空き家を相続放棄しても管理は必要!相続放棄の注意点を解説
空き家を相続する可能性がある場合、しっかり管理ができるかどうかを判断しなければ、所有するだけでもいくつかのコストを考える必要があります。
もしも管理できないと感じる場合は、相続する前に相続放棄を検討する必要もあるでしょう。
では、空き家を相続した場合どのようなコストを見ておけばいいのでしょうか?
また、相続しても管理できないと感じる場合には相続放棄を検討することになりますが、いつまでにどのように行えばいいのでしょうか?
この記事では空き家を相続する場合のコストや相続放棄の方法、相続放棄後の管理責任といった点について詳しく解説します。
目次
空き家を相続する場合、所有し続ける時に起こりうるコストとは?
空き家とはいえ、もしその空き家が実家だった場合などはなるべく相続して所有しておきたいと思うかもしれません。
しかし、空き家とはいえ所有するだけでいくつかのコストが発生します。
まずは、空き家を相続した場合のコストについて詳しく解説しましょう。
(1)固定資産税、都市計画税
不動産を所有している場合、ほとんどの場合にかかってくる税金が固定資産税と都市計画税です。
毎年1月1日時点の所有者に対して地方自治体から課せられる地方税で、不動産の所有者に対し納付書が送られますので所有者は年4回に分けて納付します。
固定資産税と都市計画税の計算方法は以下の通りです。
- 固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
- 都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
地方自治体によっては税率が異なる場合もありますが、多くは上記の計算方法で算出されます。
(2)維持管理費
空き家とはいえ、年数が経過するとともに経年劣化が起こり、さまざまな個所で修繕を行う必要があります。
もし、修繕を行わず空き家を放置しているとどうなるでしょうか?
劣化が進んでしまい、あっという間に廃墟化する可能性が高まります。
最悪の場合、倒壊のリスクを考えなければいけません。
倒壊まではいかなくとも、劣化が進んでしまうと住居として利用できなくなってしまう可能性も考えられます。
空き家をきちんと管理しこまめな修繕を行うことで劣化を防ぐことができますが、このような維持管理にもコストが定期的にかかることになるでしょう。
(3)水道光熱費
水道光熱費の支出も必要です。
空き家なので、水道や電気は使わないからこれらの費用がかからないと思うかもしれません。
しかし水道光熱費は契約している限り基本料金が発生します。
一旦契約を解除することも可能なのですが、空き家の間に水道や電気が利用できないとなると満足な管理はできません。
特に水道に関しては定期的に水を流さなければ、下水のにおいが上昇する原因やゴキブリやネズミなどの害虫が下水から上がってくる原因となってしまいます。
つまり、空き家を所有している以上、水道や電気の契約は継続しなければいけないので、これらのコストを支払わなければいけません。
(4)空き家管理料
遠方に居住してなかなか管理ができない場合、近年不動産会社が行っているサービスのひとつに空き家管理サービスがあります。
遠方で空き家の管理ができない人のために不動産会社が定期的に空き家を訪問し、換気や不良個所の発見などを所有者に報告するサービスです。
不動産会社によって料金は異なりますが一般的には月に1万円程度の費用が必要となります。
なかなか空き家に出向くことができずに空き家管理サービスを利用する場合には、これらのコストがかかるでしょう。
空き家の相続放棄、いつまでに、どのようにして行えばいい
上記のように空き家とはいえ所有するだけでさまざまなコストを考える必要があります。
とてもこの費用を負担できないという場合は、相続放棄をすることで空き家の所有権を放棄することが可能です。
では、相続放棄はどのような方法で行えばいいのでしょうか?
ここからは相続放棄の方法について解説しましょう。
(1)相続放棄を行うにはどのような方法があるの?
相続放棄とは、親などの被相続人が亡くなった場合、被相続人が所有している財産を相続人の属性にあわせて、一定の割合を相続するものです。
父親が亡くなり、母親と子供一人が相続人の場合、財産の1/2ずつを相続することになります。
相続人の人数や属性などで財産を相続する割合は異なります。
被相続人が亡くなったあとに、その財産を引き継ぎたくない場合相続する権利を放棄することが可能です。
これを相続放棄といいます。
(2)相続放棄ができる期限はいつまで
相続放棄は被相続人が亡くなってしまった後ならいつでもできるのかというとそうではありません。
基本的には相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄することを家庭裁判所に申述しなければいけません。
相続開始日を知った人は大きく3つに分けることができます。
- 被相続人が亡くなった日
- 被相続人が亡くなったことを通知された日
- 優先する相続人が相続放棄を行い自分が相続人となることを知った日
等が該当します。
相続放棄の期間は延長することも可能なのですが、基本的には3ヶ月をリミットとして相続放棄を行わなければいけません。
(3)空き家は相続放棄しても他の資産は相続できるの?
空き家だけを相続放棄することは基本的にはできません。
その他にも財産があった場合、全ての財産を相続する権利を放棄することになります。
どのような相続財産があり、自分が相続する財産はどの程度なのかをしっかりと把握した上で相続放棄を行わなければいけません。
(4)相続放棄は誰に依頼すればいい?自分でできる?
相続放棄の手続きは、前述したように家庭裁判所への申述が必要です。
自分で手続きを行うこともできますが、集める書類も多く、家庭裁判所へも出向かなければいけません。
そのため、多くは専門家へ依頼して相続放棄を行います。
専門家とは司法書士や弁護士です。
司法書士は相続放棄の代行手続き、弁護士は代理人として相続放棄の手続きを行うことができます。
それぞれ費用やできる範囲も異なりますので、自分の状況に合わせてどちらの専門家に依頼するのかを決めましょう。
空き家の相続放棄を行っても管理責任は残るのか?
相続放棄を行ったので、空き家の管理責任から逃れられると思う人がほとんどではないでしょうか?
しかし、いくら相続放棄を行ったとしても空き家の管理責任をそのまま負ってしまう場合があります。
ではどのような場合に相続放棄しても空き家の管理責任を負ってしまうのでしょうか?
相続放棄した後の空き家の管理責任について解説します。
(1)相続放棄しても空き家を管理する必要があるケースがある
被相続人の財産を相続放棄すると、相続する権利は他の相続人が受けることになります。
しかし、これら相続人がすべて相続放棄してしまうと、誰も管理する人がいなくなってしまうでしょう。
この場合、民法によると相続人が放棄したとしても管理責任を負うことになっています。
管理が難しいから相続放棄をしたのに、相続する人がいなければ管理責任だけは付きまとうことになってしまうのです。
相続放棄をする場合は、そのあと空き家はどうなるのかをしっかりと理解した上で相続放棄の手続きを取りましょう。
(2)空き家管理はずっと続くのか?
では、相続人がいない空き家は相続放棄してもずっと管理責任を負うのかといえばそのようなことはありません。
相続人がいない空き家の管理責任は、相続財産管理人が決定し相続財産管理人に引き渡すまでです。
相続財産管理人は、空き家を国に引き渡す作業を行います。
相続財産管理人の選任が必要ですが、家庭裁判所に申し立てを行わなければいけません。
相続財産管理人が選任され相続財産を引き渡すまで管理責任が続きます。
(3)相続人がいない空き家は国家に帰属する?
最終的には相続人がいない空き家は国庫に帰属することになります。
しかし、前述したように簡単に国が引き取るわけではありません。
相続財産管理人を選定し、さまざまな手続きを経て国庫へ帰属することになるのです。
すぐに国庫に帰属するわけではありませんので注意しておきましょう。
管理責任も放棄できる相続放棄の方法とは?
相続放棄のやり方によっては、相続と管理責任を放棄することが可能です。
ここからは、管理責任も放棄する相続放棄のやり方について解説します。
(1)相続財産管理人の選任が必要
相続人が全員相続放棄した空き家の管理責任を逃れるには、何度か述べた相続財産管理人を選任する以外にありません。
家庭裁判所に申し立てを行い相続財産管理人が選任され、相続財産の管理を始めた時点で管理責任はなくなります。
相続財産管理人の多くは弁護士から選任されますが、家庭裁判所が選任しますので、あなたが弁護士に依頼することはありません。
相続人が全員放棄した時点で、まずは家庭裁判所へ申し立てを行いましょう。
(2)申立てにかかる費用はどのくらいかかるの?
申し立てにかかる費用は基本的に一括払いです。
予納金額という名目で納付します。
予納金は空き家の状況や資産価値などによって異なるので一概にはいえませんが、一般的には、50万円~100万円程度のコストが必要です。
予納金額が納付されて初めて相続財産管理人が選任されますので、予納金額を納めない限り相続財産管理人は決まりません。
納付が先になりますので、まとまった金額を準備しておきましょう。
(3)いつまでたっても空き家が処分できなければどうなるの?
相続財産管理人が選任され、空き家の管理責任を免除された場合、もしも空き家の処分が長期化すると、相続財産管理人に追加の予納金額を支払う必要はあるのでしょうか?
基本的には、処分が長期化したとしても追加で予納金額を納付することはありません。
ただし、絶対ではなく後から財産が見つかったなどの特殊な事例では追加の予納金額を請求される可能性もあります。
しかし、当初依頼した空き家の処分が長期化しても追加の予納金額を支払うケースはほとんどありません。
(4)相続財産管理人はどの程度利用されているの?
相続財産管理人の申し立ては年々増えているのが現状です。
平成21年には13,000件程度でしたが平成30年には21,000件を超える申し立てが行われています。
そもそも、相続放棄の申し立て自体が増えていますので、数も増えていますが平成21年には相続放棄の件数に対し8.2%程度でしたが平成30年は9.8%と割合も増えているのです。
今後も、活用のめどが立たない空き家が増加してくると想定されていますので、相続放棄に伴い、相続財産管理人を利用するケースは増えてくるといえるでしょう。
まとめ
空き家を相続放棄したからといって必ず管理責任がなくなるわけではありません。
あなたが相続放棄した後の財産の行方をしっかりと把握しておく必要があります。
もし、だれも相続人がいなければ管理責任は背負ったままになる可能性が非常に高くなりますのでしっかりと理解しておきましょう。
相続財産管理人を選任してもらうことにより管理責任を免れますが50万円~100万円程度の費用が必要です。
財産をすべて放棄してなおかつ費用を支出することになりますので、相続放棄は最後の手段と考え、空き家の活用方法などを考えることも効果的といえます。