建設リサイクル法の対象工事や届出の流れを解説
持続可能な社会を目指すSDGsの考え方が全世界的に浸透する中、建築業界では建設リサイクル法が制定されました。
建設リサイクル法の内容や対象工事について詳しく知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、建設リサイクル法の概要、対象となる工事、届出の流れなどについて詳しく解説します。
建設リサイクル法の概要と対象工事
建設リサイクル法がどのような法律なのでしょうか。
建設リサイクル法の概要や対象となる工事などについて説明します。
(1)建設リサイクル法の概要
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)は、2002年に施行された法律で、建設工事に伴う廃棄物の削減と資源の有効利用を目的としています。
特に、環境への負荷を軽減し、循環型社会の構築を目指すことがその主な目的です。
大量に発生する建設廃棄物は不法投棄の問題もあり、この法案により廃棄物を資源へと再利用することで解決を図ります。
法の主な内容は以下の3つです。
- 建設資材の分別解体および廃棄物の再資源化の義務
- 工事の事前届出や元請業者から発注者への報告義務
- 解体工事業者の登録制度と監督体制の強化
法に違反した場合、20万円以下の罰金や1年以下の懲役、50万円以下の罰金などの罰則が科される可能性があります。
分別解体や再資源化義務、登録制度の遵守が求められ、違反には厳しい対応がとられる点が特徴です。
(2)建設リサイクル法の対象工事とは
建設リサイクル法の対象工事とは、取り扱う資材や規模などによって異なります。
すべての建設工事でこの法律が適用されるわけではなく、対象となる工事は、特定の規模以上で、かつ特定の資材を使っている建物となります。
どちらか片方だけが満たしていた場合は、建設リサイクル法の対象外となります。
(3)建設リサイクル法の対象となる資材は?
建設リサイクル法の対象となる資材は、特定建設資材を使用した構造物です。
具体的には、コンクリート、コンクリートと鉄の複合資材、木材、およびアスファルト・コンクリートが該当します。
これらの資材を使用した建物や構造物で、一定の規模を超える工事が行われる場合に、建設リサイクル法の適用対象です。
例えば、大規模な解体や新築工事では、これらの資材を分別し、再資源化することが義務付けられています。
この取り組みにより、建設現場で発生する廃棄物の削減と資源の有効活用が促進され、環境への負荷を軽減する役割を果たしているといえるでしょう。
(4)建設リサイクル法の対象工事となる規模は?
建設リサイクル法では、工事の種類ごとに対象となる規模が定められています。主な基準は以下の通りです。
- 建築物の解体工事: 床面積の合計が80平方メートル以上
- 建築物の新築・増築工事: 床面積の合計が500平方メートル以上
- 修繕・模様替え等のリフォーム工事: 工事費が1億円以上
- 建築物以外の工作物工事: 請負金額が500万円以上
工作物工事には、解体工事や宅地造成、擁壁工事、土木工事が含まれます。
これらの規模を満たす工事は、資材の分別や再資源化が義務付けられ、環境保護と廃棄物削減が進められています。
建設リサイクル法における届出について
建設リサイクル法の対象となった建設工事では届出が必要です。建設リサイクル法における届出について詳しく解説します。
(1)説明
建設リサイクル法では、工事の受注者は発注者に対して、分別解体や再資源化の計画について書面で説明する義務があります。
発注者が工事の環境負荷を理解し、適切な再資源化が実施されることが確保されることが目的です。
届出には、分別解体や資材の再利用方法、解体手順などが詳細に記載され、工事開始前に発注者へ説明が行われます。
この手続きは、工事の透明性を確保し、違法な廃棄や不正を防止するための重要なステップといえるでしょう。
(2)契約
建設リサイクル法では、発注者と受注者の間で交わされる契約書に、分別解体や再資源化の具体的な計画を明記することが義務付けられています。
この契約書面には、廃棄物の分別方法や再資源化の手順が含まれ、工事における環境保護と法令遵守が確実に行われるように定められていなければいけません。
明記された内容に基づいて、受注者は適切な解体作業を行い、資源の再利用を促進します。工事の透明性を確保し、トラブルを未然に防ぐために重要なポイントといえるでしょう。
(3)届出
建設リサイクル法では、発注者は工事を開始する7日前までに、分別解体や再資源化の計画を届出することが義務付けられています。
この届出は、建設廃棄物の適切な処理と資源の再利用を促進するために重要な手続きです。
届出内容には、解体や分別の方法、再資源化の計画などが含まれます。届出をすることで、工事が法令に従って進められているか確認され、環境負荷の軽減と不正行為の防止が図られます。
(4)完了報告
建設リサイクル法では、受注者が分別解体や再資源化を完了した際、発注者に対してその旨を書面で報告する義務について定められています。
この報告は、リサイクル作業が適切に実施されたことを証明するために必要な手順です。
さらに、受注者はリサイクル等の実施状況に関する記録を作成し、一定期間保存することも求められています。
この記録には、廃棄物の処理方法や再利用の詳細が含まれ、後々の確認や監査にも対応できるような仕組みです。
このプロセスにより、廃棄物の不法投棄や処理の不適切さを防ぎ、環境保護が徹底されます。
また、書面報告と記録の保存は工事の透明性を保つことに寄与するでしょう。
適切な手続きを守ることで、発注者と受注者の間での信頼関係が強化されることも期待されます。
建設リサイクル法のよくある質問と回答
建設リサイクル法に関して、よくある質問とそれに対する回答をまとめました。
(1)特定の廃材が出なくても対象になるのか
廃棄物の発生量は関係なく、たとえ工事中に特定の廃材が発生しなくても特定建設資材を使用した工事であれば、法の適用対象となります。
コンクリートや木材、アスファルト・コンクリートなどの特定建設資材を使用している場合、かつその工事が政令で定められた一定規模以上であれば、法の対象工事です。
この規定は、資材の分別解体や再資源化を徹底し、廃棄物の削減と資源の有効利用を推進するために設けられています。
したがって、工事の内容や規模によっては、たとえ廃棄物が出ないとしても、適切な手続きを踏むことが求められます。
(2)伐採木、伐根材も対象となるのか
法律の第2条第1項では、建設資材は「土木建築に関する工事に使用する資材」と定義されており、伐採木、伐根材、木製の梱包材はこの建設資材に該当しません。
そのため、これらは分別解体や再資源化の義務付けの対象外です。
ただし、伐採木や伐根材は産業廃棄物として扱われるため、廃棄物処理法に従って適切に処理する必要があります。
また、剪定枝については一般廃棄物に分類されますので、こちらも適正な処理が必要です。
一方、コンクリート型枠はリース材を使用し、現場で廃棄物として排出されない場合を除いて、分別解体や再資源化の対象となります。
(3)建築物以外の工作物には何があるか
建設リサイクル法において、建築物以外の工作物とは、土地や施設に定着する構造物で、道路や橋、トンネルなどが含まれます。
これらの工作物は建築物ではないものの、リサイクル法の対象として扱われることがあります。
具体的には、土木工作物や木材の加工・取り付けによる構造物、石材やコンクリートブロックを積み上げたもの、れんが構造物、形鋼や鋼板などの鋼材を組み立てた構造物などです。
また、機械器具の組立てによる工作物や浮き桟橋、現場で製作するブロックやケーソン、桁なども対象となります。
これらの工作物は、工事において分別解体や再資源化が必要な場合があり、廃棄物の適切な処理が求められます。
(4)複数の建物を解体する場合はどうすればいいのか
複数の建物を解体する際、建設リサイクル法の適用についての判断は、発注者が同一かどうかによって異なります。発注者が同一であり、同一の受注者と契約している場合は、全体の工事規模として判断が可能です。
例えば、住宅販売業者が同一敷地内に10棟の分譲住宅を建設する場合、10棟全体の床面積の合計が500平方メートル以上であれば、法の対象となる建設工事とみなされます。
一方で、受注者が異なる場合や、複数の工事箇所に分かれる場合は、個々の工事ごとに判断されるため、それぞれが規定の基準を満たしているか確認しなければいけません。
このルールは、工事の規模や形態によって適用が異なるため、事前にしっかりと確認し、必要な手続きを進めることが重要です。
(5)設備設置のみの工事は対象となるのか
建築設備は建物に付属するものですが、構造耐力上の主要部分ではありません。
そのため、設備単独の工事は建築物の修繕や模様替え工事として扱われ、工事請負代金が1億円以上であれば、対象建設工事に該当します。
しかし、建築物本体の解体や新築工事と一体として発注される場合は、建物の解体や新築が対象建設工事となるため、その関連部分である建築設備も同様に対象となります。
つまり、設備設置工事の扱いは、工事の発注形態や金額によって異なるため、注意が必要です。
まとめ
建設リサイクル法の概要、対象となる工事、届出の流れなどについて解説しました。
建築リサイクル法が施行され、これまで以上に再資源化のための処理に関する手続きが必要になります。
しかし、どの建築工事も対象となるわけでもなく、材質によっては適用対象外となるので、発注者も請負業者もしっかり把握しておかなければなりません。
各自治体などの公式サイトなどで公示前に対象になるかどうかを確認し、スムーズに対応するための準備をしておくとよいでしょう。