誰も継がない実家の活用方法・相続放棄のポイントや活用方法について解説
実家を相続するとなったとき、誰も継がずに空き家となった状態のまま所有し続けることになるかもしれません。
誰も継がない実家を相続する場合、いくつかのリスクを負うことになるので、相続放棄を検討する方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、誰も継がない実家を所有し続けるリスクや、相続した場合の活用方法について詳しく解説します。
誰も住まない実家を所有し続けるリスク
まずは、誰も住まない実家を所有し続けるリスクについて解説します。
(1)維持費がかかり続ける
実家を誰も引き継がない場合でも、所有者は継続的な維持費を負担しなければいけません。
まず、空き家であっても毎年の固定資産税を納税する必要があります。年間数十万円以上支払うことも少なくありません。
加えて、自分たちで管理できず外注する場合、定期的な清掃や換気などの管理に関する費用がかかります。
自分たちで管理したとしても遠方に住んでいる場合、交通費などが必要になるでしょう。
火災保険や地震保険も毎年のコストとして計算しておく必要があります。
空き家は火災リスクが高いので、保険料は住居中の家より割高になる点も理解しておきましょう。
このような費用が累積するため、長期的に所有すると大きな負担となります。
(2)管理していなければ特定空き家となる怖れがある
誰も住まない実家を適切に管理しないと、自治体から「特定空き家」に指定されるリスクがあります。
特定空き家とは、放置によって倒壊の危険や景観悪化が発生し、近隣に迷惑を及ぼす空き家のことです。
2015年に制定された「空家等対策特別措置法」により、全国で問題となっている放置空き家を減らすための措置が進められています。
特定空き家に指定されると、まずは管理改善の助言・指導を受けますが、従わない場合、固定資産税の宅地並み課税から除外されます。
それでも改善されない場合、50万円以下の過料を請求されることになります。
(3)資産価値が目減りしやすくなる
誰も継がない実家を所有し続けると、資産価値が目減りするリスクがあります。
空き家は定期的なメンテナンスが行われないため、建物が劣化しやすく、老朽化が進行すると市場価値が大きく目減りするでしょう。
また、周辺の景観に悪影響を与えることから、近隣地域全体の不動産価値にも悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、空き家を放置していると、買い手がつきにくくなるため、売却が困難になる可能性も考えなければいけません。
これにより、固定資産税などの維持費用だけがかさみ、最終的には大きな損失に繋がる恐れがあります。
(4)近隣住民が被害を受ける可能性がある
管理が行き届かない空き家は、特定空き家として指定されるだけでなく、近隣住民や通行人への危害につながる可能性があります。
例えば、老朽化した空き家が倒壊し、隣家や通行人が巻き込まれる事故が発生した場合、数億円規模の損害賠償を請求される可能性もあり大きなリスクです。
これは、民法で定められた所有者の責任に基づくものです。
適切な管理を怠った結果、人命に関わる事態に発展するケースも少なくありません。
実家を所有するということは、同時に責任を持つということです。放置すれば、大きな損失や悲劇につながりかねません。
誰も継がない実家を相続放棄する際のポイント
誰も継がない実家は、必ず相続する必要もなく、相続放棄も選択肢のひとつです。
ここからは、誰も継がない実家を相続放棄する際のポイントについて解説します。
(1)実家だけの相続放棄はできない
相続放棄を検討する際、実家だけを放棄することはできない点に注意が必要です。
相続放棄とは、民法第939条に基づき「相続人としての一切の権利を手放す」ことを意味します。
つまり、実家だけでなく、自動車や預貯金など他の遺産もすべて相続放棄しなければいけません。
そのため、相続放棄を行う前に、親の遺産全体を正確に調査し、慎重に判断することが重要です。
放棄後は、財産だけでなく債務も引き継がないため、そのメリットとデメリットを十分に検討する必要があります。
(2)相続放棄しても管理責任が残る場合がある
相続放棄をしても、実家の管理責任が完全に消えるわけではない点に注意が必要です。
相続放棄を行ったとしても、次の相続人や相続財産清算人が正式に管理を引き継ぐまで、放棄した相続人にも管理責任が残ります。
つまり、実家が無管理状態にならないよう、他の相続人と同様に適切な管理を行わなければなりません。
完全に管理責任から解放されたい場合は、家庭裁判所を通じて相続財産清算人を申し立てる手続きが必要です。
(3)相続放棄の手続きには期限がある
相続放棄には申立ての期限があり、被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申立を行わなければなりません。
期限内に申立てができない場合、正当な理由があれば期限の延長が可能ですが、これも家庭裁判所に3ヶ月以内に申立てを行う必要があります。
例えば、遺産の全容が把握できない、または法定相続人の所在が不明な場合などは、正当な理由として認められる可能性があるでしょう。
相続放棄を検討する際は、早期に財産調査を行い、実家の売却なども視野に入れて迅速に対応することが重要なポイントです。
(4)財産清算人の選任が必要
誰も継がない実家を相続放棄する際には、相続財産清算人の選任が必要です。
相続財産清算人は、遺産を管理する第三者で、通常は弁護士などの法律家が選任されます。
この選任には家庭裁判所に申立てが必要で、予納金として100万円前後の支払いが必要です。
高額な予納金を支払うよりも、実家を売却する方が金銭的に有利な場合が多いでしょう。
相続放棄を通じて完全に管理責任から解放されるためには、相続財産清算人の選任とその費用を慎重に検討することが重要です。
誰も継がない実家を相続した場合の活用方法
相続放棄せずに実家を相続した場合にも、相続した実家を活用する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
実家の活用方法を6つ紹介します。
(1)売却する
誰も継がない実家を相続した場合、早期に売却することを検討するとよいでしょう。
相続後に実家を保持する限り、維持管理や固定資産税の納付が必要となり、手間や金銭的な負担がかかります。
実家を売却することで、これらの悩みから解放され、遺産分割もスムーズに進められるでしょう。
特に相続人が複数いる場合、不動産は分割が難しくトラブルの原因となることがあります。
相続財産の均等分配を考えると、現金化することで公平に分配できる点がメリットといえます。
(2)賃貸に出す
実家を相続した際に誰も住む予定がない場合、賃貸物件として活用する方法も挙げられます。
賃貸にすることで、空き家の管理や維持費の負担を軽減し、安定した収入源の確保が可能です。
賃貸に出す場合は、最初に物件の状態を確認し、リフォームや修繕が必要なら実施しましょう。
次に、賃貸市場の調査を行い、適切な賃料設定や管理方法を検討しなければいけません。
賃貸に出すことで、実家の価値を維持しながら、収益を得ることが可能です。
(3)解体する
相続した実家に誰も住む予定がない場合、解体を検討するのも選択肢のひとつです。
古い家屋が放置されると、劣化や管理費用の増加、周囲の景観に悪影響を及ぼす可能性があります。
解体によって、土地の価値を最大限に引き出すことができるでしょう。
解体後は、土地を売却することでまとまった資金を得ることも可能です。
また新たな建物を建設するための土地として再利用することもできます。
解体業者との契約や、必要な手続きを事前に確認し、スムーズな解体作業を進めましょう。
解体後の土地の利用法を計画することで、相続財産を有効に活用することができます。
(4)寄付する
立地や老朽化などが要因で、買い手が見つからない場合、寄付を検討してもよいでしょう。
寄付先としては、自治体、個人、法人が考えられます。
ただし、自治体への寄付はハードルが高いかもしれません。
自治体は固定資産税の収入があるため、寄付を受け入れると税収が減少することを懸念しています。
自治体への寄付を希望する場合は、まず関係部署に相談してから進めるとよいでしょう。
一方、個人や法人への寄付は比較的スムーズに行えることが多いです。
寄付することで、使わない実家を有意義に活用できるかもしれません。
(5)相続土地国庫帰属制度を利用する
相続した実家の土地を手放す手段として、2023年4月から導入された「相続土地国庫帰属制度」があります。
この制度をうまく活用できると、相続した土地を国庫に帰属させることが可能です。
特に、使わない土地や管理が難しい土地を手放す際に便利な制度といえます。この制度の申請にあたっては、以下の要件を満たす必要があります:
- 建物がない土地
- 担保権や使用収益権が設定されていない土地
- 他人の権利がない土地
- 土壌汚染がない土地
- 境界が明確で、所有権に争いがない土地
申請をしても審査により不承認となることがあるため、慎重な準備が必要です。
また、費用も発生するので事前に把握しておきましょう。
(6)セカンドハウスとして利用する
相続した実家をセカンドハウスとして利用すれば、自分や家族のリラックスした時間を確保し、または旅行先として活用できます。
この方法は特に、実家の立地がリゾート地や観光地近くにある場合に効果的です。
セカンドハウスとしての利用には、いくつかのメリットがあります。
まず、相続した実家を自分たちのリゾートとして活用できることで、宿泊費を節約できる点が挙げられるでしょう。
また、必要に応じて短期間の賃貸を行うこともでき、安定した収入源を確保する手段となります。
さらに、将来的にその家を売却する際にも、状態を良好に保っておくことが可能です。
ただし、セカンドハウスとして利用するには、定期的なメンテナンスや管理も必要になります。
空き家状態が長引くと劣化やトラブルの原因となるため、管理計画を立て、必要な修繕を行うことが重要です。
まとめ
誰も継がない実家を所有し続けるリスクや相続した場合の活用方法について解説しました。
空き家状態で相続すると、管理に時間やお金を浪費する可能性が高くなるので、相続放棄なども検討する必要があります。
相続放棄をしなくても、実家の状態や、実家がある地域などによっては効果的な活用方法が見つかる可能性もあるでしょう。