対して所得税と住民税がかかります。売買の決済時までに必要となる費用ではありませんが、非常に高額になる場合もあるので、しっかりと把握しておきましょう。
個人が不動産を売却し、売却益が出た場合は利益に対して所得税と住民税がかかります。譲渡所得に対する所得税と住民税は、不動産を所有していた期間も大きく影響します。
具体的には、所有期間が5年超か5年以下かによって、短期譲渡所得か長期譲渡所得かに分類され、以下のように税率が変化するのです。
- 所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得):売却益に対して、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税が所得税の2.1%
- 所有期間が5年超の場合(長期譲渡所得):売却益に対して、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税が所得税の2.1%
短期譲渡所得と長期譲渡所得では大きく税率が異なりますので、所有期間に該当する税率をしっかりと理解しておきましょう。
売却時に使える3,000万円の特別控除とは
空き家を売却する際に、早めの売却を勧められる最も大きな理由の一つに、特別控除が使えなくなってしまう点があります。特別控除の制度の概要や利用できる要件について説明します。
(1)特別控除の制度概要
3,000万円の特別控除は、不動産を売却して利益を得た際、売却した不動産が居住用財産の場合は3,000万円までは課税対象から除外されるという制度です。つまり、売却益が3,000万円以下の場合、譲渡所得に対する所得税と住民税はかかりません。
前述したとおり、不動産を売却する場合に売却益が出た場合は、譲渡所得に対して所得税と住民税がかかります。短期譲渡所得の場合は、売買益の40%超の税金を支払うことになってしまいます。
しかし、売却した不動産を自らが居住の用途で使用していた場合は、譲渡所得金額から3,000万円を差し引くことが可能なので、支払う税金を大きく抑えることができるのです。
(2)特別控除が利用できる要件
3,000万円の特別控除は、空き家でも利用可能です。ただし、空き家の場合、特別控除を利用するためには「被相続人の居住用財産を売った時の特例」に該当する必要があります。特例を受けるための要件について説明します。
特定を受けるためには、対象となる不動産について以下の要件を満たす必要があります。
- 昭和56年5月31日以前の建物であること
- 区分所有物件ではないこと
- 相続が開始したばかりで、亡くなった人より後に誰も住んでいないこと
空き家の場合、これらの要件を満たした不動産でなければ特別控除が利用できません。
次に、相続における利用要件を見てみましょう。
- 相続を知った日から3年経過する日が属する12月31日までに売却すること
- 売却の価格が1億円以下であること
- 一定の耐震基準を満たしていること(満たしていなかったら更地にしなくては利用できない)
空き家を相続してから3年以内に売却の目途をたてなければ特別控除が利用できないという点には注意が必要です。空き家を利用しない場合に早急な売却を勧められることが多いのは、そこに大きな理由があるのです。
空き家を相続して売却しようとする際には、特別控除が使えるか否かで手元に残る利益に大きな差が出るということはしっかり認識しておきましょう。
(3)手続きの概要
特別控除を受けるための手続きにあたり、準備しなければいけない書類は以下の2つです。
- 譲渡所得の内訳書
- 住民票のコピー
譲渡所得の内訳書に関しては、税理士に依頼して作成するのが一般的です。自分で作成することも可能ですが、非常に面倒で手間がかかるので、税理士に依頼することが望ましいでしょう。
譲渡所得の内訳書と住民票のコピーが準備できたら、確定申告を行います。分離課税を選択して、確定申告すれば、手続きは完了です。確定申告の期間は期限が定められていますので、時間の余裕をもって書類を準備することを心がけましょう。
税金面における空き家を早く売却するメリット
空き家を早く売却した方がメリットは大きいといわれる理由として、特別控除の他に、税金面での恩恵があります。税金面におけるメリットについて説明します。
(1)固定資産税の支払いが不要
空き家を保有しているだけでかかる税金が固定資産税と都市計画税です。毎年1月1日時点の所有者に土地と建物の固定資産税が請求されます。各地方自治体が請求し、1年間で4回に分けて支払う税金で、計算方法は以下のとおりです。
- 固定資産税の計算方法:固定資産税評価額×1.4%
- 都市計画税の計算方法:固定資産税評価額×0.3%
空き家を売却して現金化すると、当然ながら固定資産税や都市計画税を支払う必要がありません。保有しているだけで税金を支払わないといけないのは家計にも負担となるため、早めに売却した方が良いといわれています。
(2)譲渡税特別控除の適用
前述したとおり、売却における3,000万円の特別控除が利用できるかどうかで、所得税と住民税の支払いが大きく変わります。例えば、売却益が2,500万円で被相続人が長期保有していた不動産を売却する場合、特別控除が利用できると譲渡所得に対する所得税と住民税はかかりません。
しかし、特別控除が利用できなければ、合計5,078,750円という高額の税金を支払わなければいけません。内訳は以下のとおりです。
- 所得税:2,500万円×15%=375万円
- 住民税:2,500万円×5%=125万円
- 復興特別所得税:375万円×2.1%=78,750円
このように、特別控除が使えるか否かで大きな差が生じます。相続の場合は、相続が開始されてから3年の間に売却しなければ特別控除が利用できないので、早めに売却を検討することが望ましいでしょう。
(3)相続税加算の適用
空き家の相続税を支払った後に売却した場合、3年以内に売却できると相続税加算の特例を受けることが可能です。
売却時の取得費として支払った相続税のうち一定額を取得費に加算できます。これにより、譲渡税を抑えることが可能です。ただし、売却における3,000万円の特別控除を利用している場合には、相続税加算の適用は利用できません。
どちらかを選択する必要があるので、税金面においてどちらを適用した方が有利になるかを計算し、選択することが大切です。
まとめ
この記事では売却時にかかる費用や税金、早めに売却することで得られるメリットなどについて解説しました。
空き家は早めに売却することで様々なメリットを享受することができます。特に税制面において、売却における3,000万円の特別控除や相続税の加算適用の選択により、税金負担を大幅に減らすことが可能なのです。
空き家の利用方法が定まらない場合、売却も一つの選択肢として検討するとよいでしょう。
空き家のまま保有するか売却するかお悩みの方は、一度、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。当サイトでは、相談内容、職種、地域などから、ご希望に合う専門家を検索できますので、ぜひご活用いただければと思います。