空き家の解体の手続・必要な届け出や申請方法を解説
長い間放置している空き家。
「そろそろどうにかしなければ傷みが激しくなっている。」
「利用する可能性も低いが、解体しようと思っていても解体の費用がわからない。」
「どのような手続きをしたらいいかわからない。」
といった理由で放置しっぱなしの人も多いのはないでしょうか?
空き家を使わないのであれば、いっそのこと解体して更地にしておく方が、売却面や今後の土地利用において有利になる場合が多いのです。
では、どのようにして解体の手続きを行えばいいのでしょうか?
また、どのような業者を選べばいいのでしょうか?
この記事では空き家を解体した場合における届け出や手続き、解体業者の選び方といった点について詳しく解説します。
空き家の解体に必要な届け出や申請について
まず、空き家解体において知っておくべきことは届け出や申請の方法についてです。
ここからは、届け出の種類などについて解説します。
(1) 建設リサイクル法による届け出
解体に伴う届け出は、建設リサイクル法が大きく絡みます。
建築リサイクル法では、解体しようとする空き家の床面積が80㎡以上であれば届け出をしなければなりません。
届け出先は、その建物がある地域の自治体です。
建築リサイクル法は、資源の有効保護やリサイクルといった観点から制定された法律で、
工事着手の7日前までに都道府県知事に分別解体等の計画等を届け出なければいけません。
あなた自身が届け出を行う必要はなく、解体業者が届け出を行います。
届け出の内容としては、解体にかかる費用と再資源化にかかる費用などを明記することです。
適正に資材が分別され、再資源化などの観念がきちんと守られているのかといった点がチェックされます。
届け出自体に費用はかかりません。
この届け出を怠っていた場合は、罰金の支払いなどといった罰則も制定されています。
(2) 道路使用許可の届け出
道路使用許可が必要な場合があります。
解体する場所が十分な広さがあり、敷地内で作業が問題なく行われる場合は必要ありません。
しかし、市街地や敷地が狭い場合、どうしても前面道路を利用した解体工事が必要な場合があります。
この場合に必要なのが道路許可申請です。道路許可申請は、最寄りの警察署で許可を得ます。
この申請もあなたが行う必要はありません。解体業者が申請を行います。
しかし、道路を使用する場合には少なからず近隣に迷惑をかける場合がありますので、
近所へのあいさつなどに関してはあなたが行った方がいいかもしれません。
解体業者が代行して行う場合もあります。
一時的にでも道路の使用に支障をきたす場合のことも考え、道路の使用許可と一緒に近隣へのあいさつ回りも行っておきましょう。
(3) ライフラインや各引き込みの停止申請が必要
解体工事を行う前にしておかなければいけないことに、電気やガス、水道といったライフラインの停止があります。
建築リサイクル法の届け出や道路許可申請は、解体業者が行いますがこれらのライフライン停止はあなたが行わなければいけません。
ただの停止ではなく、解体工事を伴う停止となります。
その旨を各届け出先にしっかりと伝えなければいけません。
なぜなら、解体に伴い敷地内までの引き込み個所に関する処置が必要になる場合があるからです。
特に、ガスに関しては工事が必要になる場合が非常に多いので、連絡を怠ってはいけません。
解体工事前にライフラインの処置が必要になりますので、少し余裕を持った届け出が必要といえるでしょう。
解体業者の決定方法はどうすればいい?
解体工事をスムーズに満足できるものにするためには、信用がおける解体業者に依頼することが欠かせません。
しかし、解体業者への依頼など今までしたことがないからどの解体業者を選んだらいいのかがわからないといった人も多いのではないでしょうか?
ここからは、解体業者の選び方について解説します。
(1) 複数社から見積もりが必要
絶対に行わなければいけないポイントの一つとして挙げられるのが、1社に固執しないということです。
特に費用面において、1社だけで判断してしまうと、解体費用が妥当なのかどうかが全くわかりません。
できれば複数社から見積もりを取って妥当な相場や金額を把握する必要があります。
しかし、複数の業者なんて知らないという人や時間がかかってヒマがないといった悩みがある人もいるでしょう。
そのような人におすすめなのが解体一括見積もりサービスです。
インターネット上に必要な情報を入力すると、その情報をもとに複数の解体業者が見積もり査定書を提出します。
数日で複数社からの見積もりをもらうことができますので大変便利です。
このようなサービスを利用して、適切な見積もりを把握することができます。
(2) 解体方法について詳しく確認する
解体において、金額が安いところを選びたいというのは誰しもが思うことでしょう。
しかし、金額だけで決めてしまうのは早計です。
どのような解体方法を行うのかをきちんと確認し理解しておく必要があります。
また、よくわからない説明だと、解体作業を依頼するのに不安を感じるかもしれません。
わかりやすく、誠実な対応をしてくれるかどうかといった点も解体業者選びでは欠かせない判断材料の一つです。
(3) 近隣への対策などもポイント
前述しましたが解体は、近隣への影響も考える必要があります。
近隣住民が解体作業の音やほこりを必要以上に嫌がってしまうかもしれません。
近隣への配慮や、影響をどのように盛り込んでいるのか?
道路の使用が必要なのかどうかといった点を詳しく打合せし、あなたの要望をしっかりと工事に反映できる業者選びがポイントです。
また、前述しましたがあいさつ回りなどまで行ってくれるのか?
あなたが行う場合にいいアドバイスを送ってくれるのかといった点もよく聞いておいた方がいいでしょう。
家具や家電の処分、解体とまとめてできる?
空き家には、使っていないとはいえ、家電や家具といったものが置きっぱなしとなっているケースも少なくはありません。
空き家を放置している理由の一つとしてこれらの家具や家電の置き場所や処理に困って、そのままにしているという人も多いのです。
そこで、どうせ解体するのであれば一緒に家具や家電も処分してほしいと考える人も多いのではないでしょうか?
一緒に解体して捨てるのだから費用もかからないだろうとの考えから、家具家電の処分をまとめて頼む人も多いのです。
では、家具や家電の処分は解体とまとめてできるのでしょうか。
(1) 別途費用が請求される可能性が高い
基本的に家具や家電の処理を解体工事と一緒に行う場合は、別途費用が請求されることが多いといえるでしょう。
これは、解体業者ができる範囲などが影響しているのが原因です。
解体業者の作業範囲は、建築資材などの産業廃棄物に伴うごみの運搬や処分までで、
家庭ごみにおける一般廃棄物は取り扱っていないことが多いといえます。
つまり処分したくとも解体業者では一般廃棄物の許可を取っていない限り、廃棄したくてもできないのです。
許可を取っていたとしても産業廃棄物と一般廃棄物では取り扱いが異なるため別料金となってしまいます。
そのため、別途費用が請求されてしまうのです。
(2) ミンチ解体は原則廃止されている
昔、解体の主流として行われていたのがミンチ解体と呼ばれるものです。
ミンチ解体とは、建築物を一気に重機などで取り壊し、特に分別もせずに廃棄する工法で、解体費用や時間が大きく軽減、短縮が可能でした。
しかし、建築リサイクル法が施行された以降は、きちんと分別して廃棄することが義務付けられたため、ミンチ解体はできません。
建築リサイクル法施行前ならば、家具や家電も一気に解体し、分別せずに廃棄しても罰則はありませんでしたが建築リサイクル法施行後は当然禁止となっています。
そのため、家具や家電においても一緒に解体することは事実上不可能といっていいでしょう。
(3) 木造家具は一緒に処分してくれる可能性も
木造の家具などにおいては一緒に処分が可能な場合があります。
とはいえ、先ほども述べましたが、一般廃棄物扱いとなるため別途費用はかかってしまいます。
一番費用を安く抑える方法としては、自治体のごみ処分を利用すると安価です。
自治体のごみ袋に入る程度まで自分たちで分別し収集日に捨てておくことや家電に関しては、ごみのシールを貼って処分してもらう方法が安くあがります。
どうしても処分する時間がない時などは多少高額になっても解体業者に依頼することもいいかもしれません。
建物解体後に行う手続きは何がある
ここまでは、解体するまでの届け出や解体業者の選び方について言及しました。
解体後、建物が無くなった状態になるわけなのですが、特に何かを行う必要はあるのでしょうか?
(1) 建物の滅失登記が必要
解体後も必要なこととして建物の滅失登記を行わなければいけません。
滅失登記とは、建物がなくなったことを登記簿に記載することを指します。
建物を解体したあと1か月以内に建物の滅失登記を行わなければいけません。
もし、滅失登記を行わなければさまざまなデメリットが想定されます。
(2) 建物滅失登記を怠った場合のデメリットについて
更地後の活用方法として売却もできるのですが、滅失登記をしていなければ、登記上まだ、建物が存在しているということになっています。
そうなると売却はできません。
また、建物が登記上存在しているとなると建物に対する固定資産税も請求され続ける可能性が考えられます。
建物の滅失登記は、任意事項ではなく申請しなければいけない義務が付帯しているので滅失登記を怠ると罰則違反となり罰金を支払わなければいけなくもなるのです。
このように滅失登記を怠ってしまうとメリットはなくデメリットだらけなので、空き家を解体したら滅失登記は欠かせません
(3) 建物滅失登記はどうやって行う?自分でもできる?
建物の滅失登記はあなた自身が行うことも可能です。
しかし、一般の人にはわかりにくい点や手間がかかる点などから多くは司法書士に依頼し滅失登記を行います。
司法書士に依頼した場合、およその費用は司法書士の手数料も併せて3万円~5万円前後です。
しかし、個人で滅失登記を行うと1,000円程度で可能ですので、費用的には大きな差があります。
費用を抑えたい場合は個人で、手間を嫌う場合は司法書士に依頼するといった選択を行い、滅失登記を行いましょう。
まとめ
建築リサイクル法の施行前と施工後では、建物の解体には大きく違いが出ています。
再資源化や資材の保護といったエコ的な観点が重要視されていますので、当然の流れといったところでしょう。
このような流れを受け、空き家の解体には、解体業者の存在は非常に大きく、費用面だけではないさまざまな配慮が求められています。
つまり、満足のできる解体ができるかどうかは、解体業者次第で大きく変わるのです。
さまざまな届け出や申請といった実際の解体作業以外の占める部分をいかにスムーズに、依頼者にわかりやすく進めていくのかといった点も求められます。
信用のおけるパートナー選びが、空き家解体の手続きや作業に満足できるポイントといえるでしょう。