空き家の老朽化によるリスク・効果的な老朽化対策とは
近年、日本では少子高齢化が進み、総住宅数が総世帯数を上回ったことにより、空き家が増加し、社会問題化されています。
介護施設の利用者数の増加や、団塊の世代による相続が急激に進んだことも原因といわれています。
総務省の統計では、2033年には総住宅数の3割超が空き家になる可能性があると予測されています。
空き家が今後さらに増加して老朽化することにより、さまざまな問題の発生が想定され、空き家の老朽化対策は今後欠かせないものとなるでしょう。
この記事では、空き家を放置することによるリスクや老朽化対策、処分方法などについて解説します。
空き家が老朽化する理由
空き家が老朽化する理由として、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。最も大きな理由と思われる2点について詳しく説明します。
(1)換気されない
老朽化が進む大きな要因の一つとして、換気されないという点が挙げられます。
実は、換気を行うだけでも建物の維持管理には大いに役立っているのです。特に木造の戸建ては換気をしていないと、あっという間に劣化してしまいます。
換気しないということは新鮮な空気が流れないということに繋がります。空気がよどむことで、ホコリがたまり、湿気が解消しません。
特に梅雨時期に換気を行わなければ、部屋内にカビが発生し、害虫が発生する原因となってしまいます。
カビによる被害は人体だけに及ぶものではなく建物内部にも甚大な被害を及ぼすのです。
特に木造戸建ての場合は、柱や床、壁といったいたるところに胞子がへばりついてしまい木材の劣化を早めます。木材自体も適度な換気がなければ耐久性が大きく損なわれてしまいます。
空き家が遠方だったり、面倒くさくてなかなか換気に行かなかったりしてしまうと、上記のような問題が発生し、一気に老朽化してしまいます。
(2)掃除されない
空き家の掃除を行わないことも、老朽化を大きく速める原因となります。
掃除をしないと、ほこりがたまって害虫が発生しやすい状態になり、換気しない場合と同様に木材の劣化を早めます。
また、掃除をしないと、庭や植木などがある戸建て住宅では、雑草が伸び放題、木の枝が生え放題となってしまい、ハチや他の害虫が発生する原因となります。
木の枝が伸び放題になり、隣の敷地や道路まで伸びると近隣住民にも迷惑をかける場合もあります。
また、掃除をしないと、建物の傷み具合がわかりません。例えば、外壁のひび割れに気づかず放置してしまうと、ひび割れ箇所に雨が入り込み、劣化を速める原因になります。
空き家の老朽化を防ぐためには、掃除をこまめに行うことも非常に大切なことだといえるでしょう。
空き家を放置した場合のリスク
空き家の老朽化が起こる要因を前述しましたが、老朽化することにより、どのようなリスクがあるのでしょうか。主なリスクは以下の3点です。
- 雨漏りリスク
- 害虫リスク
- 倒壊リスク
これらの3点について掘り下げて説明します。
(1)雨漏りリスク
空き家の状態が長く続き、管理が十分に行き届いていない場合、建物の傷み具合に気が付きません。
実際に住んでいると、建物の傷み具合に気づき、早急に対策を打てるのですが、住んでいないと傷みに気付かずに放置してしまう可能性があります。
外壁のひび割れを放置してしまうと雨水が内部に侵入してしまい、木造の場合は木材の腐食、鉄筋の場合は内部の鉄筋の腐食を早めてしまいます。
また、雨漏れが起こっていても空き家の場合は気づくことができないため、雨漏りにより建物内部の床や壁にも雨水が侵入し、劣化や腐食を早めてしまうのです。
雨漏りに気づき修繕したとしても、一旦雨水によって水分を大量に含んだ木材は、反りや縮小といった形状変化を起こしやすく、建物に大きなダメージを与えます。
木材と水分は相性があまり良くないため、耐久性を大きく損なうおそれがあります。
(2)害虫リスク
換気や掃除の不備により、カビが増殖すると、シロアリなど建物の劣化に大きな影響を与えてしまう害虫を発生させる要因となります。シロアリは、木材を食べてしまうので当然ながら建物の老朽化を加速させてしまいます。
また、シロアリだけではなく、ネズミが出る場合もあります。ネズミが出ると木材を噛むため、老朽化の原因となります。また、猫が入り込む可能性も考えないといけないでしょう。猫は爪を研ぐために木材を削ります。
(3)倒壊リスク
雨漏りリスクや害虫リスクを放置すると老朽化が加速し、最悪の場合は建物が倒壊する可能性もあります。
木材が急激に老朽化すると耐久性が大幅に落ち、台風や地震などの自然災害により倒壊するリスクが高まるのです。近隣の家は倒壊する程ではないレベルの災害でも、建物の劣化が進んで老朽化している空き家は倒壊する可能性があります。
建物が倒壊した場合、近隣住民や建物が被害を受ける可能性もあります。数々のリスクを放置した結果、最後には倒壊という最悪の結果を招くおそれがあるという点はしっかり認識しておきましょう。
空き家になる前に検討すべきことと老朽化対策
空き家が老朽化すると様々なリスクを抱えることになり、余計な手間や費用もかかります。
空き家の老朽化リスクの回避策として、空き家になる前に検討すべきことと、空き家になった場合に行うべき老朽化対策について説明します。
(1)事前に出口を決めておく
空き家になる原因として最も多いのは実家の処遇です。親が亡くなって実家相続したケースや、親が介護施設に入所したため空き家状態になるケースが考えられます。
急に亡くなる場合などを除くと、空き家になる前に、実家を所有した時のことを考える時間の余裕はあるでしょう。空き家になる前にあらかじめ出口を想定しておく必要があります。
不動産物件における出口とは、主に投資物件への投資を終えるときに使われる言葉で、売却や保有など最終的な運用方法を設定するときに使われます。
居住用の建物も同様に、最終的な活用方法をどうするか決定する際に用いられます。出口戦略は不動産において最も大切なポイントです。
あなたが、空き家となりそうな建物を保有する際、売却するのか保有して活用するか事前にしっかりと検討しましょう。
(2)空き家になった場合のメンテナンス法
保有すると決めた場合、空き家になった際のメンテナンスをしっかりと考えておく必要があります。
空き家が近い場所にあるなら、最低でも1カ月に1回は換気や掃除をすることで、老朽化を防ぐことができます。
遠方に空き家があり、自分で掃除などのメンテンナンスを行うのは難しい場合は空き家管理サービスの利用を検討するとよいでしょう。
最近は空き家の増加が社会問題化しているので、不動産管理会社の多くが空き家管理サービスを提供しています。
毎月の費用はかかりますが、建物の老朽化が進むと、多額の修繕費用や解体費用がかかる可能性があります。
そのようなリスクを避けるためにも、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。
(3)リノベーションして賃貸できる可能性も
空き家を活用する方法の一つとして、空き家をリノベーションして賃貸できるかどうかを検討してもよいでしょう。
最近は、スローライフが提唱されて田舎で居住したいという需要も増えていて、古民家風の建物も人気があります。
古い建物だから賃貸には出せない、リノベーション費用が高額になるなどの理由で賃貸をあきらめる必要はありません。
少し手を加えて古民家風にする、便利な場所にあるなら賃貸や民泊として活用する等の方法で建物を再生・活用することが可能です。
ただし、賃貸の需要があるかどうかという点は不動産に詳しくなければわかりません。地元に密着している不動産会社なら賃貸の需給状況をよく把握しているので、相談してみるとよいでしょう。
老朽化した空き家を処分することは可能か
不動産の出口戦略の中には、売却という選択肢もあります。使わなくなった空き家に対し、維持管理にかかる費用や固定資産税など余計な費用がかかる場合は売却を検討してもよいでしょう。
売却する場合の売り出し方法について説明します。
(1)一般売買で売り出す
最も一般的な売却方法は一般売買です。不動産会社に依頼して、建物がある状態のまま売り出します。
どの程度の価格で売れるのか事前にある程度把握したいという方は、不動産一括査定サイトを利用するとよいでしょう。
ネット上で指定された情報を入力すると複数の不動産会社が査定し、査定価格を提示してくれます。
その中で、最も査定価格が高い不動産会社を選択してもよいですし、サービスが自分に合うと感じた不動産会社を選択してもよいでしょう。
売却価格が決定し、売却に関わる不動産会社が決まれば、あとは購入者を募集して売れるのを待つだけです。
(2)更地にして売却
売却に際し、ネックとなるのが、築年数が古くなった建物が残っているケースです。
特に空き家になり老朽化した家の場合、住みたいという人は少なく、新たに新築の戸建てを建て直すことを目的として購入する人が多いでしょう。
しかし、解体費用が余分にかかることを懸念し、購入をためらう方も多いのです。このような購入層を逃がさないためにあらかじめ更地にして売却する方法があります。
とても住めないような状態の家があるのなら、事前に更地にしておき、購入しやすい状態へしておくことは効果的です。
ただし、更地にするためには解体費用を先に支払う必要があるので、多少の支出は覚悟しておかなければいけません。
(3)買取業者に買い取ってもらう
一般売買に出してもなかなか売れない場合は、不動産買取業者に買い取ってもらうという方法を検討してもよいでしょう。不動産買取業者は、不動産を買取ってリノベーションや売却などの運用を行います。
買取業者に買い取ってもらうメリットは、スピードが速いという点です。デメリットは、相場よりも低い価格での買い取りとなることです。
しかし、なかなか売れない不動産をいつまでも保有していても余計や費用がかかるだけなので、買取業者に買い取ってもらうことが結果的にプラスになる場合もあります。
まとめ
この記事では、空き家を放置することによるリスクや老朽化対策、処分方法などについて解説しました。
空き家状態のまま保有しておきたい場合は老朽化対策が欠かせません。老朽化対策のためのメンテナンスにかかる費用が気になる場合は、早めに売却等を検討してもよいでしょう。
空き家のまま保有するか売却するかお悩みの方は、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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