既存不適格物件は売却できない?売却時の注意点や高く売る方法を解説
家の売却などにおいて、築年数が古い建物などは既存不適格物件になっているかもしれません。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、自分の所有している住まいが既存不適格物件になっている場合、売却時になかなか高い金額で売却できない場合もあります。
そもそも既存不適格物件とは、どのような意味合いを持った物件なのでしょうか。
この記事では、既存不適格物件の意味や売却に影響する理由、高く売却する方法などについて詳しく解説します。
既存不適格物件の意味や事例
不動産の売買において、既存不適格物件といった言葉を耳にするようなケースも多いのでそう珍しいことではありません。
しかし、あまり不動産取引の経験のない一般の方にとってはあまり聞いたことがない言葉ではないでしょうか。
ここからは、既存不適格物件の意味や事例などについて解説します。
(1)既存不適格物件は現在の基準に当てはまらない物件
今までの法律が新たに改正される場合もあります。
今までは基準通りの仕様であったけども、法律の改正により、基準に適合しない建物になってしまうケースが考えられます。
既存不適格物件とは法律の改正により、基準に合わなくなった物件のことです。
よく違法建築物件と混同されてしまうことがあります。
既存不適格物件と違法建築物件では性質が全く異なりますので一緒に考えてはいけません。
違法建築とは、もともと建築に関する基準に違反して建てられた建物のことを指します。
既存不適格物件は、基本的に現行基準に合わせる必要がなく、そのまま居住や使用することが可能です。
違法建築の場合は、発覚してしまうと行政処分や罰則の対象となります。
では、どのような基準を満たさない場合があるのかについて、次の項目から解説しましょう。
(2)用途の基準を満たさない
土地などの不動産を所有していると、所有者が勝手にどんな建物を建ててもいいというわけではありません。
都市計画法に基づき、建てられるものが決まっており、例えば第1種低層住宅専用区域内では、病院やホテルなどは建てられないといった規制があります。
また、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を意味する容積率や敷地面積に対する「建築面積」の割合を意味する建ぺい率も都市計画区域内で定められています。
建ぺい率や容積率を超える建物は建てられません。
都市計画区域内の用途地域は、改正されたり、建ぺい率や容積率が変更されたりする場合があります。
容積率や建ぺい率の変更により既存不適格物件になるケースが事例のひとつです。
(3)耐震の基準を満たさなくなっている
耐震基準を満たしていないケースも挙げられます。
特に、1981年の改正は耐震基準に大きく影響しているといえるでしょう。
1981年に耐震基準が改正され、1981年以前の物件に関しては旧耐震基準物件、1981年以降の物件に関しては新耐震基準物件と区分されています。
1981年以前に建築された建物を新耐震基準に変更する必要はありません。
既存不適格物件には該当しますが、特に新耐震基準に合わせることなく住み続けることが可能です。
(4)接道義務を満たさなくなっている
建物を建築する場合、建築基準法に基づき、幅員が4メートル以上ある道路に間口が2メートル以上接してなければいけません。
建物を建築後、なんらかの理由により、接道している道路の幅員が4メートル以下になるケースや道路が接道しなくなるケースがあります。
この場合、現在の建物を取り壊してしまうと再建築することは不可能になり、既存不適格物件に該当してしまうのです。
現在の建物を残す場合は、引き続き住み続けることができます。
既存不適格物件が売却しにくい理由
既存不適格物件は、売却しにくいといわれています。
ここからは、既存不適格物件が売却しにくい理由について解説しましょう。
(1)建て替えができない
先ほど、道路が接道義務を満たさないようになると、建物が建てられなくなることを前述しました。
接道義務を満たしているときには建築できた土地が、接道義務を満たさなくなったので現在建っている建物を解体してしまうと建て替えをすることができません。
今の建物をリノベーションや全体改修などによって使い続けることになってしまいます。
しかし、築年数はリノベーションしても変わりません。
新築が建てられないとなると一気に需要は減ってしまうでしょう。
このように、新たな建物が建てられなくなったものを再建築不可物件といいますが、非常に売却がしにくくなってしまいます。
(2)住宅ローンが通らない
住宅ローンが通らない可能性が高くなる点が挙げられます。
マイホームを購入する場合、住宅ローンを利用して不動産を購入するケースも多く、住宅ローンを利用できるかどうかの審査に通らなければいけません。
住宅ローンの審査では、申込者の年齢や勤続年数、年収といったもののほかに物件の担保価値を設定され、借入額よりも担保価値が低いとみなされると住宅ローンが通りません。
既存不適格物件の場合は、現行の法令に沿っていませんので、どうしても担保価値として低くなってしまう傾向にあります。
住宅ローンが通りにくくなってしまう、もしくは通らないために売却しにくいといったことも理由のひとつです。
(3)価格が安くないと売却しにくい
不動産を売却する場合、エリアの相場や住環境などを参考にして、売却価格が設定されます。
しかし、既存不適格物件の場合は、相場の金額よりも価格設定が安く、相場通りの価格で募集してもなかなか売却できないケースが多いといえるでしょう。
これは、先ほど前述した住宅ローンの担保価値が低く設定されやすいため、価格も安くしなければ売却しにくくなってしまうからです。
既存不適格の内容によっても価格帯は異なりますが、再建築不可物件ともなると、大幅な価格値下げが必要なことも多いといえるでしょう。
(4)購入希望者が少なくなってしまう
既存不適格物件であることを、買主は売却する際事前に告知しておかなければいけません。
もし事前告知せずに不動産を売却した場合、契約不適合責任を問われることにもなってしまいます。
契約不適合責任とは、契約書に記載されていない不具合が発生した場合、売主が負う責任を指します。
代金減額請求や追完請求、契約解除だけではなく損害賠償なども請求される可能性がある責任です。
既存不適格というのは基本的に物件にとってマイナス要因になります。
購入希望者が少なくなってしまう要因となりますので売却しにくくなるといえるでしょう。
既存不適格物件を売却する場合の注意点
既存不適格物件は売却しにくい点について、いくつかの理由を挙げて解説しました。
ここからは、既存不適格物件における売却時の注意点について解説します。
(1)あらかじめ、買主に告知しておく
購入希望者が表れた場合にはあらかじめ告知しておく必要があります。
できれば、売買市場に出しているときに既存不適格物件であることを表しておくことが好ましいといえます。
買主が、売買契約締結後に既存不適格物件であることを知った場合、契約不適合責任を問われるかもしれません。
契約不適合責任は契約内容に適合しない内容で、取引に支障がある場合、買主は損害賠償請求や契約解除などの権利を実行することができます。
あらかじめ告知しておく必要があるでしょう。
(2)相場も参考にして売却価格を決定する
既存不適格物件は規制があり、購入後の取り扱いに注意しなければいけない点が多いので同じエリアで、同じタイプの物件よりも安い金額で価格が設定されます。
相場並みの売却金額に設定しているとなかなか買主が見つからないケースが多いといえるでしょう。
既存不適格物件を売却する場合は、一般的な相場よりも安い価格に設定する方が良いといえます。
(3)値引き交渉は最後の手段
不動産取引では、買主は少しでも安い金額で購入したいし、売主は少しでも高い金額で売りたいと思うものです。
既存不適格物件の場合、一般的な物件よりも、マイナス要因となってしまうため、相場より安い価格になりやすいことを前述しました。
相場より安い価格で募集したとしても、既存不適格物件であることを理由に買主から値引き交渉される場合があります。
安易に値引き交渉に応じてしまうと、さらに値下げを要求される場合も多いので、値引き交渉は最後の手段ということを理解しておきましょう。
最終的に値引きした金額ならば購入するという意思表示を示されて初めて値引きについて検討しましょう。
(4)買取も検討する
既存不適格物件は、制限や注意する点も普通の物件より多いことから、相場よりも安い金額を設定しなければいけませんが、それでも売却できるとは限りません。
不動産の売却は、売買市場に出さずに物件を売却することもできます。
不動産会社が買主となって、既存不適格物件を買い取ってもらう方法です。
わざわざ売買市場に出さずに売却ができ、不動産会社の仲介ではないので仲介手数料がかかりません。
ただし、売買市場に出して売却するよりも安い金額で買取られるのが一般的です。
買取の場合は、買取価格がどの程度なのかを事前に確認しておく必要があります。
既存不適格物件を少しでも高い金額で売却する方法
既存不適格物件は、一般的な物件よりも安い価格でなければ売却できないと前述しました。
ここからは、既存不適格物件を少しでも高い金額で売却する方法について解説します。
(1)更地にして売却する
既存不適格物件である建物を解体して更地にすると、純粋に土地だけの売却となりますので既存不適格物件の悪影響は受けません。
また、既存不適格物件は築年数が古いケースが多いです。
購入されたとしても解体されてしまう可能性が高いので、あらかじめ解体し更地として売却した方が、売れやすくなるでしょう。
(2)実績がある不動産会社に依頼する
所有している不動産を売却する場合、不動産会社に依頼して売却するのが一般的です。
不動産の売却は依頼する不動産会社の力も大きく、実績がある不動産会社に依頼した方が売れやすいといえます。
特に既存不適格物件は売買においてはマイナス要因になりますので、どの不動産会社に依頼するのかといった点がさらに重要になるといえます。
実績のある不動産会社に売却を依頼しましょう。
(3)既存不適格となっている原因を解消する
既存不適格となっている部分をあらかじめ解消しておくと、売却にとってのマイナス要因を無くすことになりますので効果的です。
場合によっては既存不適格物件を解消するためには高額な費用が必要になる場合もあります。
かかる費用が売却金額に上乗せできるかどうかのバランスを考えたうえで、費用をかけた解消を検討すると良いでしょう。
まとめ
既存不適格物件は、解消されなくてもそのまま住み続けることは可能なのですが、売却する場合に不利になるケースが多いといえます。
売却時には、買主へあらかじめ告知しておくことや、査定価格などに注意が必要です。
いっそのこと解体して更地として売却する方法や既存不適格である要件を解消することにより相場に近い金額で売却することも可能です。
費用と売却価格のバランスなどを考えたうえで少しでも高い金額で売却できるような対策が必要となります。