違法建築物件を相続した場合の対策・売却時の注意点も解説

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違法建築物件 相続

相続した不動産が違法物件だった場合、さまざまなリスクが存在します。

特に相続するときには、違法建築物ではないかどうかを確認する必要があります。

この記事では、違法建築の特徴や原因、売却時の注意点について詳しく解説します。

違法建築物件とは

まずは、違法建築物件の定義や、違法建築物件が生まれる原因などについて説明します。

(1)違法建築物件の定義

違法建築とは、建築基準法や都市計画法、各自治体の条例に違反して建てられた建物を指します

具体的には、建築時から違法な状態だったケースと、建築後に増改築を行い基準に適合しなくなったケースが挙げられるでしょう。

建築時からの違法建築では、規定の高さや容積率を超える建物や、接道義務を満たさない建物が典型例です。

一方で、後に増改築によって基準を逸脱した建物も違法建築とされます。

しかし、法改正によって、違法状態となった建物は既存不適格と指定されますので、違法建築物件よりも比較的、制限が緩やかといえるでしょう。

(2)最終の検査を受けていないときに違法建築になる

建築時に建築確認の許可を得て着工しても、最終の完了検査を受けていないと違法建築となる可能性があります

建築確認は計画が法的に適合しているか確認する手続きで、問題なければ確認済証が交付されるのが、建物が竣工するまでの流れです。

その後、建物完成時には完了検査を受け、申請通りの施工であれば検査済証が交付されます。

かつては完了検査率が低く、建築確認時の図面と異なる施工も見過ごされていました。

1998年には完了検査率が約38%でしたが、2015年には約90%へと改善されています。

つまり、築年数が古い物件ほど違法建築物件となる可能性が高くなるといえるでしょう。

(3)増築や改築も違法建築になる場合がある

新築時に法律を満たしていた建物でも、後の増築や改築で違法建築とされる場合があります

例えば、建ぺい率の限度いっぱいで建てた建物にさらに増築をすると、建ぺい率を超過し、違法状態になるかもしれません。

また、増築が10㎡未満であれば建築確認申請は不要なので、この規模での増築が許可なく行われ、結果的に法律違反につながるケースも少なくありません。

違法建築になる理由

ここからは違法建築となる理由について詳しく解説します。

(1)建ぺい率、容積率違反

建ぺい率や容積率の違反は、違法建築とされる主な原因のひとつです

建ぺい率は、土地面積に対してどれだけの建築面積が許可されるかを示します。

容積率は土地に対する建物の延床面積の割合を示している数値です。

相続した物件がこれらの基準を満たしていない場合、違法建築として取り扱われる可能性があるため、事前の確認が重要といえるでしょう。

(2)斜線制限違反

斜線制限違反も違法建築となる要因といえます。

斜線制限とは、道路や隣地との距離に応じて建物の高さを制限し、住環境を保護するための規制です

日当たりや風通しを確保することが、斜線制限の目的です。

これらの制限に違反すると、建築基準を満たさず違法建築とみなされる可能性があるため、建物を設計する際には十分に確認しましょう。

(3)接道していない

接道義務違反も違法建築となる要因のひとつです

建築基準法では、建物を建てるために、土地が幅4m以上の道路に2m以上接している必要があると定められています。

これを接道義務と呼び、建物の間口がこの基準を満たしていない場合、違法建築と見なされる可能性が高くなるでしょう。

接道義務を守ることで、緊急時の避難経路が確保され、安心して住める環境が整います。物件購入時や増改築の際は、接道義務の確認が重要です。

(4)ガイドライン違反

ガイドライン違反も違法建築の要因となり得ます

建築基準法だけでなく、多くの地方自治体では独自の条例や規定を設けており、駐車場の設置や防火設備に関するルールなど多岐にわたっているのが特徴です。

これらのガイドラインに適合していない場合、違法建築と見なされる可能性があります。

特に、地域の特性や安全基準に応じたルールは、居住環境の質を保つために重要です。

物件を購入する際や改築を検討する場合は、これらのガイドラインを確認し、違法建築にならないよう注意しましょう。

(5)未登記物件である

未登記物件も違法建築物件となり得る要因のひとつです

不動産登記法では、土地や建物を所有する際の登記が義務付けられています。

建物の新築や、相続や売却で所有者が変わった場合には、必ず登記を行わなければいけません。

しかし、登記にかかる費用や手間を避けようとするあまり、未登記のまま所有するケースが見受けられます。

未登記の建物は、法律上違法とみなされる可能性があるため、特に注意が必要です

必ず登記状況を確認し、違法建築のリスクを回避しましょう。

違法建築を相続した場合のデメリット

違法建築物件を簡単に相続してしまうと、その後苦労する可能性がある点について前述しました。

ここからは、違法建築を相続した場合のデメリットについて解説します。

(1)安全性に関するリスクが大きい

違法建築を相続した場合、最大のデメリットは安全性に関するリスクといえるでしょう

違法建築物件は、建築確認を受けていないことが多いため、相続人がそのまま住居として利用することは非常に危険です。

耐震性や火災時の安全性に欠ける建物である可能性が高く、住環境としての信頼性に問題があるからです。

万が一、事故や災害が発生した際には、相続人が責任を問われることもあるため、十分な注意が必要です

相続を考える際は、専門家の意見を参考にしながら、違法建築のリスクをしっかりと評価しましょう。

(2)行政指導が入る可能性がある

行政指導が入る可能性があることも、違法建築を相続した際のデメリットといえます

行政から使用禁止や移転、除却などの指導を受ける可能性があるため、長期間の使用は難しいといえるでしょう。

しかし、実際に行政指導が入るケースは稀です。建築中であれば建築基準法違反として対応できますが、完成した建物に対しては民法の問題が絡み、財産権の観点からむやみに手出しできません。

したがって、違法建築だからといって直ちに取り壊し命令が出るわけではなく、過度な不安を抱える必要はないでしょう。

相続した違法建築物件を売却する場合の注意点

相続した違法建築物件の売却を検討する場合、通常の物件よりも注意しなければいけない点があります。

ここからは、違法建築物件を売却する場合の注意点について詳しく解説します。

(1)売却が困難になる可能性が高い

相続した違法建築物件を売却する際は、売却が困難になる可能性が高いという点に注意が必要です

中古住宅を購入しようとする人々は、違法建築の物件を好んで選ばないからです。

不動産会社が売却を仲介する際、違法建築であることを知っている場合、告知義務が発生するので買主は違法建築物件であることを把握しています。

また、売主が不動産会社に違法建築の事実を伝えなかった場合、売却後に損害賠償や契約解除を求められる可能性もあるため、必ず事実を伝える必要があります。

(2)住宅ローンが組めない

相続した違法建築物件を売却する際の大きな注意点は、住宅ローンが組めないことです

ほとんどの金融機関は、違法建築に対する融資を認めていません。

買主が住宅ローンを利用することを条件としている場合、違法建築物件の購入は難しくなります。

結果として、売買が成立しない可能性が高くなるでしょう。

違法建築の物件は、買主にとってリスクが大きいとみなされるため、融資が受けられないことは売却における大きな障害となるでしょう。

(3)売却価格は安い

相続した違法建築物件を売却する際の重要な注意点は、売却価格が安くなりがちなことです

現金での購入を希望する買主が見つかることもありますが、違法建築であるため、価格が大幅に安くなってしまう傾向があります。

周辺相場よりもかなり安い価格での売却を余儀なくされるケースが多いでしょう。

最近では、不動産投資家が違法建築物件を安価に購入し、戸建て貸家として賃貸する事例も見受けられますので、以前よりも購入希望者は増加しているともいわれています。

しかし、相続した違法建築物件を売却する際には、価格が安くなることを理解しておく必要があります。

違法建築物件を相続した場合の対策

違法建築物件を相続する可能性が高い場合、相続前後でできる対策は異なります。

ここからは違法建築物件の相続対策について解説します。

(1)相続する前にできる対策

違法建築物件を相続した場合、事前に対策を講じることが可能です

特に、相続予定の不動産が違法建築物件であることが判明した場合、持て余してしまう可能性が高まります。

相続後は名義変更を行い、物件の管理や固定資産税の支払い義務が発生するのに、売却が難しく、二束三文にしかならないことが多いです。

そのため、相続しないという選択肢も視野に入れなければいけません。

相続放棄を行うことで、負担の大きい財産を引き継がずに済むため、特にマイナスの財産を抱えている場合には有効な手段です。

事前に情報を収集し、慎重に判断することが大切といえます。

(2)相続した後にできる対策

違法建築物件を相続した後は、適切な対策を講じましょう

まず、専門家に相談し、物件の法的状況やリスクを確認してください。必要に応じて、行政に相談し、是正措置を検討することも大切です。

また、賃貸や売却を考える場合は、違法建築としてのリスクを十分理解し、適切な価格設定を行いましょう。

これにより、将来的なトラブルを回避することが可能です。

まとめ

違法建築物件を相続した場合のデメリットや対策などについて解説しました。

相続する物件は自分たちで建てたわけではないので、相続するまで違法建築物件かどうかを把握していないケースが多いのではないでしょうか。

しかし、相続してしまうと、自分の所有となり、責任をすべて負うことになってしまいます。

違法建築物件だった場合、さまざまな制限やデメリットがあるため、マイナスの財産となってしまうかもしれません。

物件の相続時には、違法建築に該当しないかしっかり確認し、相続するかどうかを判断することをおすすめします。

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