更地渡しとはどのような状態?メリットとデメリットを解説
空き家を所有していても、活用方法がなく売却することを検討した場合、更地渡しを選択することができます。
しかし、更地渡しにはどのようなメリットやデメリットがあるかよくわからない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、更地渡しの意味、メリットとデメリット、更地渡しに向いている不動産の特徴などについて詳しく解説します。
更地渡しの意味と注意点
まずは、更地渡しの意味と注意点について説明します。
(1)更地渡しとは?
更地渡しとは、土地の売買契約が成立した際に、売り手が建物を解体し、土地を更地の状態にしてから買い手に引き渡すことをいいます。
通常、更地とは建物がない状態で整地された土地のことで、更地渡しによって売却することで、土地の利用を制限する上物の存在を排除します。
つまり、土地の購入希望者は、建物がある場合よりも活用方法に柔軟性を持たせることが可能です。
また、土地だけの活用も可能となりますので選択肢が増えるなどが考えられます。
(2)更地渡しの費用はどちらが負担するのか?
更地渡しの費用は、売り手が負担する場合と買い手が負担する場合のどちらもあり、明確な決まりごとがあるわけではありません。
一般的に土地の売買で更地渡しとなると売主が負担することが前提です。
しかし、契約の条件や交渉の結果によっては買主が負担する場合もあります。
更地渡しの費用には、解体費用や整地費用などが含まれますので、どちらが負担するかによってコスト負担に大きな開きが出るといえるでしょう。
そのため、お互いの理解が一致していないと大きなトラブルにもなりかねません。
費用の負担が明確になるよう、売買契約の条件を事前にしっかりと確認しましょう。
(3)更地渡しにおける契約不適合責任の重要性
更地渡しの売買契約においては、契約不適合責任の内容をしっかりと理解しておくことが重要です。
契約不適合責任とは、売買契約時に土地に問題点があった場合に、売主が責任を負うことを指します。
例えば、売買契約時に地中に埋設された物が発見された場合、売主が解体や撤去の費用を負担しなければいけません。
契約の不適合責任を通知することにより、売主は以下のような責任を負うことになります。
- 契約解除
- 損害賠償
- 追完請求
- 代金減額
契約不適合責任は、土地の売買において重要な保護措置となります。
(4)更地渡しのトラブルは専門家へ
更地渡しの売買契約においてトラブルが発生した場合、何よりも専門家の助言を求めることをおすすめします。
土地の売買は大きな金額が動く取引であり、感情的な対立が発生することもあります。
弁護士や不動産専門家のアドバイスを受けることで、トラブルの解決に向けて適切な対処が行われるでしょう。
また、更地渡しの条件や費用の交渉においても専門家の助言を仰ぐことで、スムーズな売買契約の締結が期待できます。
更地渡しのメリットとは
ここからは更地渡しのメリットについて解説します。
(1)買主が興味を持ちやすい
更地渡しのメリットとして、土地のみを希望する買主が、興味を持ちやすくなることが挙げられます。
建物付きの土地だと、買主は購入後解体のコストを考えなければいけません。
一方、更地だと、解体のコストなどを考える必要がない分、買主が購入しやすくなるでしょう。
新たに新築の建物を検討している人にとって更地の土地は非常に魅力的な不動産です。
また、更地渡しの土地だと自宅の建設を計画する一般の層だけでなく、収益物件や商業施設の用地を求める投資家や事業主まで、幅広いニーズに対応できます。
更地渡しを許可することで、多様な層が興味を持ち、成約の可能性が高まるでしょう。
(2)建物に対する契約不適合責任から逃れられる
更地渡しには、建物に関する契約不適合責任から逃れられるというメリットもあります。
通常、売主は買主に引き渡した建物の欠陥や不具合などの瑕疵が後から見つかった場合、補修などの義務を負わなければいけません。
特に古い建物は欠陥などが発覚するリスクが高いので、売主は引き渡した後も完全に安心できない心境に陥りやすいでしょう。
しかし、建物を解体して更地にすることで、建物に対する契約不適合責任のリスクから解放されます。
更地渡しは、建物がかなり老朽化している場合に行われることが多く、売主にとっては安心感をもたらす要因となります。
(3)土地の瑕疵が見つけやすい
土地の瑕疵が見つけやすいという点も更地渡しの大きなメリットです。
地下埋設物は不動産取引において潜在的な問題を引き起こす可能性がありますが、更地渡しではこのリスクを軽減することができます。
建物を解体することで、地下埋設物を容易に確認できるため、売主も買主も安心して取引を進めることが可能です。
特に古い建物の場合、地下に埋まっているさまざまな埋設物や構造物が不明なままであることがありますが、更地渡しによってこのような問題を事前に解決することができます。
これにより、トラブルや紛争のリスクを最小限に抑え、スムーズな不動産取引を実現することが可能です。
(4)引き渡しまで固定資産税は上がらない
引き渡しまで固定資産税が上がらないという点も大きなメリットです。
古家を更地渡しの約束で売却する場合、売主は売却活動中に固定資産税や都市計画税が値上がりしないという安心感を得ることができます。
通常、建物がある土地には宅地並み課税の特例措置が適用されますので、固定資産税や都市計画税の減額対象です。
しかし、建物を解体して更地にすると、この特例措置は適用されなくなり、税額が上がります。
固定資産税の税額は最大6倍にもなりますが、更地渡しの約束をして売却活動をすれば、売主は建物が残ったままなので、税額を抑えたまま売却を続けることが可能です。
これにより、売主は安定した財政計画を立てやすくなります。
更地渡しのデメリットとは
ここからは、更地渡しのデメリットについて詳しく解説します。
(1)解体コストがかかる
更地渡しには解体のコストがかかるというデメリットがあります。
解体費用は解体業者によって異なるので、一概には言えません。しかし、一般的には百万円単位の大きなコストを準備しなければいけないでしょう。
そのため、更地渡しする場合は、複数の業者から見積もりを取って比較検討することが重要です。
また、解体後の1カ月以内には、建物がなくなったことを登録する「建物滅失登記」を行う必要があります。
この手続きは自分でも1,000円程度で行うことができますが、土地家屋調査士に依頼した場合は報酬として4〜5万円程度の費用をみておかなければいけません。
(2)売却前に解体すると固定資産税が上がってしまう
更地渡しのデメリットのひとつは、売却前に解体すると固定資産税が上がってしまう可能性がある点です。
固定資産税はその年の1月1日時点での所有者に課税されます。
しかし、年末までに解体工事を終えて建物抹消登記を行った場合、翌年の1月1日時点での固定資産税は小規模宅地の特例などの特例措置が適用されなくなります。
そのため、固定資産税や都市計画税が大幅に増額されてしまうでしょう。
年をまたぐ場合には解体工事や決済、引き渡し日についてよく検討し、相談するようにしましょう。これにより、余計な負担増を回避することができます。
(3)法的トラブルに注意しなければいけない
更地渡しのデメリットのひとつは、法的トラブルに注意しなければならない点です。
解体工事が引渡し日に間に合わない場合、法的トラブルに発展する可能性があります。
契約内容によっては、債務不履行による損害賠償請求や契約解除などの措置が取られるかもしれません。
また、万が一事故が発生すれば、問題が複雑化し、最悪の場合は裁判沙汰に至るケースも考えられます。
したがって、更地渡しを行う際には、計画的かつ適切な対応が不可欠です。
十分な準備と信頼できる専門家のアドバイスを受けることが重要といえるでしょう。
(4)更地にしたことでさらにコストがかかるケースもある
更地渡しする場合、さらなるコストがかかる可能性もあります。
地中に埋設された物の存在は事前に把握しにくく、工事が進むにつれて想定外のことが起こり、追加工事が必要になるかもしれません。
これにより、見積もり時の予算を大幅に超えることがあります。
また、過去に解体工事が行われた土地では、以前にあった建物の基礎が埋まっているケースも考えられるでしょう。
特に古い土地では、これらの残骸が見つかる可能性が高いため、事前の調査が欠かせません。
更地渡しによって予期せぬ追加コストが発生することがありますので、計画段階から潜在的なリスクを考慮し、適切な準備をすることが重要です。
更地渡しに向いているケースとは
ここからは更地渡しに向いているケースについて解説します。
(1)人が住めない状態の建物がある
更地渡しは、古くて人が住めない状態の建物に最適な方法です。
空き家になると建物の劣化が急速に進み、柱や建材の腐食、窓ガラスや瓦の破損などが起こります。
特に何十年も空き家で放置された場合、建物の状態は非常に悪化しているのが一般的です。
また、空き家対策特別措置法により、空き家の放置は勧告や指導を受けるリスクを負うことになってしまいます。
したがって、人が住めない古い建物がある場合は、更地渡しを検討することがおすすめです。
建物の老朽化や法的リスクを回避し、土地の有効活用が可能となります。
(2)強度面で心配がある建物
更地渡しは建物の強度に心配がある場合にも適した売却方法です。
例えば、シロアリの被害などで建物が弱くなってしまった場合、解体して更地渡しすることが望ましいといえるでしょう。
築年数が浅くても、シロアリの被害により建物の強度が不足している場合は、更地渡しを検討することがおすすめです。
強度の不足した建物は、台風や地震などの災害時に倒壊するリスクが高まり、人命の危険性も増します。
さらに強度不足の建物を引き渡ししたとすると、契約不適合責任を負ってしまうかもしれません。
そのため、安全性を考慮すると建物を解体して更地にすることが賢明です。
建物を放置せず、早めに対処することで、安心して土地を活用することが可能となります。
(3)事故物件
事故物件は、建物内で孤独死や自殺などのトラブルが発生した物件を指します。
このような物件は心理的瑕疵があるため、解体して更地渡しすることが望ましいといえるでしょう。
心理的瑕疵のある物件は、建物が綺麗に残っていても入居者を見つけることが難しくなります。
そのため、建物を解体し更地にすることで、買主を見つけやすくなります。
更地にした後であっても、売主は心理的瑕疵があることを買主に告知しなければいけません。
建物を解体することで土地のコストパフォーマンスを優先する買主を見つけやすくなるでしょう。
まとめ
この記事では、更地渡しの意味、メリットとデメリット、更地渡しに向いている不動産の特徴などについて解説しました。
更地渡しにはさまざまなメリットがある反面、費用などの問題もあります。
自分が所有する住まいの状態をしっかりと認識し、更地渡しにするか現状のまま売却するかを慎重に判断することが大切です。