事故物件とは・相続した場合の効果的な活用方法も解説
事故物件を相続してしまうと、活用することができずに、維持費や税金などコストばかりかかってしまう可能性があるので、相続したくないという方も多いのではないでしょうか。
事故物件を相続したくない場合は、相続放棄などの対策を取ることも可能です。
この記事では事故物件の特徴や相続した場合の注意点、相続放棄などについて詳しく解説します。
事故物件の特徴と売却時の義務
まずは、事故物件の特徴と売却時にやらなければいけないことについて説明します。
(1)事故物件とは?
事故物件とは、過去に他殺や自殺などの出来事があったため、居住者や購入者に心理的な抵抗を生じさせる物件を指します。
これらの心理的な抵抗は心理的瑕疵と呼ばれ、物理的な欠陥や法律的なトラブルとは異なり、心理的な影響により購入や賃貸の決断に大きな影響を及ぼす欠陥です。
心理的瑕疵のある物件は、購入者や借主がなかなか見つからず売れ残るリスクが高い点が特徴のひとつといえます。
瑕疵には、心理的瑕疵以外にも環境的瑕疵(騒音や悪臭)や法律的瑕疵(複雑な権利関係)などがあるため、購入前には物件の詳細を確認することを心がけましょう。
(2)事故物件を売却するときに必要なこと
事故物件を売却する際、他殺や自殺など心理的瑕疵がある場合には、前述したように買主への告知義務があります。
特に相続した事故物件を売却する際には、殺人や自殺、特殊清掃を伴う放置死など、買主の購入判断に重大な影響を与える事柄を正確に告知しなければなりません。
告知を怠ると契約不適合責任が問われ、損害賠償請求や契約解除のリスクを負ってしまいます。
基本的に事故物件は、心理的負担から買手が見つかりにくいため、売却が難航することを理解し、相続放棄を含めて検討することが大切です。
なお、賃貸に出す場合も、心理的瑕疵が発生してから3年間は借主に告知が求められるので注意しましょう。
事故物件を相続したくない理由とは
事故物件の特徴について解説しましたが、なぜ事故物件を相続したくない人が多いのでしょうか。その理由について解説します。
(1)売却しにくい
事故物件を相続したくない理由のひとつとして、売却の難しさが挙げられます。
前述したように、他殺や自殺などの心理的瑕疵がある事故物件は、通常の不動産と異なり、買い手の心理的負担が大きく、売りづらいのが現状です。
売却までに時間と労力がかかることが多く、価格の大幅な引き下げが必要なケースも少なくありません。
また、売却時には買主への告知義務が発生し、心理的抵抗のある不動産を相続すること自体にリスクを感じる人も多いです。
(2)面倒なことが多い
事故物件を相続したくない理由のひとつに、手続きの面倒さがあります。
他殺や自殺など心理的瑕疵がある事故物件には、売却や賃貸に出す際に告知義務が生じるため、詳細な情報の把握と正確な説明が必要です。
また、心理的負担が大きい物件であるため、購入希望者が見つからない場合や、希望通りの価格で売却できないケースも多く、販売活動に長い時間と手間がかかるかもしれません。
さらに、売却までの間、維持管理費用や税金の負担も継続するため、経済的負担も考慮しておかなければいけないでしょう。
(3)立ち入りしたくない
事故物件を相続したくない理由として、物件への立ち入りへの抵抗を感じるケースが挙げられます。
人が亡くなった家に入ること自体に精神的な負担を感じ、近づくことさえ避けたいと考える人も少なくありません。
しかし、売却処分を目指す場合、家の中の片付けや貴重品・通帳など財産類の確認が必須です。
この作業は多大なストレスとなりがちで、特に他殺や自殺などの心理的瑕疵がある物件では、精神的な負担が一層大きくなります。
事故物件を相続放棄した方がよいケース
事故物件でも場合によっては売却できる可能性もあるので、事故物件だからといって簡単に相続放棄を決断してはいけません。
事故物件を相続放棄した方がよいケースについて解説します。
(1)そもそも遺産を欲しくない
遺産を受け継ぐことを望んでいない場合、相続放棄は賢い選択といえるでしょう。
相続人が複数いる場合には、亡くなった人の財産をどう分割するか話し合う遺産分割協議が必要です。
遺産分割協議には、他の相続人との話し合いや手続きが伴い、関係性が希薄な相続人にとっては大きな負担を感じてしまいます。
相続放棄を選ぶことにより、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、複雑な話し合いからも解放されるでしょう。
特に事故物件のような心理的負担の大きい不動産であれば、相続放棄によりスムーズに手放し、余計な問題から離れることが可能です。
(2)負債が多い
事故物件を相続する際、財産よりも借金などの負債が多い場合は、相続放棄を選択しましょう。
相続すると故人の財産だけでなく、借金などのマイナス資産も引き継ぐことになり、返済義務が生じるため負担が大きくなります。
特に事故物件は、心理的瑕疵により売却が難しく、価値が低いことが多いです。
そのため、負債の返済に追われるリスクを避けるためにも、相続放棄をすることで余計な負担から解放され、マイナス資産による経済的なリスクを回避できます。
相続開始後3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行えば、安心して不要な負担を避けられるでしょう。
事故物件の相続放棄を慎重に検討すべきケース
前述したとおり、事故物件でも相続したことによるメリットが多い場合もあります。
以下のような場合は、相続放棄は慎重に検討した方がよいでしょう。
(1)資産が非常に多い
資産が非常に多い場合には、相続放棄ではなく限定承認を検討した方がよいケースもあります。
限定承認とは、相続した財産が負債を上回るか不明な場合に、資産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ方法です。
たとえば、相続財産が1,000万円ある場合、後から発見された負債が1億円だったとしても、相続財産の1,000万円までしか返済義務が生じません。
ただし、限定承認には相続人全員の同意が必要で、弁護士費用などのコストがかかります。
手続きも半年から1年と長期にわたるため、手間や費用を負担に感じるかもしれません。
隠れた負債が心配な場合は、コストや時間といったリスクを考慮して、慎重に検討することが大切です。
(2)事故物件に対して思い入れがある
事故物件に対して思い入れがある場合、相続放棄をするかどうかじっくり検討しましょう。
特に幼少期から住んできた実家など、感情的な価値が高い物件では、手放したくないという気持ちが強くなることがあります。
しかし、事故物件の場合、心理的瑕疵が原因で、売却や賃貸が難しくなる可能性が高いです。
買主や借主は、事故物件を利用しますので、心理的瑕疵が発生する要因に対して嫌悪感を抱くことが多く、結果的に空室が続くリスクが考えられます。
物件を手放したくない気持ちだけで相続を選ぶのではなく、実際にどのように活用できるのか、慎重に判断しなければいけません。
相続後の選択肢をしっかりと考え、後悔のない決断をすることが重要です。
事故物件を活用する方法
事故物件だったとしても上手く活用することにより、相続人の収入アップに寄与する場合もあります。
ここからは、事故物件を活用する方法について詳しく解説します。
(1)トランクルーム
事故物件を有効活用する方法のひとつとして、トランクルームとしての運営が挙げられます。
事故物件を解体して更地にした後で、メンテナンスが容易な屋外型トランクルームを設置すれば、低コストでの運営が可能です。
トランクルームは管理がしやすく、手間をかけずに運用できるというメリットもあります。
事故物件の心理的瑕疵を考慮しつつ、収益化の手段となる選択肢といえるでしょう。
(2)駐車場
事故物件の活用方法として、駐車場運営は非常に有効な選択肢です。
事故物件自体を解体することにより、心理的瑕疵の基となるものが除外できます。
また、車の利用が多い地域では、駐車場に転用することで収益化を見込めます。
車を停めるスペースさえ確保できれば、解体や地面の舗装を経て、最短1ヶ月程度で運用が可能です。
駐車場は事業の撤退や変更が容易で、簡易的な区分けを行うだけで、将来的に別の用途への転換もできるでしょう。
駐車場経営に関しては、フランチャイズや管理会社も多数存在するため、手間をかけずに運営したい方は専門家に相談することをおすすめします。
(3)コインランドリー
コインランドリーは近年、有効な土地活用方法として注目されています。
大型洗濯機を設置することで、単身者だけではなく、ファミリー層の利用も期待できる点が特徴です。
住宅街であれば、近隣住民のニーズに応えられるため、一定の需要が見込まれます。
また、大型商業施設の近くに位置すれば、買い物ついでに立ち寄るユーザーも増えるでしょう。
設備を導入した後は、定期的な掃除を行うだけで運用できるため、管理が比較的楽なことも大きなメリットです。
事故物件の解体が必要ですが、心理的瑕疵の原因が取り除かれる点も大きなプラス要因といえるでしょう。
(4)買取業者に売却する
心理的瑕疵があるような事故物件は、一般の不動産市場で売却することは難しいですが、専門の買取業者に買取を依頼することは可能です。
買取業者なら、迅速かつスムーズな取引が期待できるでしょう。
買取業者は即金での取引が可能な場合が多く、早急に資金が必要な方にも適しています。
ただし、買取価格は市場価格よりも低くなることが一般的なので、相場価格での売却は難しいでしょう。
まとめ
事故物件を相続することになる場合、さまざまなデメリットがあるため、相続後、思わぬ苦労を強いられる可能性があるという点に注意が必要です。
ただし、事故物件だからといって、安易に相続放棄を選択してしまうと、不動産活用による収益化できる資産を手放すことになるかもしれません。
事故物件を相続する場合、相続放棄も含めじっくりと検討することが大切です。
専門家の意見も求めながら、効果的な活用方法なども含めて判断しましょう。